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事故日から20年以上経過後訴え提起を認めた平成25年10月11日判決紹介1

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平成26年 7月29日(火):初稿
○民法第5章不法行為最後の条文は、不法行為による損害賠償請求権の期間の制限として、以下の通り規定されています。
民法第724条
 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。


○3年間については消滅時効期間と呼ばれて、一般に良く知れ渡っていますが、「不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」は意外に良く知られていません。不法行為によって損害が生じても、不法行為時から20年経過すれば、被害者又はその法定代理人が、損害及び加害者を知ろうが知るまいが、兎に角、損害賠償請求は出来なくなると言う規定です。

○この20年の期間について、消滅時効説と除斥期間説の対立がありましたが、平成元年12月21日最高裁判決(判タ753号84頁、判時1379号76頁)によって除斥期間として決着を見ました。この事案は、昭和24年2月14日、不発焼夷弾の爆破作業中の不発弾爆発事故で重度の火傷により顔面全体の瘢痕・左無眼球・視力の極度の低下・難聴等の後遺症を負った人が妻と共に事故から28年10ヶ月経過した昭和52年12月17日に国に対し、本人1000万円、妻500万円の慰謝料請求をしたものです。

○この請求について一審鹿児島地裁は消滅時効成立を理由に棄却しましたが、二審福岡高裁は、3年の消滅時効を認めず、且つ、民法第724条後段20年の長期消滅時効乃至除斥期間の主張は信義則違反又は権利濫用として認めず、本人500万円、妻250万円の慰謝料支払を国に命じました。

○これに対し、平成元年12月21日最高裁判決は、民法第724条後段の規定は除斥期間と明言し、「同条がその前段で3年の短期時効を規定し、更に同条後段で20年の長期時効を規定していると解するのは、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図する同条の規定の趣旨に沿わないこと、むしろ同条前段の3年の時効は損害及び加害者の認識という被害者側の主観的な事情によってその完成が左右されるが、同条後段の20年は被害者側の認識のいかんを問わず一定の時の経過によって法律関係を確定させるため請求権の存続期間を画一的に定めたものと解するのが相当」として、二審判決を破棄し、一審判決を維持しました。

○この最高裁判決は更に、「当事者が除斥期間の経過により請求権が消滅した旨を主張しなくても、裁判所は、除斥期間の性質から、当然に右期間の経過により請求権が消滅したものと判断すべきものであり、信義則違反や権利濫用の主張は、主張自体失当である」としました。除斥期間は期間中の経過により権利消滅の効果が当然に生じ、当事者の援用がなくても裁判所はこれに基づいて裁判しなければならない性質を有するから(司法研修所・民事訴訟における要件事実第1巻176頁、通説)、信義則違反や権利濫用の判断の対象となる当事者の主張の存在は本来予定されていないと解されています。

○平成10年6月12日最高裁判決(判タ980号85頁、判時1644号42頁)は、生後5ヶ月時に痘そう集団予防接種を受け、その後全く意思能力を有しない寝たきり状態となった被害者が、不法行為(予防接種)の時から20年を経過する前6ヶ月内においてこの予防接種を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後その被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から6ヶ月月内にこの不法行為による損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法158条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じないと、724条後段の例外を認めました。

○この平成10年6月12日最高裁判決は、極めて例外的に除斥期間例外を認めましたが、交通事故で20年以上経過した後に訴え提起をした事案について、除斥期間の例外を認めた画期的判例が出ました。平成25年10月11日水戸地裁下妻支部渡辺力裁判官の判決(判時2222号83頁)です。その内容は別コンテンツで紹介します。

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