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平成28年 5月12日(木):初稿 |
○「低髄液圧症候群との因果関係を認めた平成26年12月6日さいたま地裁判決紹介5」の続きで、判決別紙として掲載された低髄液圧症候群判断基準をそのまま掲載します。 **************************************** 別紙判断基準② 〈脳脊髄液漏出症の画像判定基準と解釈〉 A.脊髄MRI MRミエログラフィー 1.硬膜外脳脊髄液 【判定基準】 硬膜外に脳脊髄液の貯留を認める。 ① 硬膜外に水信号病変を認めること。 ② 病変は造影されないこと。 ③ 病変がくも膜下腔と連続していること。 *静脈叢やリンパ液との鑑別が必要である。 *perineural cystや正常範囲のnerve sleeve拡大を除外する必要がある。 【特徴】 MIP像(MR ミエログラフィー)における所見の陽性率は低いが、重要な所見である。 脊髄MRIの脂肪抑制T2強調水平断像と脂肪抑制造影T1強調水平断像による脊柱管内における硬膜外脳脊髄液の所見は診断能が高い。 【解釈】 硬膜外の水信号病変のみの場合、脳脊髄液漏出の『疑』所見とする。 病変が造影されない場合、脳脊髄液漏出の『強疑』所見とする。 病変がくも膜下腔と連続している場合、脳脊髄液漏出の『強疑』所見とする。 病変が造影されず、かつくも膜下腔と連続している場合、脳脊髄液漏出の『確実』所見とする。 2.硬膜下脳脊髄液 【特徴】 理論上あり得るが、実際の診断例はない。 *くも膜嚢胞との鑑別が必要である。 【解釈】 異常所見には含めない。 3.まとめ MRミエログラフィーにおける所見陽性率は低いものの、脊髄MRI/MRミエログラフィーは脳脊髄液漏出の診断に重要である。 硬膜外に水信号病変を認める場合、脳脊髄液漏出の『疑』所見とする。 硬膜外の水信号病変が造影されない場合、脳脊髄液漏出の『強疑』所見とする。 硬膜外の水信号病変がくも膜下腔と連続している場合、脳脊髄液漏出の『強疑』所見とする。 硬膜外の水信号病変が造影されず、かつくも膜下腔と連続している場合、脳脊髄液漏出の『確実』所見とする。 B.脳槽シンチグラフィー 1.硬膜外のRI集積 【判定基準】 〈陽性所見〉 ① 正・側面像で片側限局性のRI異常集積を認める。 ② 正面像で非対称性のRI異常集積を認める。 ③ 頸~胸部における正面像で対称性のRI異常集積を認める。 〈付帯事項〉 ① 腰部両側対称性の集積(クリスマスツリー所見等)は参考所見とする。 〈理由〉 *technical failure(half-in half-outや穿刺部からの漏出等)を除外できない。 *PEG(pneumoencephalography)では硬膜下注入がしばしば認められた。 〈読影の注意事項〉 ① 正確な体位で撮像されていること、側湾症がないこと。 ② 腎や静脈叢への集積を除外すること。 ③ perineural cystや正常範囲のnerve sleeve拡大を除外すること。 ④ 複数の画像表示条件で読影すること。 *脳槽シンチグラフィーは撮像条件や画像表示条件が診断能力に強く影響するが、未だ条件の標準化はなされていない。(本研究班では、ファントムスタディーを行い、撮像・画像表示を標準化している。) 【特徴】 本法は脳脊髄液漏出のスクリーニング検査法と位置づけられる。 本法のみで脳脊髄液漏出を確実に診断できる症例は少ない。 【解釈】 片側限局性のRI異常集積は、脳脊髄液漏出の『強疑』所見とする。 非対称性のRI異常集積は、脳脊髄液漏出の『疑』所見とする。 頸~胸部における対称性の集積は、脳脊髄液漏出の『疑』所見とする。 2.脳脊髄液循環不全 【判定基準】 24時間像で脳槽より円蓋部のRI集積が少なく、集積の遅延がある。 *いずれかの時相で、脳槽内へのRI分布を確認する必要がある。 【特徴】 脳脊髄液漏出がある場合に、一定の頻度で認められる。 【解釈】 円蓋部のRI集積遅延は、脳脊髄液循環不全の所見とする。 