令和 2年 2月14日(金):初稿 |
○交通事故で脳脊髄液減少症を患った方の事件を過去に10数件扱い、現在も2件ほど継続中の案件がありますが、これまで事故との因果関係について、裁判官は認めないのが当然との姿勢であり、完璧に認めて貰った事案はありませんでした。しかし、今般、以下のニュース報道の通り、日本脳神経外科学会など関係8学会に承認された「診療指針本」が発刊されました。 ○この「脳脊髄液漏出症診療指針」は、B5版僅か56頁で2750円と高いですが、早速、アマゾンに注文しました。最近、相談を受けている案件のRI脳槽シンチグラフィーが従前より詳細になっており、この「指針」に従った画像かも知れません。到着が楽しみです。 ******************************************** 脳脊髄液漏出症に指針 山形大主導、本発刊で見逃し防止期待 山形新聞2020年02月11日 11:09 国の研究班が公表した「脳脊髄液漏出症」の診療指針で、研究に主導的に関わった山形大医学部は10日、日本脳神経外科学会など関係8学会に承認された「診療指針本」の発刊を報告した。症状や診断、治療法などを盛り込み、典型症例の画像も掲載。医師による正確な診断を導き、見逃しや過剰医療を防ぐことなどが期待される。 研究班は同学部の嘉山孝正参与が代表を務め、佐藤慎哉総合医学教育センター教授らが参加。この日は佐藤教授らが山形市の同学部で会見し、説明した。 脳脊髄液漏出症は、交通事故やスポーツでの衝撃などで脳や脊髄を包む膜が傷つき、髄液が漏れて頭痛やめまいが起きる症状。周囲に症状がはっきりと伝わりにくく、診断基準の確立が課題だった。研究班は昨年7月、12年間にわたる研究成果として診療基準を明確にできたことを公表した。 指針本は、日本脳神経外科学会理事長を務めた嘉山参与が監修した。病態の定義、誘因・原因、症状のほか磁気共鳴画像装置(MRI)などによる検査画像の例、硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)などの治療法を解説。症状は頭痛が最多で90%以上を占め、ほかに頸部(けいぶ)痛、めまい、視機能障害、倦怠(けんたい)感など。座位や起立位の姿勢を続けることで、短時間に症状が悪化することも指摘している。 ブラッドパッチは患者自身の血液でかさぶたのように漏れを止める治療法で、2016年には保険適用となった。会見で佐藤教授は「従来は疾患の判断に、医師によるばらつきがあった」とし、「過剰医療と見逃し医療をなくすため、基準を明確にしたことで診断件数も増えるだろう」とした。 指針本は中外医学社(東京)が出版。B5判55ページ、税抜き2500円。一般でも購入できる。 ******************************************** 「髄液漏れ」に治療法指針 山形大公表「正確な診断に期待」 毎日新聞2020年2月11日 11時06分(最終更新 2月11日 11時06分) 事故やスポーツの衝撃などで髄液が漏れ、激しい頭痛やめまいを引き起こす脳脊髄(せきずい)液減少症(髄液漏れ)について、厚生労働省の研究班(代表・嘉山孝正山形大医学部参与)が発症原因や症状、治療法などの指針をまとめ、同大医学部が10日、山形市内で記者会見して発表した。 昨年7月に指針の概要を発表し、今回は同12月に発刊した「脳脊髄液漏出症診療指針」の冊子(A4判55ページ)を公表した。2007年に日本頭痛学会など8学会の代表らが参加した研究班が発足。磁気共鳴画像化装置(MRI)などを使って髄液漏れを判定する診断基準で合意し、16年度に公的な医療保険の適用対象となった。指針により、従来の診断基準では合致しなかった小さい髄液漏れもMRIで診断でき、適用対象になる。 冊子の発刊について、研究班事務局の佐藤慎哉同大医学部教授は「初めて診察する医師の手助けになる。漏出が正確に診断されるケースは増えるだろう」と期待を寄せた。 会見に同席した「脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」の中井宏代表理事(55)は「保険適用されず自殺してしまった患者もいる。