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平成26年 7月30日(水):初稿 |
○「事故日から20年以上経過後訴え提起を認めた平成25年10月11日判決紹介1」の続きで、交通事故で20年以上経過した後に訴え提起をした事案について、除斥期間の例外を認めた平成25年10月11日水戸地裁下妻支部渡辺力裁判官の判決(判時2222号83頁)です。 ○先ず事案です。 ・X女(平成2年生まれ)は平成4年12月29日に父運転乗用車同乗中の追突事故で、軸椎歯突起骨折・特発性側湾症・脳挫傷・右腎挫傷・右鎖骨骨折等の傷害を受けた ・傷害治療のため、事故日から平成13年8月までの間に合計202日入院し、平成5年8月から平成24年8月までの間に合計35日通院 ・平成24年8月8日症状固定診断を受け、同年9月26日「(頸椎)脊柱に変形を残すもの」(11級7号)、「骨盤骨に著しい変形を残すもの」(12級5号)、「(後頭部瘢痕)女子の外貌に醜状を残すもの」(12級14号)として併合第10級相当との認定通知を受領 ・平成25年2月23日、併合10級の後遺障害で労働能力喪失率27%として損害賠償金約2999万円の支払を求める訴え提起 ○追突事故にしては、凄い重傷であり、上半身全体に凄まじい衝撃を受けたことが推定されますが、病院3カ所に合計202日入院し、前後して平成5年8月から平成24年8月までの19年間に35日間通院し、平成24年8月症状固定というのも、大変、珍しい事案です。19年間に35回では、年に2回も通院していません。しかし、後遺症と交通事故傷害の因果関係は明白だったと思われます。 ○争点は、実質的には、民法第724条除斥期間適用の有無だけで、実質加害者任意保険会社の被告側では、平成4年12月29日の事故から20年以上経過した平成25年2月3日の訴え提起は除斥期間経過後で、損害賠償請求権は法律上当然に消滅していると主張し、この判決は保険会社側が控訴し、平成26年7月時点では控訴審の結論が出ているかどうかは不明です。 ○この争点に関し、平成25年10月11日水戸地裁下妻支部渡辺力裁判官の判決は、約2999万円請求について約1765万円を認定し、その理由として次のように述べています。 ・民法第724条後段の20年の期間は除斥期間 ・本件交通事故は、平成24年8月8日後遺障害診断書を任意保険会社に提出して事前認定手続の結果、9月26日併合10級の認定を受け、その6ヶ月以内の平成25年2月23日に提訴 ・本件では平成24年8月8日以前の訴え提起は困難で、同年9月26日から訴え提起まで6ヶ月程度の準備期間は必要 ・従って、原告が症状固定診断書を被告側任意保険会社に提出して事前認定の手続を進めさせてから平成25年2月23日に本訴を提起するまでの経過は、原告が本件交通事故による損害賠償請求権を行使する一連一体の行為と捉えることができ、そうすると本件では交通事故から20年の除斥期間内において権利行使がなされたと見るのが相当 ・このように捉えても、その幅は症状固定の診断書を提出して事前認定の手続を進めさせてから認定結果が出るまでの事前認定期間及び事前認定から6ヶ月以内の訴え提起準備期間に限られるから、法律関係を画一的に確定しようとする除斥期間の趣旨を乱すことはない ○原告の約2999万円の請求に対し、認定金額が1765万円で約1200万円減額になった主な理由は、逸失利益の中間利息控除方法の違いでした。原告の逸失利益請求額は約1879万円のところ、認定額は約728万円でした。これは損害額全体について平成4年12月19日からの遅延損害金を認めているところ、同日から症状固定時期平成24年8月8日まで約19年の中間利息も控除が必要になるからです。 以上:1,515文字
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