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後遺障害等級第14級で労働能力喪失率14%を認めた判決紹介1

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平成29年 1月10日(火):初稿
○自賠責後遺障害第14級の事案で画像診断からも左手関節TFCC損傷と事故との因果関係を認め、36歳男子整体師の労働能力喪失率を14%と認定した平成27年12月17日仙台地裁判決(自保ジャーナル・第1970号)全文を2回に分けて紹介します。


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主 文
1 被告乙山は、原告に対し、685万0643円及びこれに対する平成24年5月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告保険会社は、原告の被告乙山に対する本判決が確定したときは、原告が被告乙山に損害賠償請求権を行使しないことを被告乙山に書面で承諾したことを条件として、原告に対し、685万0643円及びこれに対する平成24年5月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用(補助参加により生じた費用を含む。)は、これを10分し、その7を原告の負担とし、その余を被告ら及び被告保険会社補助参加人の負担とする。
5 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

(甲事件)
 被告保険会社は、原告が被告乙山に対する損害賠償請求権を行使しないことを被告乙山に対し書面で承諾することを条件に、原告に対し、3445万0518円及びこれに対する平成24年5月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(乙事件)
 被告乙山は、原告に対し、2000万円及びこれに対する平成24年5月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
1 争いのない事実等
(1) 事故の発生(以下「本件事故」という。)

ア 日  時 平成24年5月27日午後7時35分ころ
イ 場  所 宮城県<地番略>路上(以下「本件現場」という。)
ウ 被告車両 普通乗用自動車(車両番号略、以下「被告車」という。)
         上記運転者 被告乙山
  原告車両 普通乗用自動車(車両番号略、以下「原告車」という。)
         上記運転者 原告
エ 事故態様 原告車が優先道路を進行し、本件現場の交差点(以下「本件交差点」という。)に進入したところ、被告車が左側交差道路から進行してきて、原告車に被告車前部を衝突させた。原告車はその衝撃で左に回転して進行し、道路前方縁石に衝突して停止した。

(2) 被告乙山の責任及び責任原因
 被告乙山は、過失により本件事故を発生させたものであるから、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条及び民法709条により原告の被った損害を賠償する責任がある。

(3) 過失相殺
 本件事故においては、原告について1割の過失相殺が認められる。

(4) 原告の傷害及び治療経過
 原告は、本件事故により頸椎捻挫、外傷性頸部症候群、左手根間靱帯損傷、左手関節TFCC損傷等の傷害を負い(ただし、被告らは、左手関節TFCC損傷については「疑い」であり、本件事故との因果関係も不明であると主張している。)、別紙入通院明細一覧記載のとおりの通院を繰り返し、平成25年3月1日にBクリニック戊田四郎医師(以下「戊田医師」という。)から症状固定の診断を受けた。
ア 症状固定前
(ア) Bクリニックに平成24年5月29日から平成25年2月28日まで通院(実通院日数151日)
(イ) Cクリニックに平成24年12月7日通院(実通院日数1日)

イ 症状固定後
(ア) Cクリニックに平成25年4月1日通院(実通院日数1日)
(イ) D病院に平成25年5月28日に1日通院(実通院日数1日)

(5) 自動車総合保険契約
 被告乙山は、被告保険会社との間で、平成24年5月27日までに保険契約者を被告乙山、被保険者を被告乙山本人及び被告車運転者、保険期間を保険契約締結日から1年間とし、被告車の所有、使用又は管理に起因して他人の生命又は身体を害すること(以下「対人事故」という。)により、被告乙山が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して保険金を支払う旨の対人賠償責任保険を含む自動車総合保険契約を締結した。

