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要注意!物損消滅時効起算点は車両損害を知った時とした最高裁判決紹介

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令和 3年11月 4日(木):初稿
○交通事故による損害は、車両修理費等の物損と身体に対する傷害治療費・休業損害・慰謝料等の人損(人身傷害損害)に分かれます。車両修理等物損については、車両使用の関係で早期に保険会社を通じて示談を成立させ、弁護士に相談・依頼するのは大半が人損についてです。しかし、最近は、過失割合について見解が分かれて物損分担額が決まらないとのことで弁護士相談する例は増えている気がします。

○この物損について、事故時平成27年2月26日、症状固定時平成27年8月25日の事案で、症状固定時から消滅時効期間3年経過ギリギリの平成30年8月14日訴え提起をした事案について、原審令和2年6月4日大阪高裁は、消滅時効は物損・人損含めて損害全体を知った時即ち症状固定時から消滅時効が進行するとして、物損の消滅時効も症状固定時からとしていました。

○ところが、上告審令和3年11月2日最高裁判決(裁判所HP)は、交通事故による車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条前段所定の消滅時効は,身体傷害を理由とする損害が生じた場合であっても,被害者が上記車両損傷を理由とする損害を知った時から進行するとして、消滅時効起算日について、人損については症状固定時としても、物損については事故時として消滅時効完成を認めました。

○人損の消滅時効起算日については、症状固定日が何時かによって決まるため症状固定日認定が争いになり、強く意識していましたが、物損は、前記の通り、人損より早く示談解決する例が多く、消滅時効起算日が争いになる事案は殆どなく、余り意識していませんでした。兎に角、物損は事故日から消滅時効が始まることをシッカリ自覚しなければなりません。

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主   文
1 原判決中,車両損傷を理由とする損害賠償請求に関する部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消す。
2 前項の部分に関する被上告人の請求を棄却する。
3 上告人のその余の上告を却下する。
4 訴訟の総費用はこれを6分し,その1を上告人の負担とし,その余を被上告人の負担とする。

理   由
上告代理人○○○○の上告受理申立て理由について
1 本件は,車両を運転中に交通事故に遭った被上告人が,加害車両の運転者である上告人に対し,不法行為等に基づき,上記交通事故により被上告人に生じた身体傷害及び車両損傷を理由とする各損害の賠償を求める事案である。上記車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権が平成29年法律第44号による改正前の民法724条前段所定の3年の消滅時効(以下「短期消滅時効」という。)により消滅したか否かが争われている。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
平成27年2月26日,被上告人が所有し運転する大型自動二輪車(以下「本件車両」という。)と上告人が運転する普通乗用自動車が交差点において衝突する事故(以下「本件事故」という。)が発生した。被上告人は,本件事故により頸椎捻挫等の傷害を負い,通院による治療を受け,平成27年8月25日に症状固定の診断がされた。また,本件車両には,本件事故により損傷(以下「本件車両損傷」という。)が生じた。
被上告人は,平成30年8月14日,本件訴訟を提起した。被上告人は,本件車両損傷を理由とする損害の額について,本件車両の時価相当額に弁護士費用相当額を加えた金額であると主張し,同金額の損害賠償を求めている。

これに対し,上告人は,本件車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権について,本件訴訟の提起前に短期消滅時効が完成していると主張して,これを援用した。なお,被上告人が遅くとも平成27年8月13日までに本件事故の相手方が上告人であることを知ったことは,当事者間に争いがない。

3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断して,上告人の短期消滅時効の抗弁を排斥し,本件車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求を含めて被上告人の請求を一部認容すべきものとした。
同一の交通事故により被害者に身体傷害及び車両損傷を理由とする各損害が生じた場合,被害者の加害者に対する車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の短期消滅時効は,被害者が,加害者に加え,当該交通事故による損害の全体を知った時から進行するものと解するのが相当である。本件事故により被上告人には身体傷害及び車両損傷を理由とする各損害が生じたところ,被上告人が本件事故による損害の全体を知ったのは,症状固定の診断がされた平成27年8月25日であると認めるのが相当であるから,本件訴訟が提起された平成30年8月14日の時点では,被上告人の上告人に対する本件車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の短期消滅時効は完成していなかった。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
交通事故の被害者の加害者に対する車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の短期消滅時効は,同一の交通事故により同一の被害者に身体傷害を理由とする損害が生じた場合であっても,被害者が,加害者に加え,上記車両損傷を理由とする損害を知った時から進行するものと解するのが相当である。

なぜなら,車両損傷を理由とする損害と身体傷害を理由とする損害とは,これらが同一の交通事故により同一の被害者に生じたものであっても,被侵害利益を異にするものであり,車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,身体傷害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権とは異なる請求権であると解されるのであって,そうである以上,上記各損害賠償請求権の短期消滅時効の起算点は,請求権ごとに各別に判断されるべきものであるからである。

これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,被上告人は,本件事故の日に少なくとも弁護士費用に係る損害を除く本件車両損傷を理由とする損害を知ったものと認められ,遅くとも平成27年8月13日までに本件事故の加害者を知ったものであるから,本件訴訟提起時には,被上告人の上告人に対する不法行為に基づく上記損害の賠償請求権の短期消滅時効が完成していたことが明らかである。また,上記損害の賠償請求が認められない以上,そのための訴訟の提起・追行に要した弁護士費用に係る損害の賠償請求も認められないというべきである。


5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中,本件車両損傷を理由とする損害賠償請求に関する部分は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,上記部分に関する被上告人の請求は理由がないから,同部分につき第1審判決を取り消し,同部分に関する被上告人の請求を棄却すべきである。
なお,その余の請求に関する上告については,上告人は上告受理申立ての理由を記載した書面を提出しないから,これを却下することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 長嶺安政 裁判官 戸倉三郎 裁判官 宇賀克也 裁判官 林 道晴)
以上:2,987文字

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