脳脊髄液漏出の『疑』所見に加えて脳脊髄液循環不全が認められた場合、脳脊髄液漏出の『強疑』所見とする。 脳脊髄液漏出の『強疑』所見に加えて脳脊髄液循環不全が認められた場合、脳脊髄液漏出の『確実』所見とする。 3.2.5時間以内の早期膀胱内RI集積 【判定基準】 観察条件を調整して膀胱への集積を認めれば、陽性とする。 【特徴】 正常者でも高頻度にみられる。正常所見との境界が明確ではなく、今回の診断基準では採用しない。 【解釈】 客観的判定基準が確立されるまでは参考所見にとどめ、単独では異常所見としない。 4.まとめ 片側限局性のRI異常集積は、脳脊髄液漏出の『強疑』所見とする。 非対称性のRI異常集積は、脳脊髄液漏出の『疑』所見とする。 頸~胸部における対称性の集積は、脳脊髄液漏出の『疑』所見とする。 脳脊髄液漏出の『疑』所見と脳脊髄液循環不全があれば、『強疑』所見とする。 脳脊髄液漏出の『強疑』所見と脳脊髄液循環不全があれば、『確実』所見とする。 C.CTミエログラフィー 1.硬膜外の造影剤漏出 【判定基準】 硬膜外への造影剤漏出を認める。 ① 画像上、解剖学的に硬膜外であることを証明すること。 ② 穿刺部位からの漏出と連続しないこと。 ③ 硬膜の欠損が特定できる。 ④ くも膜下腔と硬膜外の造影剤が連続し、漏出部位を特定できる。 【特徴】 症例の蓄積が少ない。 technical failure(half-in half-outや穿刺部からの漏出等)を否定できれば、現時点で最も信頼性が高い検査法と言える。 【解釈】 硬膜外に造影剤を証明できれば、脳脊髄液漏出の『確実』所見である。 硬膜の欠損や漏出部位を特定できれば、脳脊髄液漏出の『確定』所見である。 2.硬膜下腔への造影剤漏出 【判定基準】 硬膜下腔への造影剤漏出を認める。 ① 画像上、解剖学的に硬膜下腔であることを証明すること。 ② 穿刺部位からの漏出と連続しないこと。 ③ くも膜の欠損が特定できる。 ④ くも膜下腔と硬膜下腔の造影剤が連続し、漏出部位を特定できる。 【特徴】 理論上あり得るが、実際の診断例はない。 *くも膜嚢胞との鑑別が必要である。 【解釈】 異常所見には含めない。 3.まとめ CT ミエログラフィーで硬膜外に造影剤を証明できれば、脳脊髄液漏出を診断できる。 穿刺部位からの漏出を否定できれば、脳脊髄液漏出の『確実』所見である。 硬膜の欠損やくも膜下腔と連続する硬膜外造影剤貯留は、脳脊髄液漏出の『確定』所見である。 〈脳脊髄液漏出症の画像診断基準〉 脳脊髄液漏出症の画像診断 ・脳脊髄液漏出の『確定』所見があれば、脳脊髄液漏出症『確定』とする。 ・脳脊髄液漏出の『確実』所見があれば、脳脊髄液漏出症『確実』とする。 ・脳槽シンチグラフィーと脊髄MRI MRミエログラフィーにおいて、同じ部位に『強疑』所見と『強疑』所見、あるいは『強疑』所見と『疑』所見の組み合わせが得られた場合、脳脊髄液漏出症『確実』とする。 ・脳槽シンチグラフィーと脊髄MRI MR ミエログラフィーにおいて、同じ部位に『疑』所見と『疑』所見、あるいは一方の検査のみ『強疑』、『疑』所見が得られた場合、脳脊髄液漏出症『疑』とする。 『確定』所見 CTミエログラフィー: くも膜下腔と連続する硬膜外造影剤漏出所見 『確実』所見 CTミエログラフィー: 穿刺部位と連続しない硬膜外造影剤漏出所見 脊髄MRI MRミエログラフィー: くも膜下腔と連続し造影されない硬膜外水信号病変 脳槽シンチグラフィー: 片側限局性RI異常集積+脳脊髄液循環不全 『強疑』所見 脊髄MRI MRミエログラフィー: ① 造影されない硬膜外水信号病変 ② くも膜下腔と連続する硬膜外水信号病変 脳槽シンチグラフィー: ① 片側限局性RI異常集積 ② 非対称性RI異常集積or頸~胸部における対称性の集積+脳脊髄液循環不全 『疑』所見 脊髄MRI MRミエログラフィー: 硬膜外水信号病変 脳槽シンチグラフィー: ① 非対称性RI異常集積 ② 頸~胸部における対称性の集積 以上:3,242文字
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