平成23年 2月23日(水):初稿 |
○「”赤い本”講演録は交通事故損害賠償情報の宝の山」で、「この赤本掲載の過去の講演録は交通事故重要論点を殆ど網羅し且つその時々の時宜に適った論点を最高レベルの実務家が研究・解説しているもので交通事故損害賠償情報の宝の山と言えるものです。」と記載していましたが、平成23年2月20日、この”赤い本”の2011(平成23年)版が届きました。2005(平成17年)版から上巻(基準編)と下巻(講演録編)の2分冊になっていますが、今回も下巻(講演録編)には貴重なデータが満載されており、徐々に勉強して行こうと思っております。 ○下巻のトップページは、東京地裁民事第27部(交通部)部統括裁判官中西茂氏の講演「最近の東京地裁民事交通訴訟の実情」で、以下、その備忘録です。 ・東京地裁での交通事故訴訟事件数増加傾向変わらず 東京地裁での交通事故訴訟事件新受件数は平成20年1370件、平成21年1477件、平成22年9月末現在1083件で増加傾向変わらず、昭和40年代半ばと同様の水準とのことです。 なお、平成18年3月に記載した「最近における東京地裁民事交通訴訟の実情-新受件数」では、「民事交通事故訴訟新受件数は、昭和45年に2185件でピークを示し、その後減少傾向に転じ、昭和50年に1000件を切り、その後長らく数百件代を推移し、昭和61年から増加傾向に転じ、平成12年に1000件の大台を回復して増加を続け平成15年1394件となり、平成16年は簡裁事物管轄上昇によって地裁事件が減り、1329件とやや減少しましたが、平成17年は16年を若干上回る件数と説明されています。」と記載しています。 ・事件内容 低髄液圧症候群あるいは脳脊髄液減少症と呼ばれる傷病の事件が目立つほか、高次脳機能障害や脊髄損傷によって1級や2級の重篤な後遺障害を残存し、請求額が非常に高額になっている事件が増加しつつあり、重篤な後遺障害事案では大半の事件で将来介護費が争点となり、判断は難しく真理に苦労しているとのことです。 ・最近目立つのは求償金請求事件と一審簡易裁判所からの控訴事件 求償金請求事件は、人傷保険、車両保険等保険金支払による任意保険会社から加害者本人に対する保険代位請求で平成21年は全体の18%を占め、人傷保険登場後、増加が顕著でこの請求には難しい新論点が多くて大変だとのことです。 一審簡易裁判所事件は軽微な物損事案が多く、弁護士費用特約登場で増加したと思われますが、請求額が軽微でも主張対立が厳しく和解できず審理に大変苦労しているとのことです。これまでは弁護士費用を考慮して泣き寝入りしていた事案が、弁護士費用に心配が無くなったため徹底的に争うようになったものと思われます。 ・事件の大半は普通の一般的事件 事件の大半は,地裁を一審とする特に高額請求でもない一般的事件とのことで、これが増加傾向にあるようです。平成23年1月京都弁護士会で開催された全国業革委員長会議の席で京都弁護士会会長が、京都地裁では交通事故訴訟事件が増加中と述べていましたが、交通事故訴訟事件増加が全国的傾向かどうかは不明です。 以上:1,285文字
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