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苦労した交通事故事件で弁護士冥利に尽きるお褒めに感謝4

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平成26年10月 7日(火):初稿
○「実は、負ける側こそ弁護士の腕の見せ所(大切なこと)-全く同感」の続きです。
Aさんは、単なる追突によるむち打ち症から、頭部打撲等頭部に外傷が全くないのに統合失調症が発症したとして自賠責後遺障害等級14級認定に対し、異議の申立を繰り返し、自賠責保険・共済紛争処理機構に調停の申立をするも統合失調症に関しては一切交通事故による傷害との因果関係が認められないことに不満で何人かの弁護士に統合失調症発症による損害賠償請求を相談するも無理だと断られ続け、最後に父親と一緒にHPを見たと言って当事務所を訪れました。

○最初に私の事務所を訪れたときのAさんの状態は、失礼ながら目つきが普通ではなく、時折、異常に興奮を示すなど情緒不安定が著しく、精神状態に異常があることが素人目にも明らかでした。Aさんの統合失調症については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第45条の保健福祉手帳第1級が交付され、国民年金障害基礎年金障害の等級1級10号に該当するとの国民年金裁定通知を受けていることから明白でした。

○問題は、発症が明白な統合失調症と追突事故との因果関係でした。Aさんは、本件事故以前は、普通に仕事について、結婚もして夫婦仲もよく、本件事故直前には新たな起業を目指して張り切って研修を受け、事業所建物を購入して、着々と新事業をスタートさせるべく準備中でした。それが、本件事故による傷害での入院により、すっかり計画が狂い、その上、加害者は事故の2日後に弁護士を代理人としてつけて通知し、事故後25日後に代理人弁護士名義で人身損害については一切責任がなく、物損だけしか支払わない旨を宣言し、事故後3ヶ月後に、加害者の過失割合は30%だけであり、車両修理費30%相当額の4万円弱しか支払わないと通知してきました。

○Aさんは、これらの加害者側対応に追い詰められ、次第に精神に変調を来して最終的には統合失調症を発症しました。Aさんの後遺障害は、自賠責からむち打ち症による神経症状についてのみ第14級と認定されましたが、統合失調症を発症したAさんは、到底、納得できず最終的には自賠責保険・共済紛争処理委員会の裁定を受けましたが、頭部に何ら外傷のない本件事故では、統合失調症との因果関係は一切認められないとの結論は変わりませんでした。

○私は、同居していたAさんのお父さんから以上の経緯を詳しく聞き取り、保険会社側の事故対応に、これは余りにひどすぎると義憤を感じました。しかし、交通事故と統合失調症に関する判例をつぶさに調査するも、頭部外傷がなくてその因果関係を認めた事例は皆無でした。これは大変難しい事案で、事故と統合失調症との因果関係を認めて貰うのは至難の業と実感しました。しかし、統合失調症発症によるAさんの被害は甚大です。正に人生を奪われた状況です。

○この事件は、少なくとも仙台では、私以外に受任する弁護士はいないだろう、誰も受任しなければAさんの統合失調症は悪化する一方になるだろう、「事件は負け筋だけれども、俺こそが、これを引き受けて社会におかしな遺恨が残るのを阻止するぞと、そういう意気込み。」を持ったのです。そして2,3年前に同じビルの階下に独立し、時折、仕事を手伝って貰っていた2人の若い弁護士に、困難極まる事件だが手伝ってくれるか声をかけ、弁護士3名で受任して訴えを提起しました。
以下、「苦労した交通事故事件で弁護士冥利に尽きるお褒めに感謝5」に続きます。
以上:1,419文字

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