○交通事故後の各種疼痛・しびれ等に苦しむお客様から線維筋痛症と交通事故との因果関係を一部認めた判例を紹介されました。「先生のことですから既にご存知かと思いますが」と断り書きがありましたが、全く知りませんでした(^^;)。交通事故判例には気をつけているつもりでしたが漏れていました。そもそも線維筋痛症という病気も初耳でした。交通事故後の各種疼痛に悩むお客様は大勢いますが、この線維筋痛症と診断された方がいないからです。
○以下、平成18年12月17日付毎日新聞の抜粋と、判決の一部です。
線維筋痛症「交通事故に起因」地裁が初判断
山口・岩国支部 今年10月に
交通事故後に全身が痛むようになり、「線維筋痛(せんいきんつう)症」と診断された男性(51)が「事故が原因だ」として、加害者らを相手取って治療費など4684万円余の支払いを求めた訴訟で、山口地裁岩国支部(寺元義人裁判官)が今年10月、「一応の因果関係が認められる」と528万円余の支払いを命じたことが分かった。患者団体などによると、事故との因果関係を認めた判決が明らかになったのは初めて。判決は1審で確定した。
交通事故と発症を巡っては、脳脊髄(せきずい)液減少症(髄液漏れ)でも、しばしば争点となり、因果関係を認める地裁判決はこれまでに少なくとも2回出ている。
線維筋痛症の発症の仕組みは未解明で、さまざまな説があり、裁判所の判断が注目された。判決は事故後の経緯を踏まえ、「特に頚椎(けいつい)外傷を受けた患者で発症率が高いことに照らせば、事故による頚椎捻挫(ねんざ)等と無関係に生じたとは考えがたい」と述べた。
しかし、男性にも発症や症状が悪化した原因の一部があったとし、線維筋痛症に関する損害のうち25%に限って「事故に起因する」とした。
男性は00年7月、車を運転中に追突された。翌日から首や腰などの痛みが出て通院を続けた。事故5年後の昨年7月、初めて線維筋痛症と診断された。
裁判で加害者側は「事故で線維筋痛症になる仕組みが明らかでない。原因としてウイルス感染や化学物質過敏など多くの説がある。因果関係が立証されていない」と主張していた。
男性の弁護士は「裁判官は、事故と発症との関係が医学的に完全には証明できなくても、被害者保護の観点から判決を導き出してくれた」と評価している。
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(4)小括
ア 以上に述べたところを総合すれば,原告は,本件事故により身体に大きな物理的衝撃を受けて頸椎捻挫などによる頸部痛等を発症し,その後投薬や頸部の固定などの治療を受けていたところ,本件事故から20日くらい経ったころ,首や肩などの痛みが増し,その後,頸椎捻挫等の治療として牽引等の施術を継続して受けていたにもかかわらず,長期間にわたって痛みが引かないまま症状が推移し,最終的に線維筋痛症と診断されるに至っている。
そして,前述したとおり,外傷が線維筋痛症の発症の契機として挙げられており,特に頸椎外傷を受けた患者で線維筋痛症の発症率が高いことに照らせば,原告の線維筋痛症が本件事故による頸椎捻挫等と無関係に生じたものとは考えがたく,両者の間に一応の因果関係の存在が認められると言うべきである。
イ もっとも,線維筋痛症の原因は医学的に明らかになっていないが,これまでに得られた医学的知見では,線維筋痛症の発症に影響する因子として,精神的・社会的ストレスなどの要素が有意なものとして指摘されていることや,線維筋痛症の診断条件を満たすものの中には,心因性疼痛として分類されてきたものも含まれることなどが認められるのであって,線維筋痛症の発症において,心因的な要素も大きな影響を及ぼしている可能性も高い。
ウ そして,原告は,本件事故後15日目に撮影されたMRIで,頸椎のうち3個が飛び出して後頸部で神経の表面に軽く接触していることや,このことについて加齢性変化による影響が疑われることを指摘されているのであって,本件事故以前から原告には,頸椎外傷又はこれと類似の現象を引き起こしやすい身体的素因があったと考える余地も大きい。
エ このように,原告の線維筋痛症の原因については,線維筋痛症の発症の機序そのものが医学的に明らかになっていないため,現時点において科学的に特定することは不可能であるが,これまでに得られている知見や,本件事故により原告が頸椎等に受けた物理的衝撃の大きさを考慮すれば,本件事故による物理的衝撃がまず第一に挙げられるべきものであると言える。しかしながら,これらと並んで,頸椎の加齢性変性や心因的要素も,線維筋痛症の発症や増悪をもたらす有力な要素となった可能性も高いと言わざるを得ない。
オ そこで,これらを総合すれば,原告が線維筋痛症を発症するについて,本件事故の与因の程度は全体の25パーセントと見るのが妥当であると考える。
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