平成18年 3月22日(水):初稿 |
○財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行「損害賠償額算定基準平成18年版」がようやく入手できました。これは通称「赤本」と呼ばれるもので昭和44年初版発行以来毎年改訂版が発行されて来ましたが、平成17年版から上巻(基準編)と下巻(講演録編)の2分冊になっています。 ○講演録編は、交通事故訴訟を担当する東京地方裁判所民事27部裁判官による講演会の記録であり、交通事故実務情報の宝の山となっておりますが、正直のところ、私自身これまで殆ど読んでいませんでした。しかし交通事故訴訟実務最先端を行く裁判官による貴重な情報提供であり、これからは過去の版も含めてキチンと目を通し、私自身の備忘録としてその要点をwebデータベースに加えていこうと思っております。 ○この講演録によると、民事交通事故訴訟新受件数は、昭和45年に2185件でピークを示し、その後減少傾向に転じ、昭和50年に1000件を切り、その後長らく数百件代を推移し、昭和61年から増加傾向に転じ、平成12年に1000件の大台を回復して増加を続け平成15年1394件となり、平成16年は簡裁事物管轄上昇によって地裁事件が減り、1329件とやや減少しましたが、平成17年は16年を若干上回る件数と説明されています。 ○民事交通事故訴訟新受件数が昭和45年の2185件をピークに減少に転じ、昭和50年に1000件を切ってから長らく数百件代を推移したのは明らかに示談代行保険制度の登場によるもので保険会社示談代行員による示談による解決が圧倒的に多くなり交通事故事件から弁護士関与が排除されたことによります。 ○昭和61年から徐々にですが増加傾向に転じて平成12年に1000件の大台突破後も増加が継続していたと言うのは意外でした。しかし交通事故訴訟は被害者から加害者への損害賠償請求だけでなく、損害保険会社から加害者への求償請求、加害者から被害者への債務不存在確認請求があり、近時は保険加入率上昇に伴う求償訴訟が増えているということであり、必ずしも被害者の弁護士依頼だけが増えているとは思えません。 ○更にここでのデータはあくまで東京地裁のデータであり、その他の地方裁判所交通事故事件データは最高裁司法統計でも見つけることが出来ずその詳細は不明です。 ○更に意外だったのは訴訟での解決結果は、平成12年から16年までの5年間平均で判決20%、和解71%、その他(取下、却下、移送等)9%と言うことです。裁判官としては面倒な判決を書くより和解で決めた方が楽でしょうが、その内容、特に遅延損害金、慰謝料基準額等が気になるところです。判決ならば公表されてデータの蓄積が出来ますが、和解だとその内容は他に公表されず不明なままに終わり、今後の解決の参考資料としては残りませんので、何らかの形で公表して頂きたいところです。 以上:1,167文字
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