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給料債権立替支払での求償金債権は財団債権です

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平成24年 3月 3日(土):初稿
○「給料債権立替支払での求償金債権は財団債権か?」の続きです。
これは、破産法上の財団債権である債権が第三者に移転した場合に,当該債権が財団債権としての性質を承継するのかどうかの問題ですが、従前の下級審判例は、平成21年10月16日大阪高裁判決(金法1897号75頁)など否定説が多かったようです。しかし、平成22年4月23日横浜地裁川崎支部判決(判タ1344号244頁)では、独立行政法人労働者健康福祉機構が立替支払いした求償債権を財団債権と認めました。

○平成23年11月22日最高裁判決(判時2134号62頁)の事案は、新聞販売店Aから懇願されて、B社が平成19年8月21日A従業員9名分の同年7月分給料合計約237万円を従業員の承諾の元に代位弁済し、同年8月29日にAが破産決定を受け、その破産管財人Cに対し、財団債権として支払を求めて訴えを提起しました。

○一審の平成21年3月12日大阪地裁判決(金法1897号83頁)は、従業員9名の破産手続開始決定の前月分の給料の請求権は、破産法上の財団債権に当たるが、第三者が給料の立替払いをした場合には、労働者保護の観点から給料債権を財団債権とした破産法上の趣旨が達成されたといえるから、特段の事情がない限り、当該給料債権(原債権)は、財団債権には当たらないとしながら、B社については、特段の事情があるとして、財産債権性を認めました。しかし、控訴審の平成21年10月16日大阪高裁判決(金法1897号75頁)は、財団債権性を認めませんでした。この2つの下級審は結論は異なりますが、原債権が財団債権でも第三者に移った場合原則として財団債権ではなくなると言う点では同じです。

○この2つの下級審判決の上告審が平成23年11月22日最高裁判決(判時2134号62頁)で、弁済による代位により財団債権を取得した者は、同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても、破産手続によらないで上記財団債権を行使することができるとしました。
判決理由全文は以下の通りです。

弁済による代位の制度は,代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために,法の規定により弁済によって消滅すべきはずの原債権及びその担保権を代位弁済者に移転させ,代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり(最高裁昭和55年(オ)第351号同59年5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号885頁,同昭和58年(オ)第881号同61年2月20日第一小法廷判決・民集40巻1号43頁参照),原債権を求償権を確保するための一種の担保として機能させることをその趣旨とするものである。

この制度趣旨に鑑みれば,求償権を実体法上行使し得る限り,これを確保するために原債権を行使することができ,求償権の行使が倒産手続による制約を受けるとしても,当該手続における原債権の行使自体が制約されていない以上,原債権の行使が求償権と同様の制約を受けるものではないと解するのが相当である。

そうであれば,弁済による代位により財団債権を取得した者は,同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても,破産手続によらないで上記財団債権を行使することができるというべきである。

このように解したとしても,他の破産債権者は,もともと原債権者による上記財団債権の行使を甘受せざるを得ない立場にあったのであるから,不当に不利益を被るということはできない。以上のことは,上記財団債権が労働債権であるとしても何ら異なるものではない。


○独立行政法人労働者健康福祉機構が立替支払いした求償債権を財団債権と認めるのが、従前からの倒産実務の扱いでしたが、立替支払者が独立行政法人労働者健康福祉機構に限ることなく誰であっても財団債権性を認めた方が給与債権を安心して立替て支払うことが出来、支払が促進される結果、労働債権の保護になりますので、この最高裁の結論は当然と思います。
以上:1,646文字

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