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直接請求に関する昭和54年10月30日東京高裁判決全文紹介1

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平成26年 5月 7日(水):初稿
○一般自動車総合保険契約(任意保険契約)で被害者の加害者保険会社に対する直接請求権の法的性質について、「本件保険契約は、いわゆる任意保険としての責任保険であつて、私人間の契約に外ならないところ、被害者にまで保険金請求権を直接認める趣旨は、契約当事者の意思に包含されているとはいえず、また包含されているとみるべきであるとすることはできない。昭和51年約款にも、その旨の規定はなく、同約款第1章第6条第1項は、損害賠償額の支払いの直接請求を認めたもので、その法的性質は、保険者が、被保険者即ち加害者に対し、同人が被害者に支払うべき損害賠償金債務の引受けを約したものと解すべきであり、このことは却って、保険金の直接請求を否定したことを含意するといえる。」とした昭和54年10月30日東京高裁判決全文を3回に分けて紹介します。


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主  文
原判決を次のとおり変更する。
被控訴人A株式会社は、控訴人ら各自に対し、各482万円及びこれに対する昭和51年6月1日から右完済まで年5分の割合による金員を支払え。
被控訴人日新火災海上保険株式会社は、控訴人らの被控訴人A株式会社に対する本判決が確定したときは、控訴人ら各自に対し、各482万円及びこれに対する右確定の日の翌日から右完済まで年5分の割合による金員を支払え。
控訴人らの被控訴人日新火災海上保険株式会社に対するその余の請求を棄却する。
被控訴人A株式会社の附帯控訴を棄却する。
訴訟費用は、被控訴人A株式会社の附帯控訴に関する部分につき同被控訴人の負担とし、その余の部分につき第1、2審を通じてこれを2分し、その1を控訴人らの、他の1を被控訴人らの各負担とする。
この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。 

事  実
第一 当事者の求めた裁判
(控訴)
一 控訴人ら

1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人らは、各自控訴人らそれぞれに対し、482万円及びこれに対する昭和51年6月1日から右完済まで年5分の割合による金員を支払え。
3 仮執行宣言

二 被控訴人ら
 控訴人らの控訴をいずれも棄却する。

(附帯控訴)
一 被控訴人ら

1 原判決中被控訴人ら敗訴の部分を取り消す。
2 控訴人らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審とも控訴人らの負担とする。

二 控訴人ら
 被控訴人らの附帯控訴をいずれも棄却する。

第二 当事者の主張
一 請求原因
1 交通事故の発生

 昭和51年5月31日午後7時20分頃、埼玉県春日部市○○○○番地先道路で、訴外N運転の乗用自動車(登録番号埼○○さ○○○○)がBに衝突して負傷させ、同女は右負傷のため翌月2日死亡した。

2 被控訴人らの責任
(一) 被控訴人A株式会社(以下「被控訴人A」という。)は、1の加害自動車を所有し、自己のため運行の用に供していたので、自動車損害賠償保障法3条の規定により後記損害を賠償すべき義務がある。

(二) 被控訴人日新火災海上保険株式会社(以下「被控訴人保険会社」という。)は、被控訴人Aとの間に、右加害自動車につき、同被控訴人を被保険者とし、本件交通事故発生日を保険期間内とする保険金3000万円の自家用自動車保険契約を締結した保険者であるから、以下のとおり、控訴人らの直接の、又は債権者代位による、後記損害と同額の保険金請求に対し、これを支払う義務がある。

(直接請求)
 本件保険契約が、いわゆる責任保険であることの特質等からすれば、本件事故による損害賠償金債務の履行期が到来すれば、当然に保険金債務の履行期が到来し、損害賠償金債務が履行遅滞になれば、当然に保険金債務も履行遅滞になるべきものであり、そして、損害賠償金債務が履行されない限り、被害者である控訴人らが直接被控訴人保険会社に対し、保険金債務の履行を請求できるとしなければならない。
 また、本件保険契約の内容をなす自家用自動車保険普通保険約款(以下「昭和51年約款」という。)第1章第1条、第6条第1項によれば、同条第2項とは無関係に、損害賠償請求権者である控訴人らにおいて、被控訴人保険会社に対し直接保険金の支払いを請求できるものである。

