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平成22年 8月26日(木):初稿 |
○「後遺障害非該当で逸失利益・慰謝料が認められた例1」で紹介した判例の裁判所の判断を続けます。ちと長いので、別コンテンツで説明します。 ************************************* 3 原告らの症状固定日について 被告らは、原告らの通院状況が、平成18年1月以降、極端に少なくなっていること、その治療内容が平成17年7月頃以降は、筋肉弛緩剤や炎症止めの投薬が一律に繰り返えされていること、受傷が頸椎捻挫であること等から、1年の治療というのは極めて長期であり、本来は、遅くとも受傷から6か月程度が経過した平成17年12月には、症状は固定したというべきであると主張し、これを指摘する(証拠略)を援用する。 確かに、原告らの通院状況は、平成18年1月からは、極端に減っており、その原因の一部が前記のとおり、仕事や生活状況にあるとしても、それ以前から症状が著変なく経過していることからすれば、治療に対し、有意な効果が認められず、期待もできないという厳密な意味での「症状固定」は、より早期に認定されるべきであるかもしれない。 しかしながら、平成18年4月までの治療継続が、医師の判断のもとにされており、この間、真摯な受診がされ、頭痛、頸部痛などの訴えが継続してされていること、保険会社が一般の治療に比較して長期であると認識しつつも、原告らの心情に配慮して、上記期間の治療を認めてきたこと、一概に「頸椎捻挫」を中心とする受傷といっても、千差万別であって、事故態様の軽重や、被害者の体勢等から、受傷の内容に軽重があり、相当な治療期間の長短があってしかるべきところ、本件事故の衝撃により、80㌢㍍しか原告車両が移動しなかったのは、前記のとおり、原告Aが強くブレーキを踏んでいたからであって、それにもかかわらず、上記の移動があったことは、相応の衝撃があったことを推認させるし、(証拠略)の原告車両の損傷も、リアバンパーが全体として外れそうに歪んでいるほか、同バンパー左側には亀裂も認められるというもので、被告ら主張のように衝撃が軽微であったものとは認められない。 また、原告らの症状経過についてみても、例えば、原告Bは、平成18年3月まで神経ブロックを施されており、対症療法であるとはいえ、その段階でも相応の痛みや苦痛を訴えていたことが窺えるのであり、一般的に、治療側としても、患者としても、この段階をもって治癒ないし症状固定と認識することは社会通念上困難であると判断される。 さらに、(証拠略)の意見は、一般的な頸椎捻挫を前提としての器質的損傷がない場合の治療期間を指摘するに過ぎず、直接、患者の診療に当たった医師の意見ではないこと等からすれば、B整形外科の医師の判断のとおり、平成18年4月22日をもって、原告ら各自につき症状固定とすべきものと判断される。 なお、原告Aにつき、頸椎症のMRI画像が認められるが、それまでこれに基づく症状がなかったことや、その程度が軽度であること(証拠略)からすれば、同原告に認められる症状に、その関与の程度は、それがあるとしてもわずかであると判断され、素因による減額をすべきものとは認められない。 4 原告らの損害について (一) 原告A ①治療費・・・・・83万0,655円(争いがない。) ②通院慰謝料・・・60万円 頸椎捻挫の傷病名から赤い本別表Ⅱを用いて、実通院日数の3倍を基準にした慰謝料である。 ③ 逸失利益・・・・114万8,568円 (ア) 基礎収入 530万6,390円 (証拠略)によれば、原告Aの平成17年の収入は上記金額である。 原告は、年齢別平均収入を得る蓋然性があると主張するが、63万円強の差額は無視できず、その蓋然性があるとは認められないから、実収入を基準にすべきである。 (イ)労働能力喪失率 5% (ウ)労働能力喪失期間 5年 原告Aの後遺症は、現在でも頸部痛、頭痛に悩まされているというのであり、これによる労働能力の喪失は5年程度継続するものと認められる。(ライプニッツ係数4.329) ④ 後遺障害慰謝料・・・110万円 後遺障害等級14級のそれである。 ⑤ 損害の填補・・・・83万5,965円 ⑥ 小計・・・・284万8,568円 ⑦ 弁護士費用・・・・28万円 ⑧ 認容額・・・・312万8,568円 (二)原告B ①治療費・・・・・101万2,615円(争いがない。) ②休業損害・・・・35万0,219円 原告B、同武の尋問結果によれば、原告Bは、パートタイマーで看護婦をしながら家事をしていたところ、経済上の理由から、パートはこなしていたが、十分な家事労働に従事することができなかったから、女子労働者全年齢の平均賃金額を基準に、通院日数分の休業損害が認められるべきである。 もっとも、パート勤務をこなし得ていたことや、原告Cの送り迎え等がされていたことから、家事労働の一切ができなかったものとは認められず、その休業対価相当額は、その半額とみるべきものである。 350万2,200円÷365×73÷2 ③ 通院慰謝料・・・・97万円 頸椎捻挫の傷病名から赤い本別表Ⅱを用いて、実通院日数の3倍を基準にした慰謝料である。 ④後遺症慰謝料・・・55万円 原告Bの後遺障害は、自賠法施行令別表第二の等級に非該当と判断されているが、これは、医学的に他覚的説明ができないことを理由とするものであって、前記のように、その後遺症の症状程度はこれを無視することは相当とは解されない。他方、上記認定をも尊重すれば、第14級の2分の1程度の慰謝料額を肯定すべきものである。 ⑤逸失利益・・・・・37万9,025円 (ア)基礎収入 350万2,200円(上記の女子労働者全年齢の平均賃金額) (イ)労働能力喪失率 2.5% (ウ)労働能力喪失期間 5年(ライプニッツ係数4.329) 上記後遺症慰謝料について述べたとおり、その後遺症の症状程度はこれを無視することは相当とは解されないが、上記非該当の認定をも尊重すれば、第14級の2分の1程度の労働能力喪失を肯定すべきものである。 ⑥損害の填補・・・101万2,615円 ⑦小計・・・・224万9,244円 ⑧弁護士費用・・22万円 ⑨認容額・・・・246万9,244円 (三)原告C ①治療費・・・・・74万1,441円(争いがない。) ②通院慰謝料・・・・95万円 頸椎捻挫の傷病名から赤い本別表Ⅱを用いて、実通院日数の3倍を基準にした慰謝料である。 ③後遺症慰謝料・・・・・50万円 同原告の後遺症の内容、程度は、原告Bと比較すれば軽微なものと認められるが、現在でも頭痛やだるさが残存しており、後遺障害等級非該当とされたことを勘案しても、後遺障害として無視することは相当でないほか、高校受験の大事な時期に、頭痛に悩まされ、勉学に集中できなかったことや、通院に時間を割かれたことから、志望校を一段下げての受験を余儀なくされたことが認められる(同原告本人尋問)。この間の精神的苦痛、焦燥感等に対する特別な慰謝料を加味して、上記金額を相当と判断する。 ④損害の填補・・・・・74万1,441円 ⑤小計・・・・・・145万円 ⑥弁護士費用・・・・・14万円 ⑦認容額・・・・・・159万円 第四 結語 よって、原告らの請求は、主文第1項の限度で理由があるからこれを認容するが、その余は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法61条、64条、65条1項を、仮執行宣言につき同法259条1項を適用して、主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日 平成20年10月10日) 横浜地方裁判所第6民事部 裁判官 三代川 俊一郎 以上:3,151文字
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