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平成22年 8月31日(火):初稿 |
○自転車事故についての以下の記事を眼にしました。 自転車事故:「自賠責制度の対象に」被害者団体が提言 毎日新聞 2010年8月30日 2時30分(最終更新 8月30日 10時00分) 自転車と歩行者の事故が急増し自転車側への高額賠償判決が相次ぐ中、交通事故の被害者団体の代表が国土交通省設置の懇談会で、自転車を自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の対象とするよう提言していることが分かった。保険未加入の自転車の事故で被害者が賠償を受けられないケースが生じており、自賠責保険という強制加入制度の導入で救済すべきだとの考えだが、国交省は消極的な姿勢を示している。【北村和巳、馬場直子】 「自賠責保険は被害者救済が目的なのに、自転車は対象外として事故被害者を救おうとしないのは非常におかしい」。6月、国交省が99年から設置する「今後の自動車損害賠償保障制度のあり方に係る懇談会」で、委員を務める「全国交通事故遺族の会」の戸川孝仁副会長(65)が発言した。国が自転車を環境負荷の小さい新たな交通手段として位置づけ、今後も利用が広がることを指摘した上で「(自賠責保険の)制度を変えていく必要がある」と提言した。 (以下省略) ○保険未加入の自転車による加害事故の被害者が、加害者の無資力等で損害賠償を受けられないケースが増えているような記事ですが、自分と相手がかけている自動車総合保険があれば殆どをカバーできます。勿論、自動車総合保険の中に人身傷害賠償保険と日常生活賠償保険がついていればの話しですが、通常、自動車総合保険の中には基本セットとしてこの2つの特約がついているはずです。 ○当事務所で過去に実際取り扱った事例をアレンジしてご説明します。 ・Aさん(40歳、自営業)は、自転車で信号機のない交差点を進行中、右横道路から進行してきたBさん(16歳、高校生)の自転車と側面衝突しました。Bさんの自転車が相当のスピードであったためAさんは勢いよく転倒して左肩を強打して、左肩鎖関節脱臼の傷害を受け、手術のため合計6日間入院し、退院後も6ヶ月間に合計20日間通院して症状固定となり、鎖骨の変形を残したとのことで後遺障害第12級が認定されました。 ・この事故によるAさんの損害概要は以下の通りでした。 ①休業損害;少なくとも自営業での1ヶ月売上金100万円 ②逸失利益;金1200万円 ③慰謝料;金300万円(日弁連青本基準) ④合計金1600万円 ○この事故でAさんは、先ず自分がかけているY保険会社の自動車総合保険の人身傷害補償保険金1000万円を受領しました。この1000万円は、その保険会社の12級後遺障害での人身傷害補償保険金算定基準に合致したものでこれが限度でした。 ○そこで合計1600万円の全損害の内人身傷害補償保険金1000万円との差額金600万円について、Bさんに請求することにしましたが、Bさんは高校生で資力がありません。そこでBさんの父Cさんに自動車総合保険をかけていないかどうかを確認するとAさんと同じY保険会社の自動車総合保険に加入しており、更に日常生活賠償保険をつけていることも確認出来ました。 ○そこでAさんは、Y保険に対し、損害賠償残金600万円を請求しました。するとY保険会社は、AさんとBさんの自転車同士衝突事故の過失割合はAさん40%、Bさん60%なので、Aさんが損害賠償として請求出来るのは1600万円の60%相当額960万円なので人身傷害補償保険金1000万円の受領で全て填補されているから支払えないと回答してきました。 ○このY保険の主張に対し、Aさんは、「人身傷害補償担保特約で請求できる保険金額4」に記述した判例を元に訴訟基準差額説を具体的に説明し、人身傷害補償保険金1000万円では、Aさんの過失割合部分640万円部分は代位取得出来ないので、Y保険にはまだCさん加入日常生活賠償保険の保険金支払義務があると主張しました。Y保険会社が支払った1000万円の人身傷害補償保険金は、Aさんの1600万円の全損害の内過失相殺として減額された640万円部分が含まれています。Aさんはそれを除いた960万円部分の内支払のない600万円を請求しているので過失相殺の主張は出来ないのです。 ○Y保険担当者は当初この主張をなかなか理解出来ず、考え方を図示するなどして説明を繰り返し、最終的にはこの訴訟基準差額説での考え方を認めて、裁判前の示談と言うことで金500万円の支払で決着しました。結局、Aさんは、訴訟基準損害額1600万円のところ、自分にも40%も過失があるにも拘わらず、訴えを出すこともなく1500万円を回収できました。 勿論、保険会社担当者を説き伏せたAさんの代理人は小松弁護士です(^^)。 以上:1,939文字
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