 同保険における自動車総合保険普通約款(以下「約款」という。)には「①対人事故によって被告乙山の負担する法律上の賠償責任が発生した場合は、損害賠償請求権者たる原告は、被告保険会社が被告乙山に対して支払責任を負う限度において、被告保険会社に対し、被告乙山が原告に対して負担する法律上の損害賠償責任を負う金額を請求することができること(以下「約款①」という。)」及び「②損害賠償請求権者たる原告が被告乙山に対する損害賠償請求権を行使しないことを被告乙山に対し書面で承諾した場合は、被告保険会社が①の金額を原告に対して直接支払うこと(以下「約款②」という。)」が定められている。

2 争点(損害及びその額)
(原告の主張)
(1) 治療費
 (被告保険会社既払分88万2714円)7260円
 原告は、治療費として被告保険会社から支払われた分のほかにD病院に7260円を支払っている。

(2) 通院交通費 (被告保険会社既払分3万9680円)4530円

(3) 休業損害 151万6664円
 原告は、本件事故当時36歳で、整体院を経営する傍ら夜間アルバイトをし、妻と長男と3人暮らしであった。平成11年から整体院を自営し、その売上げは平成21年で219万6,500円、平成22年で370万7000円、平成23年223万1000円で、さらに夜間にアルバイトをしていたので、本件事故前の平均収入は少なくとも350万円あった。
 原告は、本件事故による傷害で約9ヶ月間に152日通院し、自賠法後遺障害等級11級相当の後遺障害を残し、労働能力を20%喪失したのであるから休業損害は次のとおりとなる。
 (計算式)
ア 本件事故後1ヶ月間
 350万円÷12ヶ月×1ヶ月=29万1666円
イ その後5ヶ月
 350万円÷12ヶ月×5ヶ月×0.6=87万4999円
ウ その後症状固定まで
 350万円÷12ヶ月×3ヶ月×0.4=34万9999円

(4) 逸失利益 2429万2064円
ア 原告は、症状固定時37歳であり、稼働期間30年のライプニッツ係数は15.372である。
イ 原告は、平成14年には約718万円、平成15年には646万円の売上げを上げていた。自営業の場合は売上げを算定基準とすべきであり、また、たまたま低下した3年間の実績だけでなく売上げの可能性を考慮すべきである。
 よって、平成23年賃金センサス産業計、企業規模計、男子全年齢平均賃金である526万7600円を基礎収入として算定すべきである。
ウ 原告の労働能力喪失率は、後遺障害等級11級を前提とすると20%であるが、原告が整体院経営を主業務としており、主な業務はマッサージ等手技療法で両手を使って行うものである。原告は、左手をほとんど使用することができないことにより、整体院の業務は大きな制約を受けている。
 よって、労働能力喪失率は30%として逸失利益を算定するべきである。
 (計算式)
 526万7600円×0.3×15.372=2429万2064円

(5) 慰謝料
ア 通院慰謝料 123万円
 原告は、本件事故日から症状固定日まで約9ヶ月間、152日もの通院を余儀なくされたものである。通院慰謝料としては123万円が相当である。
イ 後遺障害慰謝料 430万円
 原告の後遺障害は少なくとも11級相当であり、前記のとおり、その症状の程度は極めて厳しいもので、この精神的苦痛に対する慰謝料は430万円が相当である。

(6) 小計 3135万0518円

(7) 弁護士費用 310万円

(8) 合計 3445万0518円

(9) 一部請求
 原告は、本件において、被告乙山に対し、前記損害合計額の一部請求として2000万を請求する。

(被告の認否、主張)
(1) 前記(原告の主張)(1)の治療費は、症状固定日までの既払分86万1365円を認める。

(2) 同(2)の交通費は認める。

(3) 同(3)の休業損害は否認する。

(4) 同(4)の逸失利益は、年収39万7395円、労働能力喪失率5%、ライプニッツ係数4.3295(労働能力喪失期間5年)を前提に、8万6026円の範囲で認める。

(5) 同(5)のアの通院慰謝料は、67万円の範囲で認める。

(6) 同(5)のイの後遺障害慰謝料は、90万円の範囲で認める。

(7) 同(7)の弁護士費用は不知。

以上:3,494文字

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