平成23年12月11日(日):初稿 |
○「日弁連業革委員会新分野PTでの公証業務進出検討」の続きで信託業務進出検討です。 「日弁連業革委員会新分野PTでの公証業務進出検討」では、弁護士が新職域として、韓国の弁護士業界で成功したとの公証人業務への進出を検討していることを紹介しましたが、今回は、信託業務への進出の検討を紹介します。 ○私自身、信託法は、これまで勉強したことがなく、弁護士業務として進出するとしても、さて、具体的にはどのようなことが出来るのか実感が湧きません。弁護士がお客様からその財産の管理を任せられる方法として、民法上、委任と言う制度がありますが、信託法上の信託と民法の委任がどのように違うかについての私なりの備忘録です。 先ずは条文です。 民法第643条(委任) 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。 信託法第2条(定義) この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。 基本は、上記の通り、 委任は「法律行為をすることを相手方に委託」で、 信託は「特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきもの」ですが、「次条各号に掲げる方法のいずれかにより」との条件が付き、それは、 信託法第3条(信託の方法) 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。 1.特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法 2.特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法 3.特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法 と規定されており、結構、面倒です。 ○この定義だけでは、具体的相違が良く判りませんので、不動産の売買を例にして検討します。 不動産売買との法律行為委任は弁護士業務では良くありますが、弁護士自身が買受人を探すことはなく、仲介不動産業者に委任し、業者が見つけてきた買受人との間で売買条件を協議して、売買契約書を作成し、代金授受、所有権移転・抵当権末梢登記手続、物件引渡等の業務を、あくまで代理人として行います。登記手続に関しては更に司法書士に委任し弁護士自ら行うことはありません。 1回で終わる特定不動産の売買だけであれば、民法の委任で十分であり、信託まで必要はないと思われます。 ○不動産の処分に関し信託まで必要な事例とは、おそらく、一回で終了する売買ではなく、その不動産を継続的に利用して継続的収益を信託者に与える業務と思われ、コンテンツを分けて、信託の具体例を検討してみます。 以上:1,499文字
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