平成21年 9月18日(金):初稿 |
○勤務弁護士は、労働者か否かという議論がありましたが、ボス弁型従業員型イソ弁(勤務弁護士)は、個人事件が出来ず完全職務専念義務があるとすれば、ボス弁と勤務弁護士の法律関係は雇用に該当し、労働法が適用になります。労働法での労働時間の規制は同法32条で一日8時間、1週間40時間以内が原則になり、これを超えた時間については時間外勤務手当が必要になります。 ○ところが勤務弁護士の場合、夜遅くまで、或いは、土日祝祭日も出勤して仕事をする例が多く、労働時間1週40時間制限すると相当多くの時間外手当が必要になります。実際、東京弁護士会公設事務所に勤務した弁護士が多額の時間外手当の請求をして東京弁護士会相手に訴えを提起した例もあります。 ○そこで弁護士業務の様に仕事のやり方や時間配分を使用者が指示命令したのでは業務の目的が十分に達成されず、業務の性質上、仕事の具体的なやり方や時間配分を大幅に労働者の判断に委ねる業務で、実際、使用者においても具体的な指示命令を行わない場合、その労働時間について、裁量労働制が規定されています。 ○裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2種があり、弁護士業務は裁量型に属します。専門業務型としては、公認会計士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士等の専門職や大学教授の研究業務、新商品・新技術の開発・研究業務等も含まれます。企画業務型とは、事業運営に関する企画、立案、調査、分析の業務とされています。 ○専門業務型裁量労働の実施要件は次の通りです。 1.労使協定で以下の事項を定め、労働基準監督署に届け出ること (1)対象業務 (2)1日のみなし労働時間 (3)対象業務の遂行手段および時間配分等に関し、使用者が具体的な指示をしないこと (4)対象労働者の健康および福祉を確保するための措置を使用者が講ずること(措置の具体的内容) (5)対象労働者からの苦情に関する措置を決議で定めるところにより使用者が講ずること(措置の具体的内容) (6)有効期間の定め 有効期間の定めは不適切な運用がなされないよう3年以内が望ましいとされています(平成15年10月22日基発1022001号) (7)対象労働者の籠城時間の状況、(4)および(5)の実施状況に関する記録お(6)の有効期間中おおびその後3年間保存すること 2.就業規則に専門業務型裁量労働の定めを置くこと ○この専門業務型裁量労働の採用により、実際の労働時間に拘わらず「労使協定で定めた労働時間労働をしたものとみなす。」ことになります。 しかし、休憩、休日・深夜労働お割増賃金、年次有給休暇は労働基準法の定め通り与えなければならないとされており、勤務弁護士の労働実態からすると、専門業務型裁量労働を採用しても尚、割増賃金は必要になりそうです。 就業規則規定例は以下の通りです。 第○条 専門業務型裁量労働制の適用弁護士は、労使協定で定める。 2 所定労働日の労働時間は労使協定の定める時間とみなす。 3 始業・終業時刻及び休憩時間は、第○条の所定就業時間、所定休憩時間を基本とする。ただし、業務遂行上の必要による就業時間、休憩時間の変更は弾力的に運用するものとし、その時間は専門業務型裁量労働制適用弁護士の裁量により設定する。 4 休日は第○条の定めるところによる。 5 専門業務型裁量労働制適用弁護士が休日または深夜に労働する場合については、予め所属長の許可を受けなければならない。 6 前項により、許可を受けて休日または深夜に業務を行った場合、賃金規定の定めるところにより割増賃金を支払う。 以上:1,464文字
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