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自賠責後遺障害非該当について後遺障害等級12級と認めた地裁判決紹介2

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令和 5年 3月 1日(水):初稿
○「自賠責後遺障害非該当について後遺障害等級12級と認めた地裁判決紹介1」の続きで、令和4年1月31日名古屋地裁判決(自保ジャーナル2117号74頁)の裁判所の判断部分を紹介します。

○自賠責非該当であった右肩の痛み・可動域制限等について後遺障害等級第10級に該当するとして約3190万円の損害賠償請求をしましたが、加害者側は、原告の右肩関節の可動域が変動は、器質的損傷ではなく疼痛にすぎず、本件事故によって傷害を負っていない左上肢に関節可動域の限定と握力の低下が生じていることなどから右肩関節についての原告の症状が本件事故と相当因果関係があるとも認めがたいと激しく争いました。

○これに対し名古屋地裁判決は、原告は本件事故直後から右肩の痛みを訴えていること、本件事故から間近い時期のMRI検査により右肩腱板の異常信号が確認され、事故後約1年半が経過した時点でのMRI検査によっても肩峰下滑液包の炎症が確認されたこと、本件事故から約5年半が経過した本件の原告本人尋問の時点においても右肩の痛み等を訴えていることなどからすると、本件事故により生じた右肩痛等の症状は、本件事故により生じた右肩腱板断裂に起因する医学的に証明し得る神経症状と捉えられるとして、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、第12級13号に該当すると認められるとして約463万円(既払金約274万円と合わせて737万円)の支払を命じた

○加害者側保険会社は、自賠責判断を錦の御旗の如く絶対と確信し、自賠責非該当事案について後遺障害認定は頑として認めず、徹底的に争うのが普通です。医学専門家でない裁判官も自賠責判断を後追いする傾向が強く、自賠責非該当について12級を認めたのは珍しい事案です。

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第三 当裁判所の判断
1 認定事実

掲記の証拠,前提事実及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)原告等の生活状況
ア 原告とDは,平成19年8月,原告との間にEをもうけたが,平成23年1月26日,その親権者をDと定めて,原告とDは離婚した。
 Dは,平成28年2月16日,H(以下「H」という。)と婚姻し,同日,同人とEは養子縁組し,その親権はDとHによる共同親権とされた。Hらはα市に居住して生活していた。

イ 原告は,平成28年3月3日,β市から,上記α市内のHらの住居の近くに所在する現住所に転居した。
 DとHは,平成29年8月17日,Eの国籍選択の届出をした。平成31年3月4日,HとEは養子離縁し,EはDの単独親権となった。令和元年5月10日,Eの親権者変更の調停により,原告がEの親権者とされた。

(2)本件事故による原告車両の損傷状況
 本件事故において,原告車両は被告車両に追突された結果,リアバンパに押し込み損傷が生じ,バックパネルは潰れ,リアフロアには広い範囲で変形損傷が生じた。修理費用は50万0,360円と見積もられている。
 原告は,原告車両の運転席で右手をハンドルのハブの部分に掛けていたところ,本件事故の衝撃で右肩を捻った。

(3)通院状況
ア 原告は,本件事故当日の平成28年6月6日,e整形外科に通院し,頸部挫傷,右肩関節挫傷との診断を受けた。同日の上腕二頭筋腱反射テスト,上腕二頭筋反射テスト,上腕三頭筋反射テストはいずれも正常であった。同月10日及び23日,同院に通院し,右肩の痛みやパキッと音がすることを訴えた。

イ 原告は,同月27日,f検査センターに通院して右肩のMRI検査を受け,右肩挫傷と診断された。MRIの読影レポートでは,「右上腕骨頭後外側の骨髄に脂肪抑制T2強調画像で斑状の高信号域を認めます。この部位の棘下筋腱にわずかに信号上昇を認めます。棘上筋腱は部分的にT2強調画像で連続性が失われている部分があり,脂肪抑制T2強調像でも信号が上昇しています。その他,異常所見を認めません。診断 右上腕骨頭の骨挫傷,同部の棘下筋腱損傷を認めます。棘上筋腱の部分断裂疑い。」との記載があり,診断書の主たる検査所見には「右肩板損傷」との記載がある。

ウ 原告は,同年7月4日,e整形外科に通院した。同院のG(以下「G」という。)は,棘下筋腱損傷,棘上筋腱の部分断裂との上記f検査センターの医師の診断を踏まえ,「いずれ治癒すると思われます。待ちましょう。2,3週間くらいか??」とカルテに記載した。原告は,同日以降,通院時に,マッサージ等による消炎鎮痛処置と関節可動域回復と筋力増強のための機能訓練を行うようになった。

 原告が次に同院に通院したのは,約1ヶ月後の同年8月5日であり,同日以降,8月は9日間,9月は7日間,10月は4日間,11月は3日間,12月は2日間,平成29年1月は3日間,同院に通院し,その間診療録上の記載では,「痛みが変わらない」「まだ痛い」というものであった。