今日は(髄液漏れが)公的に認められた記念日。今後も研究が継続するよう国に訴えていく」と話した。現在の診療報酬点数800点(8000円相当)の引き上げなども求めた。【的野暁】 ******************************************** 「脳脊髄液漏出症診療指針」 関連8学会(日本脊髄障害医学会,日本脊椎脊髄病学会,日本脊髄外科学会,日本脳神経外傷学会,日本頭痛学会,日本神経学会,日本整形外科学会,日本脳神経外科学会)合同 嘉山孝正 監修 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 障害者対策総合研究開発事業 脳脊髄液減少症の非典型例及び小児例の診断・治療法開拓に関する研究班 編集 B5判 56頁 定価(本体2,500円 + 税)ISBN978-4-498-32842-6 2019年12月発行 関連8学会承認のもと、研究班による「脳脊髄液漏出症診療指針」を発刊。本書では、詳細な解説と多くの画像所見を示し、具体的な診断法や治療法を明記することで、現場に沿う指針となった。本疾患の診療をめぐった社会的諸問題についても解説し、関係者必携の一冊である。 ■目次■ 1 緒言 〈嘉山孝正〉 2 病態(定義) 〈喜多村孝幸 三國信啓〉 3 誘因・原因 〈佐藤慎哉 島 克司 深尾 彰〉 4 症状 〈鈴木晋介 高安正和 竹下克志〉 5 鑑別疾患 〈宇川義一 加藤真介 齋藤洋一 松本英之〉 6 診断法 画像診断 1.頭部MRI,脊髄MRI 〈鹿戸将史 細矢貴亮〉 2.RI脳槽シンチグラフィー 〈畑澤 順 篠永正道〉 3.CTミエログラフィー 〈前田 剛 守山英二〉 髄液圧測定 〈有賀 徹 西尾 実〉 7 治療法 〈紺野愼一 中川紀充〉 保存療法 硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ) 付録1 脳脊髄液漏出症の診療を巡る社会的諸問題と今後の展望 〈有賀 徹〉 付録2 脳脊髄液漏出症の画像判定基準・画像診断基準/低髄液圧症の画像判定基準・診断基準 執筆者一覧 嘉山孝正 山形大学医学部参与,初代日本脳神経外科学会学術委員会委員長,前山形大学医学部脳神経外科教授,山形大学医学部先進医学講座教授 監修 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 障害者対策総合研究開発事業 脳脊髄液減少症の非典型例及び小児例の診断・治療法開拓に関する研究班 編集 有賀 徹 独立行政法人労働者健康安全機構理事長,昭和大学名誉教授 宇川義一 福島県立医科大学神経再生医療学講座教授 加藤真介 徳島大学病院リハビリテーション部教授 鹿戸将史 山形大学医学部放射線医学講座放射線診断学分野教授 喜多村孝幸 一般社団法人日本脳神経フォーラム代表理事, 一般社団法人巨樹の会五反田リハビリテーション病院副院長 紺野愼一 福島県立医科大学医学部整形外科学講座教授 齋藤洋一 大阪大学大学院医学系研究科脳神経機能再生学特任教授 佐藤慎哉 山形大学医学部総合医学教育センター教授 篠永正道 国際医療福祉大学熱海病院脳神経外科教授 島 克司 防衛医科大学校名誉教授,医療法人博翔会桃泉園北本病院副院長・リハビリテーションセンター長 鈴木晋介 国立病院機構仙台医療センター脳神経外科 高安正和 愛知医科大学名誉教授,稲沢市民病院脳神経外科部長・脊髄末梢神経センター長 竹下克志 自治医科大学整形外科教授 中川紀充 明舞中央病院副院長・脳神経外科 西尾 実 名古屋市立大学脳神経外科非常勤講師,にしおクリニック院長 畑澤 順 大阪大学名誉教授,大阪大学核物理研究センター特任教授 深尾 彰 山形大学名誉教授,公益財団法人宮城県対がん協会研究局長 細矢貴亮 山形大学名誉教授,済生会山形済生病院診療顧問・放射線科 前田 剛 日本大学医学部脳神経外科・麻酔科准教授 松本英之 三井記念病院神経内科 三國信啓 札幌医科大学脳神経外科教授 守山英二 国立病院機構福山医療センター脳神経外科 以上:3,328文字
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