(代位請求)
 控訴人らは、被控訴人Aに対し、後記損害482万円の賠償請求権を有するから、右債権を弁済するに十分な資力のない被控訴人Aが、本件保険契約に基づいて被控訴人保険会社に対して有する保険金請求権を、被控訴人Aに代位して行使する。
 この場合、かりに被保険者である被控訴人Aが損害賠償請求権者である控訴人らに対して負担する法律上の損害賠償責任の額が判決により確定したときに初めて、保険者である被控訴人保険会社は被控訴人Aに対して保険金を支払うべきものであるとしても、被控訴人Aに対する損害賠償請求の訴に、被控訴人保険会社に対する保険金請求の訴が併合されている本件のような場合には、右賠償額確定の要件を緩和して、保険金請求訴訟を適法として許すべきである。

3 損害
(一) Bの損害(1万円未満切捨て)
(1) 治療費 29万円
(2) 逸失利益 1532万円
(イ) 算定基礎
 Bは、昭和26年2月7日生まれの女性で、死亡時から42年は就労可能であつた。収入は、収入期間を平均し、賃金センサスにおける企業規模計、産業計女子労働者、中学卒により、かつ全年令層平均の収入を下らないものとし、生活費は収入の5割、現価はホフマン式によるべきものとする。その算式は後記のとおりである。
 なお、中間利息控除による現価換算をホフマン式によつたのは、ライプニツツ式と比べてより合理的であるからである。即ち、(1)ライプニツツ式は、金銭の利用を預金で考え、預金は複利が一般的であることを基礎とするが、金銭の利用分は購買力の増殖で考えるべきで、現在に接着する戦後30年の恒常的な物価上昇のもとでは、利率が物価上昇率より高かつた僅かの年でも、その差は年率2パーセントを超えることはなかつたから、今後も年率5パーセントの高率を維持しながら複利で増殖できるようなことはあり得ない。それ故中間利息としては、法定利息単利年5パーセントの割合で控除すれば十分であり、控除超過となつても控除不足ということはない。

(2)遅延利息は、民法が、単利による年5パーセントと明定している。中間利息も金銭の利用分として先取りと後取りの違いはあつても同性質のものであるから、裁判の論理性と法的安定性の観点からして、両者を同様に扱うべきである。

(3)ホフマン式は、長期にわたる逸失利益の算出の場合、換算現価が永久に残るに至るとの批判があるが、それは換算現価自体が毎年取り崩されてゆくことを顧慮しない誤解である。

(ロ) 算式
昭和51年6月から同52年5月まで
 (8万2600円×12+20万0900円)×0.5×0.9523=56万7618円
昭和52年6月から同53年5月まで
 (9万0100円×12+22万8300円)×0.5×(1.8614-0.9523)=59万5233円
昭和53年6月から同93年5月まで
 (9万6100円×12+24万4200円)×0.5×(22.2930-1.8614)=1427万5558円
  以上合計1543万8409円を1532万円に限局

(3) 慰藉料 400万円
 以上Bの損害合計1961万円を、控訴人らはBの父母で、相続により各自2分の1ずつ取得した。

(二) 控訴人らの損害
(1) 慰藉料 各200万円
(2) 葬儀費 各25万円
(3) 弁護士費用 各43万円

(三) 損害の填補
 控訴人らは、各自に属する損害賠償金の弁済として、それぞれ766万円を上回らない金額を受領した。

(四) 従つて、損害の残額は、控訴人ら各自につき482万円である。

4 結論
 よつて、控訴人らは、それぞれ、被控訴人Aに対し不法行為に基づく損害賠償金482万円とこれに対する不法行為の日の後である昭和51年6月1日から右完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金、被控訴人保険会社に対し前記の根拠に基づき右損害賠償金及び遅延損害金と同額の保険金の支払いを求める。



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