 Gは,平成29年1月31日を症状固定日とし,頸椎捻挫,右肩打撲傷(右肩棘下筋損傷)との傷病名,右肩関節痛,頸部痛,肩こり,上肢に少ししびれがあるなどの自覚症状,右肩関節の可動域制限等の残存症状を内容とする自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書を作成した。なお,Gは,令和2年4月10日,傷病名として頸椎捻挫,右肩棘下筋損傷,右肩関節MRIで右上腕骨骨挫傷,棘下筋腱損傷,棘上筋の部分断裂を認めた,右肩関節のROM制限あり,症状固定日を平成29年1月31日とする労働者災害補償保険診断書を作成した。

エ 原告は,同日以後もe整形外科に通院してリハビリ治療を受けていたが,同年3月29日,原告の上記症状は自賠責保険における後遺障害には該当しないとの判断がされた。
 Gは,同年5月15日,上記自賠責保険の判断について,「MRI上は確かに腱損傷は疑わしい点もあり しかし,可動域制限はあり,外傷を機転にした肩関節周囲炎は起こった可能性はあると思う」と診断した。

 原告は,同年6月6日にg病院を受診しているが,その際のe整形外科からの紹介状には,「7月4日に肩のMRIを撮影していますが,上腕骨外側上方の骨挫傷を疑いました。また,棘下筋腱に異常信号を認めるように思えました。ただし明らかなmajor injuryは無く,物理療法を継続後,自賠責保険での診療は本年1月31日で終了をしています。しかしながら,以後も疼痛が続き,とくに外転時,結帯時などに痛みがあります。可動域制限はありません。外傷後の軟部組織由来の疼痛ということで説明をしていますが,何とか改善させたいという強い希望があり,専門医の診察を希望されています。」と記載されている。

オ 上記のとおり平成29年6月6日に原告を診察したg病院のJ医師は,受診当時の原告の症状について,外傷後の右肩の痛みをかばった姿勢により起こった,外傷後ないし外傷性胸郭出口症候群であると診断した。

カ 原告は,同月28日から同年12月22日まで,右肩痛を訴えてh整形外科に通院し(実通院日数9日),右外傷性胸郭出口症候群,右上腕骨挫傷,右肩関節拘縮と診断された。

キ 原告は,平成30年1月18日,g病院を受診して肩の痛みを訴え,i整形外科クリニックの紹介を受けた。紹介状では,「前医のMRIでは骨頭に骨挫傷と思われる輝度変化あるが少なく,腱板や,関節唇は問題ないと思われ,外傷後に痛みをかばった姿勢により起こった,胸郭出口症候群がメインと思われます。」と記載した。

 原告は平成30年11月13日に,i整形外科において,MRIを撮影したところ,肩峰下滑液包の炎症が確認され,右肩関節周囲炎と診断した。
 平成30年12月5日,g病院のJ医師は,i整形外科のF医師宛の原告の治療経過に関する経過報告書において,腱板の滑液包面断裂に伴うインピンジメントが最も疑われました,と記載した。

(4)関節可動域の測定結果(証拠(略)のうち「意見書」)
 本件事故後の原告の肩関節の可動域の推移は,別紙関節可動域推移表(略)のとおりである。

         (中略)

2 争点(1)(本件事故による傷害と相当因果関係を有する治療期間)について
(1)上記認定事実によれば,原告は,本件事故後の通院で,受診初期から頸部挫傷のほか,右肩の痛みやパキッという音がすることを訴えていたこと,f検査センターでのMRI検査により右肩棘下筋腱,棘上筋腱でも異常信号が認められること,i整形外科でのMRI検査でも肩峰下滑液包の炎症が確認されていること,g病院の医師も腱板の滑液包面断裂に伴うインピンジメントを疑っていることなどからすると,軽度の右肩腱板損傷等の傷害を負ったことが認められる。本件事故は原告車両のリアフロアに広範囲の変形損傷が生じるほどの強い衝撃があったものであり,運転席で右手をハンドルのハブにかけていた原告が,本件事故の強い衝撃で右肩を捻ったという受傷機転は不自然なものとはいえない。

(2)症状固定日について,Gが,右肩腱板損傷の傷害を前提として,症状固定日を平成29年1月31日と診断していること,e整形外科への通院頻度や通院時の訴え,右肩痛の有意な改善は見られないことを踏まえると,原告の症状固定日は,平成29年1月31日と認めるのが相当である。

 なお,原告は同日以降も整形外科に通院しているが,それ以後の診療経過を見ても,原告の症状が有意に改善している状況はみてとれない。また,上記認定事実(4)のとおり,右肩関節の可動域は,屈曲について,平成29年1月31日には130度(他動),平成30年1月18日には120度(他動)であったものが,同年7月9日には他動で60度,同年12月5日には130度,平成31年3月20日には80度,令和2年9月15日に100度と,悪化と回復を繰り返しており,安定しないことからすると,症状固定日に関する上記認定を覆すものとはいえない。

