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ある同年生の津波での自宅喪失体験-”帰りたい、帰れない”

平成25年 2月19日(火):初稿
○「ある同年生の過酷な津波体験-凄まじい迫力に圧倒されます」の続きです。
”昭和42年中学卒気仙沼・仙台三陸会”発足のお知らせ」記載の通り、昭和42年に気仙沼・三陸地方近辺の中学を卒業し仙台近辺に住んでいる同年生の集まりとして、「昭和42年中学卒気仙沼・仙台三陸会」略称「KSS42」を発足しました。代表を小山達朗氏として当事務所を事務局とし2ヶ月1回程度幹事会(事務局会)を開催し、郷里気仙沼・三陸地方復興支援のために何かやっていこうという事にしています。

○すこしでも郷里の同年生の情報も発信すべく、同年生林小春さんの「ある同年生の過酷な津波体験-凄まじい迫力に圧倒されます」に続いて、長年気仙沼市潮見町地区に住み、津波で自宅を失った同年生渡邊まさ子さんの三陸新報掲載リレー随想「帰りたい、帰れない」を転載します。林さん、渡邊さんとは、気仙沼小学・中学の同年・同級生で受験時代気仙沼ギター研究会等でご一緒してお世話になりました。
間もなくあの悪夢の日から2年が経とうとしています。今住んでいる南が丘の家から、土台だけが残った幸町、弁天町、潮見町が箱庭のように見渡せ、その中をミニチュアのような車が到る所を走っています。

一本の幹線をたどり、私の目は潮見町で止まります。真っ白な雪道に 春風香る 私は懐かしいあの街を思い出す-この歌を口ずさむと、今は無いあの風景が広がっていきます。

確かにあの日、私たちはそれぞれの生活の中で春を待ちわびていました。その小さく躍る心が2時46分を堺に凍り付いてしまいました。会社から気仙沼中学校の体育館に避難し、狂ったように余震が続く中、同じ町内に住む友人から届いた「潮見町全滅!!」のメール。全滅って何?床上浸水?家が壊れたって事?

その言葉の意味が分かったのは1週間も後の事でした。道なき道をヘドロやガレキをかき分けながら、ようやく辿り着いた我が家を前にア然!!涙も出て来ない。出て来たのは私を暖めてくれた電気コードだけ。震災前の日々がいとしくよみがえってきました。

子供たちが小さいときに結成したドレミの会、婦人部の新年会、腰を痛くしながらの自治会館の草取りやドブ揚げ、踊らずビールや焼き鳥、おでんも食べた盆踊り、市民運動会やママさんフッと、両親も狂ったゲートボールの集い。いつか仕事を辞めたら婦人部長になるという小さな野望(笑)も、何もかも持って行かれてしまいました。「津波のバカ野郎-!!」。

年老いて家の跡地まで来ることができなかった父へ、大切に育ててきた木を1本引き抜いて帰ってきました。

生きるため、日常の生活を取り戻すため、皆必死の毎日を送りました。どこへ行くのも歩き。いつぞやは大きなリュックを背負い、杖をついた自分の姿がガラスに映るのを見てギョッ!!私なの?まるでおばんつぁんダー。川で洗濯もしました。

日本中、世界中の人々から温かい支援を頂き、なんとか日々の生活を取り戻しながらも、「なんで私、ここに居るのかナァー」と地に足が着いていない状態。もう一度、潮見町に住みたいヨー。でもそこは災害危険区域に指定され、私たちは二度と帰ることができないのです。

ある日、(ダメダメ、そんなくらい気持でいちゃ)と、われに返った私は自分の”幸せレーダー”を上げて行こうと決めました。そうしたら、いろいろ感謝する事が見つかりました。家族が無事で健康な事、60歳を過ぎても会社が雇用してくれた事、信頼できる友人がいる等々。何かの本に書いてあったけど、幸せって、当たり前の事にどれだけ感謝できるかって事なんだと、つくづく思いました。

潮見町2区も昨年、解散会をしましたが、年に1回は集まりましょうと約束し、それぞれの復興に頑張っています。「皆さんお元気で。またお会いしましょうネ」。

もし、あの日の2時46分より前に時間を戻す事ができたら、45年間、家族を守ってくれたわが家に「ありがとう。お世話になりました」と感謝の気持を伝え、亡くなった方々には「地震の後、大津波が来るから、すぐ高台に逃げてー」と声を大にして叫びたい。

ご冥福をお祈りします。
○渡邊さんの文章からは、長年住み慣れた自宅を流されて失い、且つ、その自宅のあった場所に二度と戻れず自宅の再建もできなくなった悔しさ・無念さがしみじみ伝わってきます。潮見町地区は、気仙沼湾の直ぐ近くで、その名の通り、潮の香る街でしたが、東日本大震災後の津波で「潮見町全滅!!」状態となりました。同地区には、逃げ遅れて犠牲になった方も多くおられるはずですが、”幸せレーダー”を立ち上げ、周囲に感謝の気持を持って前向きに生きている渡邊さんにエールを送ります。

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