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死亡交通事故事件被害者遺族年金の支給停止期間について

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平成25年 7月26日(金):初稿
○先日、夫の死亡交通事故での損害賠償請求示談交渉事件が解決し、示談契約書締結のための打ち合わせをしていたとき、お客さまで被害者である奥様から、社会保険庁から来た書面を示され、その書面の書き方を質問されました。奥様は交通事故で旦那様が死亡した直後に遺族年金申請をして既に遺族年金を受給していました。交通事故による死亡であるため社会保険庁から、交通事故での損害賠償請求事件が解決した場合その示談等の内容を報告するように求められた書面でした。

○その書面には損害賠償金を取得した場合は、遺族年金支給が死亡事故発生時の翌月から最長2年間支給が停止される旨が記載されています。死亡事故発生時の翌月から2年間との記載について、あと3ヶ月で死亡事故発生時の翌月から2年間が経過するので、3ヶ月後に報告すれば2年経過後になるので遺族年金支給が停止されることはないのではありませんかと質問されました。

○この停止期間が、死亡事故発生時の翌月から2年間に限定すると、示談交渉が長引き、或いは示談交渉が決裂して訴訟になったような場合は、2年はあっと言う間に過ぎて停止期間が経過して、遺族年金支給停止を受けずに済むことになります。ですから遺族年金支給が停止される2年間は、示談或いは訴訟事件が解決して、実際損害賠償金を取得してから2年間と思われますと回答しました。

○遺族年金の支給が停止される理由については、「第三者行為事故に係る年金の支給停止の制度について - 会計検査院」によると、「同一の事由について年金の支給と第三者からの損害賠償が重複することを避けるため、厚生年金保険法又は国民年金法の規定に基づき、年金を受給する被保険者等が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度で年金の支給を停止するもの」と説明されています。
年金支給停止期間の算出過程は次の通りです。


○「第三者行為事故に係る年金の支給停止の制度について - 会計検査院」によると「年金と第三者からの損害賠償金との調整が行われるのは、損害賠償金のうち年金と同じ性格を持っている部分、すなわち被保険者等の生活を保障する部分を調整の対象としていることによる。具体的には、上記のように、被保険者等が第三者から受けた損害賠償金のうち調整対象損害賠償金を算出し、この金額が被保険者等の世帯の基準生活費の何月分に相当するかを算出して、この月数分(24月を限度)の年金を支給停止することとしている。」とも説明しています。

○調整の対象は「損害賠償金のうち年金と同じ性格を持っている部分、すなわち被保険者等の生活を保障する部分」としていますので、交通事故損害賠償請求権の内訳で言えば、逸失利益に相当する部分と思われます。例えば年収600万円の人が40歳時に交通事故で死亡した場合、逸失利益は
年収600万円×(1-生活費控除率0.3)×稼働期間ライプニッツ係数14.643=約6150万円
と多額になります。
仮に年金が遺族年金が20万円とすると6150万円は307ヶ月分になります。これが24ヶ月だけの停止で済むのですから、停止期間24ヶ月限定は、遺族年金も貰える交通事故被害者遺族にとって大変有り難い制度です。

○遺族年金支給停止期間を2年に限定する理由は、「第三者行為事故に係る年金の支給停止の制度について - 会計検査院」によると、自賠責での死亡保険金限度額3000万円を基準にその中の逸失利益部分を考慮しているからのようです。この会計検査院の報告書は、平成24年10月26日付け厚生労働大臣宛て意見のようですが、最後に「貴省は、近年の対人賠償任意保険の加入率の増加、人身事故に対する民事の損害賠償額の高額化という社会経済情勢等の変化を踏まえて、厚生年金保険及び国民年金の公的年金制度を適切に運営していく必要がある。ついては、貴省において、支給停止の制度の趣旨を踏まえて、年金給付により被保険者等の生活を保障していくという公的年金制度の目的等も勘案して、支給停止解除後の二重補償額が多額に上ることを避けるための方策を検討するよう意見を表示する。」と締めくくっています。
 要するに遺族年金支給停止期間を2年に限定するのは不合理であり、もっと延ばせと言っています。遺族年金を受給する交通事故被害者遺族にとっては有り難くない意見です。

遺族年金受給停止根拠条文は以下の通りです。
国民年金法第22条(損害賠償請求権)
 政府は、障害若しくは死亡又はこれらの直接の原因となつた事故が第三者の行為によつて生じた場合において、給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
2 前項の場合において、受給権者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で、給付を行う責を免かれる。

厚生年金法第40条(損害賠償請求権)
 政府は、事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
2 前項の場合において、受給権者が、当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。
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