平成21年11月 8日(日):初稿 |
○収支共同型法律事務所概観を続けます。今回は専門化への対応です。 6 専門化への対応 (1)配分平準化と専門化の適合性 収支共同型事務所の特徴は収入の共同管理と配分の平準化にあり、平準化とは,収入の多い者が少ない者に自分の収入を分け与えることから専門弁護士育成にかなうシステムである。専門化した特定分野業務が常に採算が取れるとは限らず、むしろ専門化初期においては採算が取れない場合が多い。収支共同事務所では、採算が取れない特定分野を担当しても配分の平準化により収入が保障されるため、特定分野についての専門化がしやすくなる。 (2)特定専門分野合理化による採算性の向上 このように収支共同型事務所では、特定専門分野の仕事にも打ち込むことが出来る。特定分野を専門的に多数繰り返し担当することにより、その専門分野業務が熟達し、業務処理の合理化・省力化が実現される。これよって従来コストパフォーマンスが良くなかった業務もコストパフォーマンスが向上し、やがては却って採算の良い業務に発展する可能性がある。 (3)マーケッティング戦略としての専門化 このように熟達した専門弁護士を多く抱えるようになれば事務所のセールスポイントにもなる。顧客側においても自分の案件に相応しい専門弁護士の居る事務所に依頼すればその専門弁護士に担当して貰うことが保障されるメリットがある。 (4)独・仏法律事務所事例 ドイツ・フランスの事例では,このような専門分野を持った弁護士が集合して,それほど大規模な組織としてではなく事務所を運営している「ブティック型」と呼ばれる事務所の経営形態が見られた。日本においても,知財,医療過誤,倒産,渉外,労働等の分野で「ブティック型」と呼ぶべき形態が見られる。 (5)収支共同型事務所増加の予想 今後,弁護士人口が増大し,現在に比べて市民が弁護士自体にアクセスすることが比較的容易になった場合,マーケット側の次の欲求としては,「自分の案件を扱ってくれる専門弁護士は誰か」という段階に進むはずであり,このようなマーケットからの要求に応えていくためには,収支共同型事務所を選択肢の一つして取り上げられることが増加するであろう。 7 リタイアと事業承継 収支共同型事務所は,将来においてリタイア及び弁護士業務の承継を考えている高齢の弁護士にとって,有力な選択肢となる。将来の事務所承継を前提に,いずれ引退を考えている弁護士が,事務所を承継させる目的で後継者とパートナーシップを組み,後継者を育成しながら漸次事務所を承継させることが考えられる。この場合,承継の対価を折り込んで,利益の分配をすることが可能であるからである。 また,パートナーのうち高齢の弁護士は顧客の開拓と維持や事務所管理業務に特化し,それ以外の弁護士が実際の法的サービスをするという分業形態も考えられる。この場合は高齢の弁護士の就労年齢の延長に役立つと言える。 8年後にリタイアを考えている私にとっては、特にこのリタイヤと事業承継が大変重要な問題です。 以上:1,250文字
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