3 争点(2)(後遺障害)について
(1)原告は,本件事故により原告の右肩関節に可動域制限が生じたと主張する。この点,原告の肩関節の可動域に関する上記認定事実(4)のとおり,右肩関節の可動域は,屈曲について,平成29年1月31日には130度(他動),平成30年1月18日には120度(他動)であったものが,同年7月9日には他動で60度,同年12月5日には130度,平成31年3月20日には80度,令和2年9月15日に100度と,悪化と回復を繰り返しており,安定しない。

原告の可動域制限が器質的損傷によると考えるのは困難である。他方,原告は,本人尋問において,治療期間中の可動域制限の結果が変動していることに関し,痛み止めが効かない日は肩があまり上がらない旨を供述している。こうした原告の訴えは,右肩関節の可動域制限が,器質的損傷によるものではなく,疼痛が原因であることと整合的である。

 また,上記認定のとおり,本件事故により腱板損傷が生じたことは認められるが,MRI結果に関し,f検査センターの読影レポートで,棘下筋の信号上昇がわずかとされていること,g病院の医師は輝度変化少なく腱板,関節唇には問題がないとしていること,e整形外科の医師もmajor injuryは無いと診断していることなどからすると,機能障害の原因となり得るほどの器質的損傷があったとは考えにくい。

 そうすると,原告が,その右肩に残存したと主張する可動域制限について,第10級10号の機能障害に該当するとは認められない。

(2)もっとも,原告は,本件事故直後から右肩の痛みを訴えていること,上記のとおり,本件事故から間近い時期のMRI検査により右肩腱板の異常信号が確認され,事故後約1年半が経過した時点でのMRI検査によっても肩峰下滑液包の炎症が確認されたこと,本件事故から約5年半が経過した本件の原告本人尋問の時点においても右肩の痛み等を訴えていることなどからすると,本件事故により生じた右肩痛等の症状は,本件事故により生じた右肩腱板断裂に起因する医学的に証明し得る神経症状と捉えられることから,「局部に頑固な神経症状を残すもの」として,第12級13号に該当すると認められる。

         (中略)

(5)逸失利益 236万5899円
ア 争点(1)での説示のとおり,原告には,本件事故により残存した右肩痛等の症状について第12級13号の後遺障害に該当すると認められる。そこで,後遺障害逸失利益について検討する。

イ 基礎収入について,上記認定事実1(5)イのとおり,原告の収入は本件事故のあった平成28年の給与収入は209万1985円であるが,その後の給与収入の推移を踏まえると,原告の稼働能力としては平成28年から平成30年までの3年間の平均である340万4402円と認めるのが相当である。

 また,労働能力喪失率については,上記のとおり,原告の給与収入は本件事故後の平成29年,平成30年にかけて増加しており,労働能力喪失が認められるかについて争いがある。もっとも,原告は,本件事故による右肩痛がありながらも,j店において,右上肢を動かすことを減らすよう努力したり,職場もレイアウト等を工夫して原告の負担を軽減するような配慮をしたりしている。これらを踏まえると,本件事故による右肩痛の後遺障害の労働能力喪失率の程度は,9%と認めるのが相当である。
 労働能力喪失期間は,右肩痛への馴化も期待できることから,10年間と認めるのが相当である。

ウ そうすると,本件事故による後遺障害逸失利益は236万5899円と認められる。
340万4402円×9%×7.7217(10年間ライプニッツ係数)=236万5899円

(6)通院慰謝料 130万円
 原告は,本件事故により,軽微とはいえ右肩腱板断裂の傷害を負い,上記認定説示のとおり,症状固定まで7ヶ月25日間の通院治療を要した。こうした傷害の内容及び程度,通院状況等を踏まえると,相当な通院慰謝料は130万円である。

(7)後遺障害慰謝料 290万円
 原告は,本件事故により,右肩腱板断裂の傷害を負い,第12級13号に該当する後遺障害を負った。傷害の程度,後遺障害の内容等を踏まえると,相当な後遺障害慰謝料は290万円である。

(8)損益相殺

(ア)消極損害(上記(4)及び(5))の合計 239万6286円
(イ)障害補償給付 ▲239万6672円
(ウ)残額 0円

イ 積極損害及び慰謝料(上記(1)から(3),(6)及び(7))の合計 455万8502円

ウ 任意保険 ▲34万6256円

エ 残額 421万2246円

オ 弁護士費用 42万円
 本件事故による損害額等を踏まえ,本件事故と相当因果関係の認められる弁護士費用は上記金額と認められる。

カ 合計 463万2246円

第四 結論
 以上によれば,原告の請求は,被告らに対し,連帯して,463万2246円及びこれに対する平成28年6月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。なお,被告が求める仮執行免脱宣言は,相当でないからこれを付さない。
名古屋地方裁判所民事第3部 裁判官 前田亮利
以上:6,226文字

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