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婚約不当破棄に対する損害賠償請求判例紹介1

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平成22年 1月17日(日):初稿
「男女関係の類型と法的保護程度雑感」に男女の継続的な付き合い程度と法的保護の関係のごく大雑把な私なりの分類を記載しました。男女問題法律実務では、男女が一定期間付き合いがあり、特に女性側が妊娠したものをやむなく中絶するなどしても結婚を期待していたものが、男性側がいい加減で、最終的に関係が解消した場合、女性から男性に対し、婚約不履行で慰謝料請求をしたいと相談される例が結構あります。

「婚約破棄の慰謝料-本当の誠意とは」では、婚約不当破棄を理由に金1000万円の慰謝料を請求され、最終的に450万円で和解した例を紹介しました。今回は、交際中に妊娠中絶するなどしたが、相手方男性が他の女性とベッドインしていた現場に遭遇し大変なショックを受けるなどして男女関係が解消した後、慰謝料と中絶費用等約1200万円請求するも全く請求が認められなかった女性にとって正に踏んだり蹴ったりの判決を紹介します。

○それは平成20年12月9日東京地裁判決です。判例は判例時報・判例タイムズ等公刊された判例集には登載されていないようです。
事案(裁判所認定事実)
 A女とB男は、平成19年1月10日頃,Bが帰宅途中のAに声をかけて食事に誘ったことから知り合いになり,しばらくして肉体関係を持つようになり、その後,Bは,週2,3日はA宅に泊まり,朝方,一旦自宅に帰ってから仕事に出るようになり,同年2月中旬頃にはAはA宅の合鍵をBに渡し,同年3月24日には,BはAの母親に紹介されて銀座の料理店で1時間ほど昼食をともにしたりした。

 3月末に,Aが妊娠したことが判明すると,Bは,Aに対して子供は産まないで欲しいと言い出し,A宅に泊まることもしなくなり、このようなBの態度から,Aはやむなく妊娠中絶手術を受けることを承諾したが、Bは,Aが妊娠中絶手術をする当日にはAに付き添うことを約束していたのに,妊娠中絶手術当日の平成19年4月21日にBは待ち合わせ場所に現れず,不審を感じたAがB宅に行ってみると,Bは全裸で上半身裸の女性とともに寝ていたので,裏切られたと感じたAはBをたたいたりしたが,上記女性が帰った後,AはBから妊娠中絶について同意書を得なければならなかったので,Bとともに病院に行って妊娠中絶手術を受けた。以後,AとBはメールのやり取り等していたが,その関係は次第に疎遠となり,いわば自然消滅するに至った。 

 その間,A,Bとも,親族を含む周囲の者にお互いを将来結婚する相手であるとして紹介したことはなく(BがAの母親と昼食をともにした際も,BをAの結婚相手として紹介した形跡はない。),結婚を前提としたなんらかの具体的な計画(結婚の日取りや式場,新居や家具の選定)について話し合いをしたことはない。
 

裁判所評価
以上の事実関係について、判例は、「AとBとの関係は,独身男女が交際しているうちにたまたま女性であるAが妊娠をしたという関係の域を出ない」とAの婚約或いは内縁関係との主張をバッサリと切り捨てています。

更にA・B間に婚約が成立した理由としてのAの言動について
Bが『避妊をしないのは子供を育てるつもりがあるからだ』,『妊娠したら産休だ』,『結婚する気がない女性の場合には必ず避妊をしている』と返答し,Aが『妊娠したら産むね』と確認したことに対しても異を唱えることはなかったとか,『君と結婚する自信はあるけど,今,親になる自信はない』『中絶が前提でないと君とは結婚できない」『その代わり,2年後には子供をちゃんと産めるよう,結婚を前提に付き合っていこう』『万が一,君が子供を産めない身体になっても一緒にいるから』などと述べたと主張するが,仮にそのような言動があったとしても(B本人は否定する。),そのことで明示的にBがAと結婚するとの意思表示をしたとは認められないのみならず,それだけでなんらの社会的儀式もなく婚姻予約が成立したとは思われない。
とバッサリ切り捨てています。

同棲による内縁成立との主張についても
A本人の供述によっても,Bは,B自身の住居を有していたというのであり,かつ,A宅に下着や洗面用具を持ち込むほかは荷物を持ち込むことはなかったというのであって,しかも,Bが週日にA宅で夕食をとることはなかったというのであるし,BがA宅を自らの住居であると表示したこともないのであるから(A本人によれば,Aが入居しているマンションには部屋番号のほかは表示はない。),BがA宅をB自身の生活の本拠としていたとは到底いえない。
切り捨てています。

A女には誠に気の毒な認定ですが、B男のようないい加減な男性との交際は、慎重にせよとの強い戒めの判決と言えるでしょう。
以上:1,924文字

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