平成22年 7月 9日(金):初稿 |
○司法試験合格者数増加について、一番心配なのは弁護士さんの「質」の問題で,法務省の2009年発表の資料によると,トップ合格者と最低合格ラインの約2000人との点数差が412点にも及び,ロースクールを出て教育されたにもかかわらず,高得点層が増えないという実態も出てきているようで,これでは3000人まで合格させられないという法務省の気持ちもわからないではありません。とのご意見を頂きました。 ○たしかに合格者数増加によって、現在はまだ500人から2000人への増加ですが、この時点で相当新人弁護士のレベルが落ちているという話しは聞き、例えば司法修習生をから新人弁護士を採用するに当たっては、500人時代は殆ど当たり外れがなかったけれども、2000人時代になると、ハズレも多く、採用に当たっては、司法試験合格順位を記載した成績表の提示を求める例が増えているとも聞いています。私自身は、少なくとも仙台会では、最近の新人弁護士がそれほどレベルが下がっているとの実感はありません。余り新人弁護士に触れる機会がないからかも知れませんが。 ○先のご意見では、「トップ合格者と最低合格ラインの約2000人との点数差が412点にも及び」とのことですが、そんなことは当たり前のことと思います。3000人合格時代になれば、おそらくは、上位500人の点数を100点満点中85点以上とすれば、下位500人(2500~3000番)は100点満点中40点位まで点差が開くのではと思っております。要するに500人時代は85点以上取らなければ合格できなかったのが、3000人時代はその半分以下の40点でも合格できるようになるのではと推測しています。これはあくまで私個人の正に独断と偏見で全く根拠はありません(^^)。 ○問題は、500人時代の85点以上の点数を取れた人が、必ずしもお客様へのサービス業者として優秀かというとそうは言えないところにあります。むしろ秀才意識が強く、俺は頭が良く偉い人間なんだと誤解して天狗になり、お客様を見下すサービス業者としては失格の方も多く居て、お客様から相当反発されていたことは間違いありません。仮に2000人時代で合格できる最低点を50点とした場合、この司法試験では50点しか取れず最低の成績で合格したけれども、それ故秀才意識もなく、天狗にもならず、合格後も勉強に励み且つお客様へのサービス意識が強く、お客様にとっては有り難い、良い弁護士になる可能性があります。 ○司法試験受験科目は、法律の基本ではありますが、世の中を規制する法律全般からすればごくごく一部に過ぎません。実務に入ると事案は種々雑多山のようにあり、司法試験受験科目だけで解決できる事案はむしろ少なく、新に法律を勉強しなければなりません。勿論、法律以外にも事案によっては、医学、建築学、物理学等の知識も必要になり、業務遂行のため様々な分野の新しい勉強も必要になります。1回の試験に受かった知識だけでは、殆ど業務遂行が成り立ちません。 ○たった1回の試験を、たまたま85点以上取れて合格したからと言って安住できず、また、たまたま50点しか取れなかったからと言っても、その後の努力で、85点以上取った方を遙かにしのぐ実力をつけることも出来ます。要するに質が低下すると言って入り口から絞り込まず、入り口は出来るだけ広めて、質が悪い資格者が増えても、より良い弁護士が育つ土壌を広くすべきではないかとの考えが、合格者増員論であり、私はこの意味で、例え質が低い合格者が増えたとしても、増員論に賛成しています。 以上:1,470文字
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