平成24年 4月24日(火):初稿 |
○「格落ち損請求は登録5年以内が要件ではありません」を続けます。 格落ち損(評価損)に関して私の知る範囲では、最も詳しい文献である保険毎日新聞社発行事故調査会海道野守著「裁判例、学説にみる交通事故物的損害評価損第2集-3」の紹介を続けます。同書は評価損に関する判例を詳細に分析して、その結果が報告されており、評価損に関する請求事件では必須文献です。ただ、平成14年6月10日新版発行で取り上げられた判例は平成12年当たりまでで10年以上前のばかりですので、最新の判例まで取り入れた改訂版の発行が待たれるところです。 ○同書での昭和60年から平成12年までの評価損についての裁判例の傾向まとめは、以下の通りです。 まず評価損認否です。 1.評価損を認める裁判例が、全評価損裁判例の67.6%-裁判例の大勢は認める傾向にある。 2.評価損を認める要素の一つに初年度登録から事故日までの経過期間については 3年以内が高率だが、5年以内、10年以内、11年以上の自動車にも半分は認めている。 ※ここでも評価損を認める要件は新車登録5年以内になっていないことが明確です。 3.損傷の大きい自動車には、評価損が認められ易いかと考えられるが、裁判例の統計結果では、そうした傾向はなく、小さな損傷でも認められていることから損傷程度と評価損認否には関連性が少ない。 ※前のページでは「損傷程度が大きい程認められ易いと大まかには言える。」と記載されており、ちと矛盾があります。 これは、評価損の訴えを提起した代理人弁護士の熱心さと力量が大きく関わると思われます。小さい損傷でもその評価損について詳細に主張すれば認められるのでしょう。 4.評価損の「現実化」は裁判例では,ほとんど問題にされていない。これは被害車両を修理後乗り続けていることから「修理後使用中」の自動車に対して、63%の高率で評価損を認容していることから言える。 次に評価損具体的金額の算出方法です。 評価損発生を認容した場合の、評価損の具体的金額算出方法についての裁判例傾向は次の通りです。 1.裁判所が採用する評価損算出方法には、差額基準、修理費基準、時価基準、総合勘案基準の四つがある。 2.差額基準-事故直前の車両売却価格と修理後の車両売却価格の差額 3.修理費基準-裁判所が認容した修理費の一定割合を評価損とする方法 4.時価基準-裁判所が認定した事故当時被害車両時価の一定割合を評価損とする方法 妥当な時価算出が困難で採用裁判例は少ないが、初年度登録後数ヶ月など極端に新しい車両に時々見られる 5.総合勘案基準-被害車両が有する諸々の事情(車種、初年度登録からの経過年数、修理費金額等)を「総合勘案して」金額決定する方法。基準が不明確で裁判以外の示談レベルの解決策にはならない。 6.この4つの算出方法で件数的に最も多いのは、修理費基準で、修理費の30%程度とするのが最も多い傾向を示している。 以上:1,204文字
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