平成29年10月26日(木):初稿 |
○日弁連機関誌”自由と正義”が配送されると最初に見るのが懲戒処分広告記事ですが、特に注意して読むのが「戒告」事例です。最近の「戒告」事例は、ヒヤッとするものが増えてきましたが、なかには、これだけひどいことをして、「戒告」で済むのかと思われる事例も相当あります。 ○「業務停止」事例は、それほど注意しては読みません。犯罪行為或いは犯罪行為の助長等弁護士の非行が明白で、「業務停止」は当然と思われる事例ばかりだからです。しかし、以下のアディーレ法律事務所に対する「業務停止2ヶ月」の懲戒処分には驚きました。アディーレ広報部は「景表法違反の事実があったことをもって、法律事務所の存亡にかかわる業務停止処分を受けることは、行為と処分の均衡を欠く」とコメントしているとのことです。 ○弁護士懲戒処分検索センターで業務停止2月の例を探してみるとザッと以下の通りです。 ・交通事故損害賠償事件を受任着手金受領、事件放置、着手金返還訴訟にも欠席し答弁書もなし ・AB2人から民事事件受任、費用はB。AB間に紛争、訴訟取り下げをAに承諾得ないままBに渡しBが取り下げ ・不動産仮差押事件受任したが依頼会社が会社更生法申立で仮差押事件の委任は解除されたが取り下げしなかった ・業務停止処分を受けた弁護士業務を引き継ぐが事務員に債務処理業務をさせた ・立て替え金請求事件で和解金の2割を報酬としたが350万円で和解したが依頼者には300万円と報告差額横領 ・不動産詐欺事件受任、和解金受領したが1千万円依頼者に払わず逆に報酬1千万円の報酬請求訴訟提起 ・交通事故示談金を渡さない ・高利貸しに援助。年20%を約束し借り受け返済しない ・電車内で痴漢 罰金50万円支払う 示談金160万円 妻名義で寄付100万円したので2ヶ月の処分 ・事件紹介者に示談等支払う、依頼者に金行かず。説明不足 ・預かり金返還しない。懲戒請求人に高額慰謝料請求 ・地裁から破産管財人に選任されたが処理が遅いし説明が不十分 ・相続事件遺言執行者であったがい遺産分割協議をAから依頼された、執行者は特定の依頼を受けることはできない ・外国人の婚姻届を作成したが偽装結婚の疑いがあり ・医療過誤事件受任、依頼者は3千万円の損害賠償、訴訟は1022万円で了解なく起こした ・営業のために事務所に来た出版社社員にバカヤロウお前は無能だなどとし暴行加療4週間 ○お客様或いは相手方にかけた迷惑の程度からすると、今回の業務停止2月の懲戒処分が、いかに「行為と処分の均衡を欠く」かが明らかです。懲戒処分は、前歴-過去の懲戒処分歴-も関係しますので、一概には言えませんが。 **************************************** 「今だけ無料」処分…アディーレ法律事務所、代表弁護士ら「懲戒審査相当」 東京弁護士会などの綱紀委議決 産経ニュース2017.4.3 04:00更新 過払い金返還訴訟を数多く手掛ける弁護士法人大手「アディーレ法律事務所」(本店・東京)が不適切な宣伝を理由に消費者庁から行政処分を受けた問題で、東京弁護士会など複数の弁護士会の綱紀委員会が、法人としてのアディーレと代表の石丸幸人弁護士(44)、複数の所属弁護士について、「懲戒審査が相当」とする議決をしていたことが2日、関係者への取材で分かった。今後、各弁護士会の懲戒委員会が、懲戒の是非や懲戒内容を検討する。 弁護士懲戒は、(1)懲戒請求者からなされた懲戒請求を各弁護士会の綱紀委が審査(2)綱紀委が「懲戒処分の可能性が高い」と判断した場合、各弁護士会の懲戒委員会に審査を付す(3)懲戒委が懲戒するかどうかや処分の重さを判断する-という流れ。綱紀委から懲戒委に審査が付される割合は5%前後で、そのうち懲戒委の審査で実際に懲戒処分が下るのは6割前後とされる。 アディーレは「過払い金返還請求の着手金を今から1カ月間、無料にする」などと期間限定キャンペーンのように宣伝しながら、実際は計5年近く継続的に実施。消費者庁は昨年2月、こうした宣伝手法は情報の受け手に有利さを錯覚させる景品表示法違反(有利誤認)に当たるとして、同様の宣伝をしないようアディーレに措置命令を出した。 この措置命令を受け、複数の懲戒請求者が、アディーレ本店や石丸弁護士、全国のアディーレの事業所で勤務する弁護士らを対象とする懲戒を請求していた。 その結果、東京弁護士会が法人としてのアディーレと石丸弁護士を懲戒審査に付すことを決定。また、札幌弁護士会や神奈川県弁護士会もアディーレに所属する5人の弁護士(1人は既に退職)らについて「宣伝手法の違法性を指摘・是正させる弁護士としての職務を怠った」などとして、懲戒審査に付す決定をした。決定はいずれも昨年12月~今年2月になされた。 アディーレは取材に「措置命令は遺憾で、大変申し訳なく思っている。東京弁護士会の懲戒委に当事務所と石丸の(懲戒処分は不適当とする)主張を斟酌(しんしゃく)していただきたい」と回答。一方、所属弁護士らについては「本店が行った宣伝について所属弁護士に責任はない。同様の懲戒請求がなされた30以上の弁護士会の綱紀委は『懲戒しない』との判断をしており、札幌・神奈川弁護士会の懲戒委でも同様の判断がなされると確信している」とした。 アディーレは全国に約80の事業所を展開し、所属弁護士は180人を超える。経営破綻した旅行会社「てるみくらぶ」の内定を取り消された新卒者を選考なしで採用すると表明したことでも話題を呼んだ。 ◇ ■弁護士の懲戒 弁護士に違法行為や品位に反する行為などがあった場合、誰でも懲戒を請求できる。懲戒処分は重い順に(1)除名(2)退会命令(3)業務停止(4)戒告。各弁護士会の決定に不服がある場合は、日本弁護士連合会(日弁連)に申し立てることができる。 *************************************** アディーレ法律事務所に業務停止2カ月「極めて悪質 組織的な非行」 事実と異なる宣伝で懲戒処分に。 2017年10月11日 19時29分 JST | 更新 2017年10月11日 19時30分 JST ハフポスト日本版編集部 東京弁護士会は10月11日、債務整理など多く手掛けるアディーレ法律事務所を、業務停止2カ月の懲戒処分にしたと発表した。事実と異なる宣伝を繰り返したことが理由。元代表の石丸幸人弁護士も業務停止3カ月とした。 アディーレ法律事務所はCMに有名お笑いコンビなどを起用。「過払い金の返還。あなたも対象かもしれません。着手金無料」などとうたう広告を大々的に手がけていた。 広告では「着手金を今から1カ月間無料にする」などと期間限定のキャンペーンを宣伝していたが、実際は5年近く実施。このため消費者庁が2016年2月、景品表示法違反(有利誤認)に当たるとして、同様の宣伝をしないよう措置命令を出した。 共同通信によると、この行政処分を受け、東京弁護士会などに事務所や所属弁護士に対する懲戒請求が起こされていたという。 東京弁護士会会長の渕上玲子氏は今回の処分について、「実際の取引条件よりも有利であると一般消費者を誤認させ、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある極めて悪質な行為」との談話を発表。「長期間にわたって多数回反復継続されている組織的な非行と言わざるを得ません」などと批判した。 以上:3,059文字
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