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後遺障害等級第11級7号脊柱変形労働能力喪失率20%認定地裁判決紹介6

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令和 5年 4月15日(土):初稿
○「後遺障害等級第11級7号脊柱変形労働能力喪失率20%認定地裁判決紹介5」の続きで、同様に自賠責保険後遺障害等級第11級7号「脊柱に変形を残すもの」の労働能力喪失率20%を認めた平成23年7月4日東京地裁判決(自保ジャーナル・第1856号)関連部分を紹介します。

○保険会社は、脊柱変形については、労働能力喪失自体を争うことが多く、本件では、原告の腰椎圧迫骨折は椎体の前方部の圧潰で軽度であり、せき柱管には及んでおらず客観的に神経症状を生じるとも考えにくい上、腰痛等の症状は後遺障害等級第11級7号の評価に含まれている。労働能力喪失率は、当初の10年間は他覚的に神経症状が認められる場合と同様に14%程度が、その後の期間については自覚症状による神経症状が残るものとして5%程度が相当であると主張していました。

○しかし判決は、腰部の疼痛やせき柱の機能低下が原告の就労に悪影響を及ぼしていること、原告は、本件事故後、事務職への就職も試みたが、年齢や経験がないことを理由に採用を断られており、今後、腰部への負担が少ない事務職の仕事に就ける可能性は高くないことなどに照らすと、原告の労働能力喪失率は20%とみるのが相当としました。

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主  文
1 被告は、原告に対し、1285万7601円及びうち1272万3388円に対する平成20年5月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

 被告は、原告に対し、3246万3520円及びうち3232万9307円に対する平成20年5月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は、前提事実(1)の交通事故(以下「本件事故」という。)について、原告が、被告に対し、民法709条ないし自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条本文に基づき、損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実(争いがない事実又は記載した証拠により容易に認められる事実)

         (中略)

第三 当裁判所の判断
1 争点(1)(原告の後遺障害の内容及び程度)について

(1) 証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

         (中略)

(2) そこで、原告の後遺障害について検討すると、腰部の画像上、第3、第4腰椎圧迫骨折を認めることができ、これは「脊柱に変形を残すもの」として後遺障害等級第11級7号に該当し、腰痛や右大腿部のしびれ(後遺障害等級第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」)は、障害等級認定の基準において「圧迫骨折等によるせき柱の変形に伴う受傷部位の疼痛については、そのいずれか上位の等級により認定することとなる。」とされているから、せき柱の変形障害に含めて評価すべきものと認められる。

 原告は、前記のとおり、後遺障害等級第8級2号に該当するせき柱の運動障害が認められると主張しており、戊田医師や己川医師による測定では、原告の胸腰椎部の屈曲・伸展を合計した可動域は25度にとどまる。しかしながら、(1)の事情を総合すると、第3腰椎の椎体圧迫が残存するなどしているが、軽度なものにとどまり、固定術も行われていないから、医学的、解剖学的に、本件事故による第3、第4腰椎圧迫骨折が原因で、胸腰椎部の屈曲及び伸展の合計の可動域が参考可動域角度(合計75度)の1/2以下に制限されるような運動障害が生じるとは認め難い。

戊田医師による測定が自動運動によるものであることに鑑みると、原告の胸腰椎部に可動域制限があるとしても、その原因は腰椎圧迫骨折という器質的変化よりも疼痛にあるものと認められ、せき柱の変形障害(後遺障害等級第11級7号相当)に含めて評価すべきである。そうすると、本件事故により、原告に後遺障害等級第8級2号に相当するせき柱の運動障害が残存したものと認めることはできない。

 したがって、本件事故による原告の後遺障害は、後遺障害等級第11級7号に該当するせき柱の変形障害にとどまるというべきであり、症状固定日は、前記の治療経過等に照らし、平成21年1月16日であると認めるのが相当である。

2 争点(2)(損害)について

         (中略)


(6) 逸失利益 823万0884円
ア 基礎収入
 原告は、事故前年の原告の収入が407万8069円であると主張し、その資料として、確定申告書控を提出するが、(4)アの理由から、前記確定申告書控は採用することができず、他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。原告は、前記のとおり、本件事故当時、330万2340円の年収を得ていたものと認めるのが相当であるから、原告の逸失利益算定の基礎収入は、同額とするのが相当である。

イ 労働能力喪失率及び労働能力喪失期間
 原告の後遺障害が後遺障害等級第11級相当であること、原告は、本件事故前、郵便配達、軽貨物運送業等の肉体労働に従事し、本件事故後も、バイクによる郵便物の配達、運送会社でのアルバイト、自動車の回送、洗車等の仕事に就いたが、腰への負担が大きく腰痛に苦しんで仕事を辞めざるを得なくなったほか、足の踏ん張りがきかずにバイクを倒してしまったり、自動車への荷物の上げ下ろしの際に腰への負担に注意しながら作業を行うため他の従業員よりも作業が遅かったり、バイクの運転時に体をひねって後方確認をすることができなくなったりするなどしており、腰部の疼痛やせき柱の機能低下が原告の就労に悪影響を及ぼしていること、原告は、本件事故後、事務職への就職も試みたが、年齢や経験がないことを理由に採用を断られており、今後、腰部への負担が少ない事務職の仕事に就ける可能性は高くないことなどに照らすと、原告の労働能力喪失率は20%とみるのが相当である。

 労働能力喪失期間については、本件事故から3年が経過した後も、原告の腰痛等の症状に大きな変化はないこと、原告の年齢は、症状固定時で47歳であり、若くないこと、前記のとおり、腰部の疼痛だけでなく、せき柱の機能低下も、原告の就労に悪影響をもたらしていることに照らすと、労働能力喪失期間は、労働能力喪失率を逓減させず、就労可能年数である20年とするのが相当である。


ウ 算定
 以上によれば、原告の本件事故による逸失利益は、次の計算式のとおり、823万0884円となる。
 (計算式)
 330万2340円×20%×12.4622(20年のライプニッツ係数)=823万0884円(円未満切り捨て)

(7) 後遺障害慰謝料 420万円
 前記の原告の後遺障害の内容・程度に照らし、後遺障害慰謝料は上記額が相当であると認める。
以上:2,847文字

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