平成28年 9月18日(日):初稿 |
○株式会社創耕舎発行「交通事故診療と損害賠償実務の交錯」の中の藤川病院藤川謙二医師「交通事故診療の新しい診療報酬体系に向けて(日本医師会の取組み)」備忘録です。 ・問題提起 自賠責保険は、労働者救済の労災保険制度と同様に交通事故被害者救済制度として登場し、被害が軽傷化した現在十分に機能しているが、以下の問題がある ①交通事故患者治療における健康保険使用問題、②人身傷害保険による治療費問題、③交通事故外傷患者の接骨院施術問題 ・交通事故治療への健康保険使用 以下の理由により、交通事故傷害治療は自賠責保険使用を優先すべき ①健康保険治療(健保治療)は健保法により使用できる薬剤種類・量、リハビリ回数に制限 ②健保では後遺症という概念がないため医療機関は症状固定日を診断書に記載できない ③健保組合から加害者(保険会社)への求償請求が適確に行われず健保組合に損害を与える場合が多い ※交通事故受傷について健保使用のためには第三者行為届提出を求め、第三者(加害者側)への求償を確実に行う建前だが、求償が確実になされているか疑問 ・健保使用の問題点 健保使用治療では、上記②後遺症概念がないため医療機関は自賠責保険様式診断書(診断書及び後遺障害診断書)、レセプト(診療報酬明細書)を記載する義務がなく患者が損害賠償請求する際必要な書類が手に入らなくなる事態発生 健保使用の場合、加害者側任意保険会社が患者自費負担分をまとめて一括支払することが多い-「健保使用一括払い」と呼ばれているが、これは健保法第74条違反では ・第三者行為傷病届と求償問題 交通事故受傷についての健保使用率は、損害保険料率算出機構調査結果10.5%、日本医師会調査結果は19.9%と2倍の乖離 交通事故受傷患者の健保使用理由は、加害者側損保要請57%、本人加入損保要請24%と8割が損保からの要請 損保からの要請理由は、患者側過失が大きいが52%、患者自費負担分は損保が立替支払いし患者自身の支払不要なことが30% 健保使用の場合、レセプト上、患者の私病との区別をしていない医療機関が22%あり、求償事務に問題 健保使用の場合でも損保所定書類作成を求められている医療機関が70%、実際損保様式書類を提出している医療機関が64% 健保組合連合会と損保会社の間で「交通事故にかかる『第三者行為による傷病届』の提出にかかる取り決め」を平成25年4月1日から実施しているが、この取り決めが確実に行われているか疑問 自賠責保険使用がベストの選択 ・人身傷害補償保険(人傷保険) 平成21年7月1日金融庁通達により全ての任意自動車保険に付保が義務づけらた患者の過失割合如何にかかわらず一定金額の保険金支払い 算定基準に「傷害の治療を受ける際は公的制度の利用等により費用の軽減に努める」との記載があり、患者は健保使用を要請される例が多い ・柔道整復師問題 柔道整復師数の飛躍的増加により自賠責保険請求額も平成21年478億円から平成25年717億円と50%増し 平成25年自賠責保険請求平均施術費約31万円・施術日数53日で医療機関平均診療費24万円、平均診療日数20日より多い 柔道整復師数適正化、柔道整復師療養費算定基準構築、交通事故患者、損保会社および医師への啓発活動を提案したい ・自賠責診療費算定基準 平成元年6月日本医師会・自算会(現損害保険料率算定機構)・損保協会三者協議による自賠責診療算定基準 現行労災保険診療費算定基準に準拠し、薬剤等「モノ」は単価12円、その他技術料は20%加算額を上限 現在ここの医療機関の6割がこの基準を採用 以上:1,470文字
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