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令和 1年11月12日(火):初稿 |
○「車両損害保険金は物損全体を補填するとした高裁(上告審)判決紹介」の続きで、一審平成29年2月28日東京簡裁判決(交民事裁判例集51巻2号272頁)、控訴審平成29年10月19日東京地裁判決(交民裁判例集51巻2号275頁)のまとめです。 ○先ず主文比較です。 一審東京簡裁判決主文 1 被告Y1及び被告Y2社は,原告X1に対し,連帯して3240円及びこれに対する平成27年4月2日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 2 原告X1は,被告Y2社に対し,16万1448円及びこれに対する平成27年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告X1は,原告三井住友海上に対し,54万5195円及びこれに対する平成27年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告Y1は,原告三井ダイレクトに対し,8万6760円及びこれに対する平成28年11月5日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 5 原告X1,被告Y2社,原告三井住友海上及び原告三井ダイレクトのそれぞれその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,全事件を通じて,これを10分し,その7を原告らの,その余を被告らの各負担とする。 7 この判決は,第1項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。 控訴審東京地裁判決主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社Y2は,控訴人X1に対し,連帯して,12万1350円及びこれに対する平成27年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 控訴人X1は,被控訴人会社Y2に対し,18万2592円及びこれに対する平成27年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 控訴人X1は,被控訴人三井住友海上に対し,51万5195円及びこれに対する平成27年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 被控訴人Y1は,控訴人三井ダイレクトに対し,1815円及びこれに対する平成28年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 控訴人X1のその余の本訴請求(当審における拡張請求を含む。),被控訴人会社のその余の反訴請求,被控訴人三井住友海上のその余の請求及び控訴人三井ダイレクトのその余の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを6分し,その5を控訴人らの負担とし,その余は被控訴人らの負担とする。 3 この判決は,1項(1)ないし(4)に限り,仮に執行することができる。 上告審東京高裁判決主文 1 原判決中上告人X1及び被上告人三井住友海上火災保険株式会社に関する部分を次のとおり変更する。 (1) 上告人X1は,被上告人三井住友海上火災保険株式会社に対し,47万9799円及びこれに対する平成27年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被上告人三井住友海上火災保険株式会社の上告人X1に対するその余の請求を棄却する。 2 上告人らのその余の本件各上告をいずれも棄却する。 3 訴訟の総費用は,これを6分し,その5を上告人らの負担とし,その余を被上告人らの負担とする。 ○事案整理です。 X1運転車両とY2所有Y1運転車両が接触事故。最終的過失割合認定は、X1が7割・Y1が3割。最終的損害認定は、X1が車両時価等41万0550円(控訴審認定)、Y2修理費用87万8850円及び休車損害11万7988円の合計99万6838円(一審認定)。 三井住友海上がY2に修理額から免責額10万円を控除した77万8850円を支払、三井ダイレクトは原告X1に対し,28万9200円を支払。 ○上告審当事者は、X1、三井住友海上。両者間判決主文変遷は以下の通り。 一審東京簡裁判決 原告X1は,原告三井住友海上に対し,54万5195円及びこれに対する平成27年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 控訴審東京地裁判決 控訴人X1は,被控訴人三井住友海上に対し,51万5195円及びこれに対する平成27年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 上告審東京高裁判決 上告人X1は,被上告人三井住友海上火災保険株式会社に対し,47万9799円及びこれに対する平成27年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ○一審判決認容54万5195円根拠は、三井住友支払保険金77万8850円のX1過失分7割相当額 控訴審判決認容51万5195円根拠は、過失相殺後の修理費用61万5195円(修理費用87万8850円×0.7)から免責分10万円を控除した金額 ○X1は、三井住友海上による損害賠償請求権の代位取得の範囲を争って上告し、上告審はX1の主張を認め、高裁認定51万5195円を47万9799円に3万5396円に減額しました。その理由は、三井住友支払保険金は、物損全体99万6838円を填補するもので、その3割相当額29万9051円(99万6838円×0.3)に充当され、これを控除した残額47万9799円(77万8850円-29万9051円)がY1の過失割合相当部分に充当され、三井住友海上は,Y2に代位し,X1に対し47万9799円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めることができるとしました。 ○僅か3万5396円を減額するため上告審まで争われましたが、保険金はあくまで被保険者の過失割合部分に優先的に充当される、との被保険者保護趣旨を再確認するためには、大変重要な判決です。 以上:2,290文字
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