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平成27年 2月 7日(土):初稿 |
○しつこく、被害者に過失がある場合の交通事故損害賠償請求における労災等保険給付金控除時期について記述します。現在取扱事件で大きな論点となっているところ、私が主張する控除後相殺説をなかなか裁判官に判って貰えないからです(^^;)。 ○この問題について詳細に解説している龍谷大学法学部若林三奈教授の論文を発見しました。立命館法学2005年2・3号(300・301号)掲載「社会保障給付と損害賠償との調整-被害者に過失ある場合の併行給付の控除範囲-」と言う論文です。この問題についての判例・学説状況が詳細に説明されています。若林教授は、私が不当極まりないと考える控除前相殺説の元凶とも言うべき平成元年4月11日最高裁判決を紹介しながら、「しかしながら,実務家も含め,学説の多数においては,控除前相殺説には否定的である。」と記述されています。 ○そして、最高裁と同じ控除前相殺説に立ちながら、これを修正する割合的控除説を提唱されて、結果として控除後相殺説と同じ結論になることを論証されています。これは大変素晴らしい考えです。以下、その部分を紹介します。 被害者X総損害額1000万円、保険給付額700万円、X過失割合20%の場合 加害者Yへの請求額は 控除前相殺説 (1000万円×0.8=)800万円-700万円=100万円 控除後相殺説 (1000万円-700万円=)300万円×0.8=240万円 となり、両説の差異は、240万円-100万円=140万円になります。 加害者Yの負担額は 控除前相殺説 保険者がYに700万円全額求償の場合 Xへ100万円+保険者へ700万円=800万円 となります。 しかし、求償実務では、そこで「労災保険給付金求償範囲関する昭和48年2月16日札幌地裁判決全文紹介」に、昭和54年4月2日保険発第24号、庁保険発第6号通達によれば、「求償額については、被害者にも明らかに過失があると認められるときは、代位取得した損害賠償請求額を被害者の過失割合に応じて減額」しているはずです。 だとすると保険者のYへの求償はY過失割合部分だけで700万円×0.8=560万円となり、Yは結果として140万円の負担を免れ、負担額はXへの100万円+保険者への560万円の合計660万円で済みます。 この結果は、どう考えても不合理と私は確信しています。 そこで若林教授は、全損害を過失相殺した残額から控除する保険金額を加害者の過失割合部分だけとする割合的控除説を提唱しました。図示すると以下の通りです。 全損害額1000万円について過失相殺して800万円とするのは、控除前相殺説ですが、控除する保険金額も加害者Yの過失割合部分700万円×0.8=560万円とします。 その結果、被害者Xが加害者Yに請求できる金額は、控除後相殺説と同じ240万円になります。加害者Yに不当な利益を与えず、且つ、理論的整合性もあります。この考えも裁判官に説明します(^^)。 以上:1,211文字
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