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令和 5年11月28日(火):初稿 |
○家庭の専業主婦が交通事故に遭い傷害を受け、主婦業を休んだ場合、その休業損害は、全女性平均賃金令和4年約394万円を基準に算出されます。兼業主婦で、その職業からある程度の収入を得ている主婦の場合は、その休業損害は現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を認めれば足りるとの考えが一般です。 ○しかし、この考えは、主婦の収入が平均賃金以下の場合、一律に平均賃金内に含まれて、主婦が外で稼いだ収入について全く考慮しないもので、有職主婦にとって不合理な考えです。そこで、この考えは、主婦労働の内容や質の相違を無視するもので不当であり、女性労働者平均賃金に有職による現実の収入を加算すべきであるとの考え方があり、私もこちらの考えを取って、有職主婦の場合、休業損害の算定基準収入は、全女性平均賃金プラスアルファとして請求しています。 ○裁判例にもこのような考えもあり、週3日ピアノ講師をしていた原告につき、週1.5日は家事労働に従事できないこととして基礎収入から減算し、これにピアノ教室での給与を加算して逸失利益を算出した平成18年12月15日名古屋地裁判決(交通事故民事裁判例集39巻6号1763頁)関連部分を紹介します。 ○基礎収入について、ピアノ教室での就労は1回あたり半日分とみることとして、1週間のうち1・5日分は家事労働に従事できないこととし、これに相当する分は賃金センサスに基づく基礎収入から減算し、ピアノ教室での給与を加算し、平成13年賃金センサス女子労働者45歳ないし49歳の平均賃金386万1000円を越えた423万3642円を基礎収入としました。極めて合理的な考え方です。 ******************************************** 主 文 一 被告は、原告に対し、1270万0090円及びこれに対する平成13年9月29日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二 原告のその余の請求を棄却する。 三 訴訟費用はこれを10分し、その三を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第一 請求 被告は、原告に対し、1845万2992円及びこれに対する平成13年9月29日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 第二 事案の概要 本件は、原告が、原告の運転する自動車(以下「原告車」という。)に被告の運転する自動車(以下「被告車」という。)が追突した事故により損害を被ったとして、被告に対し、自動車損害賠償保障法三条に基づき、損害賠償を求めた事案である。 一 前提事実(文末に証拠等を掲記する。) (中略) 二 争点 (1)被告の過失の内容及び過失相殺 (中略) (3)損害 (中略) ウ 休業損害 543万5375円 (ア)基礎収入 原告は、夫と子供2人の4人世帯の主婦として家事労働に従事するとともに、夫の経営する音楽教室でピアノ講師として就労し、月10万円の給与を得ていた。 よって、基礎収入は、家事労働分としての386万1000円(平成13年賃金センサス女子労働者45歳ないし49歳の平均賃金)と、ピアノ講師分としての年額120万円を合計した、506万1000円となる。 (中略) 第三 争点に対する判断 (中略) (3)休業損害 454万6815円 ア 基礎収入 証拠(甲19、20の1・2、24、33、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、夫と子供2人の4人世帯の主婦として家事労働に従事するとともに、夫の経営する音楽教室でヒアノ講師として週3日の割合で時間割の講座を持つ形で就労し、月10万円の給与を得ていたことが認められる。 この事実に照らすと、基礎収入については、ピアノ教室での就労は1回あたり半日分とみることとして、1週間のうち1・5日分は家事労働に従事できないこととし、これに相当する分は賃金センサスに基づく基礎収入から減算することとした上で、ピアノ教室での給与を加算することとするのが相当である。平均賃金については、平成13年賃金センサス女子労働者45歳ないし49歳の平均賃金である386万1000円によることとし、基礎収入は、下記計算式のとおり、423万3642円とする。 (計算式)386万1000円×(7-1.5)/7+120万円=423万3642円 イ 休業期間 証拠(甲5ないし17、29、33、乙13ないし17、原告本人)からうかがわれる原告の傷害の内容や治療経過、たとえば、平成15年4月10日時点でも、頚部から背・肩部にかけての疼痛、頚椎の運動制限、上肢帯・上肢の筋力低下、手指の巧緻性の低下や、腰部の疼痛、右下肢の疼痛・しびれ、臀部痛がみられ、また、ジャクソン・スパーリングテスト陽性、神経伸張テスト陽性となっており(乙23、20頁)、それ以前にも同様以上の症状があったこと等に照らすと、本件事故後、音楽教室におけるピアノ講師としての業務に大きな支障が生じていたことはもちろん、掃除、洗濯、炊事などの家事全般にわたっても支障が生じていたと考えられる。そして、上記音楽教室においては、平成13年10月1日から平成15年7月20日まで休業したことが認められる(甲20の1・2)。 そうすると、平成13年9月29日から平成14年3月28日の181日間は100パーセント、平成14年3月29日から平成15年5月24日(1年57日)は50パーセント分、休業を余儀なくされたと認めるのが相当である。 ウ 計算式 423万3642円×181/365+423万3642円×0.5×(1+57/365)=454万6815円 以上:2,340文字
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