平成25年 5月20日(月):初稿 |
○「ネット法律相談事業と弁護士法第72条”周旋”との関係」を続けます。今回は、宣伝・広告・営業業務と弁護士法第72条「周旋」との関係です。 弁護士法第72条「周旋」を復習すると 昭和34年2月19日名古屋高裁金沢支部判決の定義での要件は、 ①申込を受けて訴訟事件の当事者と訴訟代理人との間に介在 ②両者間における委任関係成立のための便宜をはかり、其の成立を容易ならしめる行為 の2つで、一般的国語辞書の解説でも「売買・交渉などで、当事者間に立って世話をすること。とりもち。なかだち。斡旋(あっせん)。」とされています。 ○弁護士業務の「周旋」と言えるためには ①相談・依頼申込者と弁護士の間に介在 ②両者間における委任関係成立のための便宜をはかり、其の成立を容易ならしめる行為 の2つが揃って初めて周旋が成立しますが、この「介在」とは、通常は、弁護士から独立した第三者として介在することです。 この議論は、これまで殆どなされてきませんでしたが、弁護士が弁護士から独立した第三者としてではなく、例えば営業担当事務員を雇って営業活動をさせて、その結果、事件を依頼された場合、その事務員の行為は、形式的には、 ①相談・依頼申込者と弁護士の間に介在 ②両者間における委任関係成立のための便宜をはかり、其の成立を容易ならしめる行為 となって「周旋」に該当しそうですが、私はこの場合は、弁護士から独立した第三者ではないので、「周旋」と評価すべきではないと考えております。 ○弁護士の宣伝・広告活動は、長い間禁止されていましたが、平成13年に解禁され、原則自由となりました。この宣伝・広告活動は、周旋の要件の②「両者間における委任関係成立のための便宜をはかり、其の成立を容易ならしめる行為」に該当します。しかし、弁護士自身が行う限り、①「相談・依頼申込者と弁護士の間に介在」がありませんので、「周旋」に該当しないことは明白です。問題は、弁護士以外の第三者が行う場合で、独立した第三者ではなく弁護士の使者或いは代理人として行う場合です。この問題もこれまで殆ど議論されていませんが、私は、その責任は全て弁護士が負うことになり、「周旋」とは評価すべきではないと考えています。 ○弁護士業務の宣伝・広告については、弁護士業務広告規程とそのガイドライン(運用指針)によって厳しく規制される建前ですが、現実にはその規制は殆ど機能しておらず、また、時代遅れの規制があります。例えば街頭でのチラシやティッシュ配りは問題とされていますが、現実には野放しで行われています。また、企業回り等面識のない者に対する訪問・電話での広告も禁止されていますが、現実には野放し、このような規制の存在を知らない弁護士も多そうです。 ○これらの営業活動は、弁護士以外の者が弁護士から独立した第三者として有償で行うことは、弁護士法第72条で禁止された「周旋」に該当する可能性があります。しかし、弁護士の使用人或いは請負人として弁護士の名前で行う場合は、「周旋」には該当せず、弁護士法第72条の問題にはならないと、私は考えていますが、これまで殆ど議論されていません。 私なりにもう少し考えてゆきます。 以上:1,300文字
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