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弁護士費用特約での保険金請求権は弁護士には帰属せずに徹すべし

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平成25年10月11日(金):初稿
○「”高額請求問題で仲裁機関-弁護士保険巡り日弁連が設置検討”に疑問」を続けます。
2013/10/7日本経済新聞「高額請求問題で仲裁機関 弁護士保険巡り日弁連が設置検討」とのニュースによると、「09年に香川県で起きた交通事故では、被害者から依頼を受けた東京の弁護士が示談交渉で約400万円を相手から回収した上で、依頼者に詳しい説明をしないまま約200万円の報酬を損保会社に請求。算出方法などで、損保会社と争いになった例もある。」とあります。この例では、弁護士が依頼者の了解無く、直接、保険会社に法外な弁護士費用特約保険金を請求したように読めます。

○「”高額請求問題で仲裁機関-弁護士保険巡り日弁連が設置検討”に疑問」に弁護士費用特約の標準的約款例を記載しましたが、要点は次の通りです。
第2条(この特約の補償内容)
①当会社は、被保険者が日本国内において発生した次の各号のいずれかに該当する急激かつ偶然な外来の事故(以下「対象事故」といいます。)によって被った被害について、保険金請求権者が法律上の損害賠償請求を行う場合に次項に規定する弁護士費用を負担したことによって生じた損害に対して、この特約の規定に従い、弁護士費用保険金を支払います。
(中略)
②弁護士費用とは、あらかじめ当会社の同意を得て弁護士、司法書士、行政書士、裁判所またはあっせんもしくは仲裁を行う機関(申立人の申立にもとづき和解のためのあっせんまたは仲裁を行うことを目的として弁護士会等が運営する機関をいいます。)に対して支出した弁護士報酬、司法書士報酬もしくは行政書士報酬、訴訟費用、仲裁、和解または調停に要した費用とします。

第4条(用語の定義)
(中略)
(2)保険金請求権者
対象事故によって損害を被った次のいずれかに該当する者をいいます。
(イ)被保険者(被保険者が死亡した場合は、その法定相続人とします。)

(中略)

第7条(保険金の請求)
①当会社に対する保険金請求権は、弁護士費用または法律相談費用が発生した時に発生し、これを行使することができるものとします。


○以上の通り、弁護士費用特約保険金の請求権者はあくまで被保険者で交通事故被害者であり、委任された弁護士ではありません。ですから弁護士費用特約保険金の請求は被害者が行うのが筋です。ところが弁護士費用特約保険金支払実務で、保険会社は弁護士名義で弁護士費用特約保険金の請求することを要求してきます。

○私は、日弁連LAC(リーガル・アクセス・センター)から紹介されてきた事件は、LAC用書式がキッチリ定まっているため、その書式に従って保険会社宛請求書を作成していましたが、直接、交通事故事件を依頼されて委任契約を締結する場合、お客さまが弁護士費用特約を利用する場合、委任契約書と着手金の領収証を添付して、お客さま自身で請求して頂いていました。

○ところがある保険会社から、どうしても弁護士名義の請求書が欲しいと依頼され、以下の送付文を付けて請求書を出したことがあり、これからはこれを標準書式にするつもりです。
「 当職は、〒○○○-○○○○仙台市……の○○○○氏から交通事故損害賠償請求事件を依頼された弁護士です。

1)交通事故損害賠償請求事件委任契約締結
 当職は、別添委任及び報酬契約書の通り、○○氏から交通事故損害賠償請求事件を依頼されました。○○氏は、加害者側保険会社○○海上火災保険株式会社から後遺障害等級第○○級を前提に約○○○万円の示談解決を提案されています。しかし、○○氏の後遺障害は残された医療記録等から第○○級を主張し、これを前提に約○○○○万円を超える請求での訴え提起をします。
 当職の交通事故損害賠償請求訴訟事件の弁護士報酬は、着手金一律21万円、報酬金は保険会社提案額に上乗せした部分についての20%相当額+消費税が一般的基準であり、○○氏にもこの基準をご了解頂き、報酬契約を締結しました。

2)着手金請求書送付
 ○○氏は貴社と締結した自動車総合保険契約弁護士費用特約に基づき、弁護士費用を貴社に請求するとのことです。当職の報酬請求権はあくまで○○氏に対するものであり、また、貴社に対する弁護士費用請求権はあくまで○○氏に帰属するものです。
 そこで、当職は○○氏の指示に基づき、○○氏が貴社に対して有する弁護士費用保険金請求権の振込先として当職指定口座を連絡するため貴社宛請求書も作成し、着手金請求書として○○氏宛と貴社宛の2通を同封致しますので宜しくお願い申し上げます。」
○また、弁護士費用特約保険金を利用するお客さまとの委任・報酬契約書特約欄に以下の記載をします。
「着手金は、甲と○○海上火災保険株式会社との自動車総合保険契約での弁護士費用特約(支払限度額金300万円)により、同社からの保険金を直接貴職口座に振込送金して支払う。そのため甲は乙に対し同社に保険金振込先として乙口座連絡を指示する。
報酬金は、○○○万円から上乗せした金額の20%+消費税とし、実際回収金からの精算する方法で支払う。
甲は報酬金についても、弁護士費用特約を利用し、乙は甲の保険金請求手続に協力する。」
○このようにしてあくまでお客さまが弁護士費用特約保険金の請求者であり、弁護士には保険会社には直接請求権はなく、お客さまの指示に基づいて保険金送金口座を連絡するのみとの姿勢を徹底します。この姿勢に徹すれば、「示談交渉で約400万円を相手から回収した上で、依頼者に詳しい説明をしないまま約200万円の報酬を損保会社に請求」なんてことは出来ません。

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