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弁護士法72条に関する昭和46年7月14日最高裁判決解説

平成25年 3月 9日(土):初稿
○「弁護士法72条に関する昭和46年7月14日最高裁判決全文紹介」の続きで、今回は私なりの解説です。

先ず弁護士法第72条再録します。
第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。


○この条文を判りやすく解析すると
先ず主語は、「弁護士又は弁護士法人でない者」で、弁護士資格のない者です。
次に述語(動詞)は、
取り扱い」、又は
これらの周旋をすることを業とすることができない。
の2つです。「業」とは、継続反復して行うことです。

この2つの述語の目的語が
「報酬を得る目的」を持って訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」について、
①「取り扱い」又は
②「周旋すること
ことで、
①法律事件に関する法律事務を取り扱う行為(法律事件業務)
②法律事件に関する法律事務の取扱を周旋する行為(法律事件周旋・紹介)

の2つです。

簡単に言えば、弁護士資格のない者が、報酬目的を持って継続・反復して、
①法律業務を取り扱い
②法律業務を周旋(紹介)
を行ってはダメだと言うことです。

○この規定がちと不明確なのは、
①法律事件に関する法律事務を取り扱う行為は、「報酬を得る目的」があれば、「業として」なされることは必要でないのか-要するに1回だけでも報酬を目的として行うことも禁じるのか、例えば親戚が1回だけ報酬を貰って代理人として交渉することまで禁じるのか
②法律事件に関する法律事務の取扱を周旋(紹介)する行為は、「報酬を得る目的」がなくても、単に「業として」繰り返し行うことを禁じるのか、例えば顔の広い方が何度も特定の弁護士に事件を紹介することまで禁じるのか
と言う点でした。

○厳格な考え方では、前記①、②両方とも禁じるとなりますが、昭和46年7月14日最高裁判決は次のように述べてこの問題を解決しました。

同条は、たまたま、縁故者が紛争解決に関与するとか、知人のため好意で弁護士を紹介するとか、社会生活上当然の相互扶助的協力をもって目すべき行為までも取締りの対象とするものではない。
※これは原則論です。

同条本文は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、業として、同条本文所定の法律事務を取り扱いまたはこれらの周旋をすることを禁止する規定であると解するのが相当
※これは、親戚がたまたま1回だけ報酬を貰って代理人になること、また、1回だけ報酬を貰って周旋することは禁じていないという意味です。

具体的行為が法律事務の取扱いであるか、その周旋であるかにかかわりなく、弁護士でない者が、報酬を得る目的でかかる行為を業とした場合に同条本文に違反することとなる
※法律事務取扱も法律事件周旋(紹介)も報酬を得て且つ反復継続して行うことを禁じると言う意味です。

同条本文を、『報酬を得る目的でなす法律事務取扱い』についての前段と、『その周旋を業とすること』についての後段からなるものとし、前者については業とすることを要せず、後者については報酬目的を要しないものと解すべきではない。」
※法律事務取扱は1回だけでも「報酬目的」があれば禁止し、法律事件周旋(紹介)については「報酬目的」なくても継続することを禁止する趣旨ではなく、いずれも「報酬目的」で「継続・反復」するとの2つの要件が必要だとの意味です。
以上:1,550文字

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