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収支共同型法律事務所概観1

平成21年11月 5日(木):初稿
「複数弁護士法律事務所形態概観」で、1事務所に複数の弁護士が居る事務所の形態を概観しました。概要以下の通りです。
(1)1人の親弁が勤務弁護士を採用する複数事務所
・従業員型勤務弁護士
従業員型勤務弁護士は個人事件を受任することが出来ないもの。
・アソシエイト型勤務弁護士
勤務弁護士は原則として個人事件を自由に受任できるもの。

(2)複数弁護士の対等関係での共同事務所
・経費共同型
収入は各自別会計で、人件費・事務所賃料等事務所経営経費を一定のルールに従って共同負担する形態
・収支共同型
収入も経費も同一会計で行い、収入を一定のルールに従って分配する形態。
・弁護士法人
複数の弁護士が社員として構成する法人

○上記は平成21年11月20日(金)午前10時から松山全日空ホテルで開催される第16回業革シンポで「共同法律事務所のマネジメント戦略」のテーマを受け持つ第1分科会で発表するための分類で、各分類毎に担当者を決め報告し、私は・従業員型勤務弁護士を担当して執筆しました。ところがこのタイプでは勤務弁護士は労働者と法律構成せざるを得ず、この勤務弁護士労働者説は日弁連が取る見解ではなく、日弁連のシンポで発表するのは時期尚早として発表しないことになり、急遽、・収支共同型・弁護士法人の報告を担当することになりました。以下、その備忘録です。

1 収支共同型事務所とは
 経営者としての弁護士が複数であり,共同経営のあり方として,収入も経費も共同化している事務所をいう。
 換言すると複数の経営弁護士(パートナー弁護士)が収入及び経費を共同管理し,収支差額(損益)を各パートナー間で一定のルールに基づいて分け合う形で経営している形態の事務所である。そこでは,収入の共同管理と配分の平準化が不可欠の要素をなす。
 事務所の収入及び経費を形式上1人の弁護士に帰属させ,他の弁護士はそこから給与を受ける形での利益分配の方法をとる方式(税務手続は,経営者となる弁護士を除いて給与所得者の手続になる。)と、各弁護士は事務所の利益から一定の割合で利益分配を受けるが,税金申告の際は各弁護士毎に収入及び経費を割りつけて各人の事業所得として申告をさせる方式がある。

2 収支共同型事務所の形成要因
 この型の事務所は,収入配分と共同関係解消・清算面において、相当堅固な信頼関係が必要である。2名の渉外弁護士が共同事務所を解散した場合に各自の利益分配率が争われたものとして,東京高判平成15.11.26(判時1864号101頁)がある。
 収支共同化の理由・動機としては,勤務弁護士がパートナーに昇格する場合,同期・同輩等の縁で対等の立場で結合する場合が多いようである。

 収支共同型事務所における経営の合理化にとどまらない利点
1 相互補完による収入の安定化
 弁護士の収入は不安定な面があり、自己の収入が少ないときに他の弁護士の収入で補完し相互に収入の安定化を図り、更に専門特化のリスクを吸収出来る。
 特定分野の時代による売上の波、採算性の変動等を相互補完出来る。 

2 業務の代替性確保
 繁閑や得意・不得意等によって,業務を相互に代替することができ、業務の合理化により、休暇の確保を容易にすることができる。

3 事件への共同取組促進
 どの事件も自分の所得に影響すると考えれば,知恵や力を出し合うことに真剣になる。3人寄れば文殊の知恵,複数の頭で考えて事件処理をする方が良い結果を出せる。

4 事務所経営の合理化
 経費共同型においては自分の経費分担分に関心が集中しがちであるが,収支共同型では他の弁護士の収入,仕事のやり方,経費のかけ方,人の使い方等についても視野に入れざるを得ず,そうした相互チェック機能がうまく働けば経営の合理化につながる。

5 一定目的に特化した事務所実現
 政治的な志向や弁護士のあり方等について共通の考えを持った人たちが集合して,それらを積極的に実践出来る。
以上:1,608文字

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