平成20年 2月29日(金):初稿 |
○「相続事件における一部相続人からの依頼と遺言執行者就任」の話を続けます。 A弁護士は、被相続人甲の相続人の1人Bから①甲の遺産分割協議、②遺言執行者選任申立と遺言執行者就任、③甲作成自筆証書遺言検認申立等を依頼され業務を遂行中、Bの不信感を買い、懲戒申立を受け、戒告処分(弁護士に反省を求め、戒める処分)を受けました。 ○弁護士の業務の一つに遺言書作成と遺言執行者就任業務があり、私もこれまで相当数扱っております。10年前までは、遺言書作成を依頼されると漫然と遺言書の中に弁護士としての私自身を遺言執行者に指定する文言を記載していました。民法第1006条(遺言執行者の指定)で「遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。」と規定されており、遺言書作成より遺言執行業務の方が多くの報酬を頂けるからでした。 ○しかし現在は私自身を遺言執行者には指定する文言を入れるかどうかは事案を良く検討し、慎重に判断しています。先ず遺言者本人だけが依頼者で、遺言者死後、子供達が争いにならないよう弁護士が遺言執行者として適正に遺言を執行して欲しいと正に遺言執行業務の依頼の場合は勿論遺言執行者になります。 ○ところが遺言書作成の依頼は、遺言者自身と遺言によって多くの遺産を取得したいとの相続人の一部の方が一緒に来る例が多く、この場合、遺言書を作成しても遺留分減殺請求等の争いが生じる可能性があります。この場合は原則として弁護士自身を遺言執行者にはせず、多くの遺産を取得する相続人を遺言執行者に指定する文言とすることをアドバイスしています。 ○10数年前に膨大な不動産を所有する方から財産の殆どを同居する奥様と家督の長男に相続させ、数十年前に離婚以来音信不通の先妻の子供には不動産価値を圧縮評価して遺留分相当額ギリギリの現金を遺贈する内容の遺言書作成を依頼され、私自身が遺言執行者になったことがあります。 ○相続税対策のため結構な額の借入金で相当数の賃貸建物を建築していたため預貯金は殆どなく遺言執行者としての業務は預貯金払戻は殆どなく、最大の遺言執行業務は膨大な不動産の相続登記だったのですが、これは公正証書遺言があれば遺贈された相続人本人だけで可能であり、遺言執行者としてやることは殆どありませんでした。 ○このときの私の最重要任務は、弁護士を代理人として不動産の価値を高く評価し遺贈現金だけでは遺留分に不足するとして代理人遺留分減殺請求をしてきた先妻の子供との示談交渉でした。更に遺言書作成から相続開始する数年間に相当数のアパートを建てていたため遺言書に記載していない建物、分筆された土地が相当数あり、この部分は遺言書で登記出来ず、先妻の子供の同意が必要となり、この同意を得ることも交渉内容の一つとなり、私は奥様と長男の代理人として先妻の子供の代理人と交渉し、最終的には双方納得する合意が出来て大いに感謝されました。ところが厳格にはこの私の業務には問題がありました。 以上:1,240文字
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