平成20年 2月28日(木):初稿 |
○「『自由と正義』平成19年6月号は懲戒公告多数」記載の通り、私は月1回発行される日弁連機関誌「自由と正義」を受領すると先ず最初に弁護士2名のエッセイ「ひと筆」を読み、次に懲戒例の公告を読むのが日課となっています。懲戒例の公告で得に注意して読むのは、最も軽い戒告です。戒告の事案は身につまされるものも多く、他山の石として我が身を戒める材料となるからです。 ○「自由と正義」平成20年2月号の懲戒公告例では、昭和52年10月合格の司法修習第32期すなわち私の同期生が3人も懲戒公告例として掲載されておりました。クラスは違いますが、名前も顔も覚えている方がおり驚きました。 ○その一例は、身につまされる例でシッカリ記憶に留めるべきもので、事案概要は以下の通りです。 A弁護士は、平成14年2月、懲戒請求者Bから、Bの父甲を被相続人とする兄弟4名の相続事件の相談を受けた。甲は自筆証書遺言を残しており、その内容は特定財産についての相続人指定の他、長男Cの相続廃除であった。 そこでBはA弁護士に対し次の業務を依頼した。 ①甲の遺産調査とCに対する相続放棄を求める内容でのBの代理人として他の相続人との遺産分割協議 ②Bの代理人としてA弁護士を遺言執行者候補者とする遺言執行者選任申立と遺言執行者就任 ③Bの代理人として甲作成自筆証書遺言検認申立と検認期日出頭 Bの上記依頼によりA弁護士は、甲の遺産を調査し、同年6月検認期日に出頭し、同年7月遺言執行者に就任し、同年9月遺言執行者としてCの相続人廃除の申立を行い、これらの弁護士費用として着手金50万円と出張旅費日当として合計金22万5280円をBから受領していた。 その後A弁護士の行ったCの相続人廃除の申立が却下されたが、この過程でA弁護士とBとの間で紛議があったらしく、翌平成15年1月、A弁護士は依頼者Bから遺言執行者辞任及び着手金の返還を求められ、同年3月家裁に遺言執行者辞任許可申立を行うも、同年6月遺言執行者として遺産分割調停申立を行い、同年10月遺言執行者辞任許可申立が却下された。 ○以上のA弁護士の遂行業務についてBから懲戒申立がなされ、A弁護士はBから依頼を受けてその代理人となりBの利益を図るべく行動する職務上の義務があるところ、相続人全員のために公平に職務を遂行すべき遺言執行者に就任したのは、利益相反行為に該当し、廃止前の弁護士倫理第26条2号に反するもので、更にBの代理人と遺言執行者の兼任について説明を尽くさずその不利益を理解させないままに受任したことは不適切であるとして弁護士法第56条第1項の弁護士としての品位を失うべき非行に該当するとして戒告処分となりました。 以上:1,107文字
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