平成18年 9月 5日(火):初稿 |
○NBL2006年9月1日号に元公正取引委員会次席審判官・元国税不服審判所長・現仙台家庭裁判所長の成田喜達氏の「司法制度改革と弁護士業務の拡大-敬愛する弁護士N先生への手紙」と題する論文が掲載されています。 ○この論文は同期(修習25期と思われます)のN弁護士への成田氏からの手紙と言う形式で掲載され、N弁護士は、司法制度改革による諸制度実現のために尽力しながら、成田氏に対し「これからは、弁護士が急増する一方で僅かなパイを争うことになりますので、弁護士業務の維持は大変になっていくかと思います。」と述べていることに対し、成田氏は「N先生クラスの実力のある層の弁護士からこのような不安が唱えられることには、正直なところ意外感を感じざるを得ません。」と感想を述べることから始まっています。 ○N弁護士の不安感はおそらく大多数の弁護士に共通するものと思われますが、成田氏は法曹人口拡大等司法制度改革の趣旨は弁護士が国民の社会生活上のサポーターとして従来以上に積極的な役割を果たすことであり、弁護士界(各単位弁護士会ではなく、弁護士の世界と言う意味)が弁護士業務の拡大を積極的に図れば拡大分野はいくらでもあると言われています。 ○そして「弁護士界の外で、しかも比較的その近くにいる私などから見ますと、弁護士業務拡大の対象は、実は巷に溢れているのに、弁護士界自体が積極的な姿勢を示さないことから、結果的にその拡大をみすみす逃していないかという感想を持つことがあります。」とされて、様々な具体例を挙げておられます。 ○例えば遺産分割事件も弁護士が積極的に関与すべき分野で遺言の相談と作成指導の分野だけでも無限に近い需要と市場があるところ弁護士界が積極的に打って出なかったが故に信託銀行、行政書士、司法書士等の一部が参入していること、中小企業経営にも弁護士の関与が少なすぎること、国税に関する納税者の救済についても弁護士の関与が必要と述べられています。 ○更に弁護士界全体が有償且つ廉価で国民のホームローヤーとして相談を受けるシステム構築の必要性も強調され、例えば安価な会員登録費用で広く法律相談を受けられるシステムを弁護士界として開発する例なども挙げら、この秋に始まる日本司法支援センター(法テラス)との連携も提案されています。 ○また日本では無償の公的相談が多いことを問題とされ、「経済的弱者については当然様々な配慮をすべきですが、経済的負担能力のある国民についてまで全く無償を貫くことは、相談への誘因とはなっても、国民が責任を持ち自律的に行動することにつながらないのではないかという気がします。」述べられており、この点は私もずっと言い続けてきたことで我が意を得たりと心強く感じました。 以上:1,126文字
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