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弁護士戒告事案で身につまされ厳重注意を痛感した例

平成22年 1月18日(月):初稿
○繰り返し記載していますが、「『自由と正義』平成19年6月号は懲戒公告多数」記載の通り、私は月1回発行される日弁連機関誌「自由と正義」を受領すると先ず最初に弁護士のエッセイ「ひと筆」を読み、次に懲戒例の公告を読むのが日課となっており、平成21年12月号で、ヒヤリとする懲戒事案を発見し、厳重注意すべしと痛感しました。

○当事務所では,プリンターを4台使用していますが、カラー印刷用2台、白黒印刷が試し刷り印刷用、清書印刷用の各1台です。訴状や準備書面を起案すると、印刷用紙の節約のため、まず白黒試し刷り印刷プリンターで印刷します。この試し刷り印刷プリンターの印刷用紙は、従前使用済みの印刷用紙のミスプリ等で不要になった用紙の裏の白紙部分を使用してこれに印刷します。

○当事務所ではお客様の目の前で起案し、これを試し刷り印刷用紙に印刷してお客様にお見せして、お読み頂き、訂正点等ご指示頂き、更に担当事務員に「てにをは」や文体チェックをして貰うなどして必要部分を訂正して、完成した起案を、清書印刷用プリンターで清書印刷します。試し刷り印刷用紙は、裏に従前記載済みの他の事件データが印刷されていますので、お客様には、裏は見ないで下さいとお断りして、試し刷り部分のみをお読み頂いた後は、必ず回収し、最後に清書印刷した用紙だけをお客様にお渡しします。

○今回、冷や汗をかいた懲戒例は、この他の事件データ記載済み用紙に印刷した試し刷り印刷を記録に綴じたままにしておき、この記録を事件終了時にそのままお客様に渡してしまったものです。この試し刷り印刷用紙の裏には他の事件での「第三者の秘密やプライバシーに該当する内容」が含まれており、この記録をそのまま返還したことにより、これを漏らしたとして、弁護士法第23条(秘密保持の権利及び義務)、弁護士職務基本規程第18条(事件記録の保管等)に違反したと評価されました。

○私は、お客様に一時的に見て貰う試し刷り印刷用紙は必ず回収していますが、時に、試し刷り印刷を記録に綴じる場合もあります。お客様への記録返還時には、記録内容をチェックし、返還が好ましくない資料は外して返還していますが、この時試し刷り印刷用紙を外さず、「第三者の秘密やプライバシーに該当する内容」があるものを返還すると懲戒される可能性が大いにあります。

「試し刷り印刷用紙は目的を達したら必ずシュレッダーに入れて廃棄処分すること」がこの懲戒例の教訓です。

弁護士法第23条(秘密保持の権利及び義務)
 弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

弁護士職務基本規程第18条(事件記録の保管等)
弁護士は、事件記録を保管又は廃棄するに際しては、秘密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなければならない。

弁護士法第56条(懲戒事由及び懲戒権者)
 弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。


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1 懲戒を受けた弁護士
(中略)

2 懲戒の種別 戒告

3 処分の理由の要旨
被懲戒者は懲戒請求者から委任を受けた民事訴訟事件の手控用記録を作成するため既済で不要となった刑事弁護事件記録の裏面白紙部分を利用して書類を印刷し記録として編綴していた上記刑事弁護事件の記録の裏面白紙部分を利用したものには、詐欺被害者氏名等一覧表被疑者氏名、顔写真のコピー書面及び供述調書の一部等が含まれこれらは第三者の秘密やプライバシーに該当する内容であるにもかかわらず被懲戒者はそのことを失念し、2009年3月24日上記民事訴訟事件を合意により辞任した際、廃棄することなく上記刑事弁護事件の記録を利用した書類を含む手控用記録すべてを懲戒請求者に交付した。
被懲戒者の上記行為は弁護士法第23条及び弁護士職務基本規定第18条に違反し弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する

4 処分の効力の生じた日
 2009年7月28日

2009年12月1日   日本弁護士連合会



以上:1,783文字

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