平成24年 3月 2日(金):初稿 |
○「事業倒産整理の柔軟性ー労働債権重視」で、平成16年に破産法が大改正されるまでは労働債権より税金が優先され、資産換価処分で現金を1000万円集めても、未納の税金が1000万円あれば、例え未納労働債権が500万円あっても先ず1000万円の税金を支払い、労働債権の支払は出来ない建前のため、私は事業の任意債務整理に当たっては、税金がたとえいくらあろうと労働債権を最重要視して集めた現金は先ず労働債権の支払に充当してきた旨を記載していました。 ○ところが、バブル崩壊後、税収が厳しくなってくると税務署は倒産企業について、いち早く売掛金等を差押えしてしまい、弁護士として事業倒産整理事件を受任し、税務署に対し労働債権を優先して欲しい旨申し出ても頑として受け付けられなくなり、平成16年の破産法大改正が待ち遠しい旨も記載していました。この大改正で新設された破産法条文は次の通りです。 第149条(使用人の給料等) 破産手続開始前3月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする。 2 破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当の請求権(当該請求権の全額が破産債権であるとした場合に劣後的破産債権となるべき部分を除く。)は、退職前3月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前3月間の給料の総額より少ない場合にあっては、破産手続開始前3月間の給料の総額)に相当する額を財団債権とする。 ○しかし、残念ながら、次の規定によって労働債権が,税金より優先されることはありません。 第152条(破産財団不足の場合の弁済方法等) 破産財団が財団債権の総額を弁済するのに足りないことが明らかになった場合における財団債権は、法令に定める優先権にかかわらず、債権額の割合により弁済する。ただし、財団債権を被担保債権とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権の効力を妨げない。 これによって配当財源が500万円しかないところ、税金が500万円、労働債権が500万円の場合は、「債権額の割合により弁済」になり、250万円しか配当されないことになります。 ○上記破産法第149条で財団債権として認められる丘陵の範囲は、 ①未払い給料請求権については、破産手続き開始前3ケ月間のもの ②退職手当請求権については、退職前3ケ月間の給料に相当する額のもの に限られ、残念ながら解雇予告手当優先的破産債権にはなりますが、財団債権にはなりません。 ○ところで事業債務整理を受任すると、事業主より、給料支払期限を過ぎているが、現時点で支払原資がなく、1ヶ月先の売掛金を回収すれば支払えるので、これを担保に給料支払分だけ親戚から出して貰って直ぐ支払いたいが、この親戚から借りた分を回収した売掛金から優先的に支払って貰いたいとの要請を受けることがたまにあります。 ○仮にA社の社員10名分の給料総額200万円をBさんが立替て支払った場合、BさんはA社に対し同額の求償金債権を持ちますが、このBさんの求償金債権が給料債権としての財団債権性を維持して優先弁済を受けられるかどうかの問題です。民法第499条(任意代位)「債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。」との規定により、Bさんは、当然、社員の承諾の元に支払いますので、民法第501条(弁済による代位の効果)として「債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。」はずです。 ○ところが、このBさんが、A社破産管財人に立替支払給与分の支払を求めたところ、拒否されて訴えを提起した事案で、一審は認められるも、二審の高裁で棄却された例があり、その最高裁判例が出ましたので、コンテンツを分けて紹介します。 以上:1,533文字
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