平成23年 6月 9日(木):初稿 |
○平成23年に司法修習中の64期司法修習生について、現在の弁護士事務所の就職状況・今後の見通し等についての相当厳しい状況になっているのに、その自覚不足を痛感して、「新64期司法修習生事務所訪問雑感」から始まり、「私が現在の司法修習生にだったら-営業基本復習」まで、私の感想等を記述してきました。 ○弁護士事務所の「厳しい状況」は、東日本大震災の発生により、更に一層厳しくなっています。当事務所も、大震災発生以来、事件受任がパタリと止まり、売上も激減し、人生、何時、何があるか判らぬ、こんなこともあるのかと、驚く程です。当事務所主力商品交通事故相談も大震災以来激減しています。震災関連相談は,一時相当数ありましたが、相談止まりで着手金を貰える仕事になるものは殆どありませんでした。 ○この状況は、大震災発生後3ヶ月を経過する平成23年6月に入って僅かに改善の兆しはありますが、元に戻るにはまだまだ時間がかかりそうです。当事務所に関して言えば、平成23年上半期売上は、この10年間平均上半期売上の半分に達しないと思われる程落ち込んでいます。しかし、大震災で仕事場も家も失い、売上どころではない方も大勢居ることを思えば家も仕事場も残り、半分近く売上を維持していることを有り難いことだと考えるようにしています。 ○人一倍気が小さく心配性の私は、このような状況で、事務所訪問頂き桐初心者講座に参加して頂いた64期司法修習生各位には,大変申し訳ございませんが、常勤3名・非常勤2名の合計5名の事務員雇用を守るため今年の新人弁護士採用は断念しました。仙台の法律事務所経済状況は,おそらく当事務所以外も厳しい状況になっている例が多いと思われ、仙台就職希望の司法修習生は、見通しが立たず、即独まで検討せざるを得ないと思われます。 ○この厳しい状況の中、今後新人弁護士としてやっていくために心構えについて、「新64期司法修習生事務所訪問雑感」から始まり、「私が現在の司法修習生にだったら-営業基本復習」まで色々記述してきました。弁護士稼業に限らずこの世で生きていくために必要なポイントは,営業力であり、営業力とは、詰まるところ、「相手に気に入ってもらう」ことであり、そのためには「相手を良い気分にさせる」、「相手の期待に応える」サービス精神が最も重要です。 ○神様は不公平で、この「相手に気に入ってもらう」能力を先天的に身につけて居る人も居ます。以下に記述された「可愛気」のある人です。「可愛気」のある人とは、先天的に「相手に気に入ってもらう」能力を身につけて居る方です。しかし、この「可愛気」を先天的に身につけて居る人は数少なく、多くは身につけてはおらず、またこの能力を努力で培うことも出来ません。 ○生来気弱で人前に出ることが苦手な、私なんぞは、「可愛気」で人に気に入ってもらえる能力など全くありません。この先天的能力「可愛気」のない人間はどうすればよいかについて、畏敬する谷沢永一先生の「律儀」は普通の人でも努力で身につけられるという文章を見たとき救われた気がしました。俺は生来「可愛気」などない、気に入ってもらいたい人にはせめて「律儀」を尽くそうと思った次第です。 ************************************ 谷沢永一氏著作「人間通」の「可愛気」から 色の白いは七難隠すと謂う。人間の欠点がおおい隠されて世の人から好意を得ることが出来る性格の急所は可愛気であろう。彼奴には至らんことが多いけれど、なにしろ可愛気があるから大目に見てやれよ、と寛大に許される場合が殆どである。 これに類する或いはこれに代わる長所は他にちょっと考えられない。才能持ち得も努力も業績も身持ちも忠誠も、すべてを引っくるめたところで、ただ可愛気があるというだけの奴には叶わない。 人は実績に基づいてではなく性格によって評価される。女が男を選ぶときの呼吸にどこか似ているのかもしれない。この可愛気が果たして自力で培い得る者かどうか、つまり努力目標になり得るか否かについては確かたる見通しが立たない。寧ろ猿真似は危険であるから自分も可愛気のある性格になりたいなどと高望みせぬ方がよいとの自戒が一般的である。 しかし可愛気そのものは自作自演できなくても、その一段下のところを目指すことは可能である。可愛気の次に人から好まれる素質、それは、律儀、である。秀吉は可愛気、家康は律儀、それを以て天下の人心を収攬した。律儀なら努めて達し得るであろう。 律儀を磨きあげれば殆ど可愛気に近づくのである。そのため有効な近道は可愛気のある人物に近づき誼を通ずる手筈である。好意を以て交際っている友人の癖はなんとなく影響する。いわんや積極的に学ぼうと努めるなら、幾分なりとも得るところがあろう。こうしてアマチュア段階の可愛気が身につくことは可能なのである。 以上:1,991文字
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