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平成21年 9月15日(火):初稿 |
○「関節可動域の測定は極めて難しい-リハビリ専門医ご意見等」を続けます。 私は、従前より関節可動域測定について大変難しいと感じていたところ、労災保険後遺障害診断書作成手引きVol.1を発見し、これは図解も大きくて判りやすく、交通事故損害賠償実務においては正に必須の文献と紹介しておりました。しかし、一時、判りやすいと感じた労災保険後遺障害診断書作成手引きVol.1にも良く判らない点があり、更に前述のリハビリ専門医ご意見をお伺いしてある仙台市内のあるリハビリ専門医をお訪ねして数点の疑問点について教えを乞いました。 ○その疑問点の一つは、右図の胸腰部関節可動域の屈曲・伸展です。屈曲(前屈)の参考可動域が45度と記載されており、この45度に疑問を感じました。普通の人はもっと大きいはずと思ったのです。実際、お客様の1人で交通事故で腰部打撲傷害の後遺障害で、従前に比較してこの屈曲が半分以下になったという方の胸腰部関節可動域が、参考可動域を遙かに超える85度と計測されてきたことがありました。そこで私は、この参考可動域45度は誤りではないかと疑問を持ったのです。 ○ところがお訪ねして質問をしたリハビリ専門医Aさんは、私がやってみせた屈曲(前屈)動作を間違いと指摘されました。労災保険後遺障害診断書作成手引きVol.1の82頁の胸腰部屈曲(前屈)の測定肢位及び注意点に「体幹側面より行う。立位、腰掛け座位または側臥位で行う。股関節の運動が入らないように。」と記載されていますが、私がやって見せた動作は、股関節から曲げており、正しい胸腰部屈曲(前屈)ではないと指摘されたのです。私は驚いて、それではどのように動作すればよいのでしょうかとご質問したのですが、結局、その正しい動作について、言葉ではご説明頂いたのですが、実際、身体ではどのような動きになるのか、明確には理解出来ませんでした。 ○その後、ある方から、関節可動域測定方法の解説は、「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」よりは、日本リハビリテーション医学会が策定した「関節可動域表示ならびに測定法」の方が詳しいと教えられ、確認してみると、確かにそうでした。労災保険後遺障害診断書作成手引きVol.1の説明は、「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」の説明を殆どそのまま掲載しており、「関節可動域表示ならびに測定法」ほど詳しくはありませんでした。 ○「関節可動域表示ならびに測定法」での体位説明図は右図の通りですが、角度計のあて方として、基本軸、移動軸の他に軸心が記載されています。労災保険後遺障害診断書作成手引きVol.1には軸心までの記載はありません。また胸腰部体幹計測注意点として、「測定は体幹側面で行う。体位は、腰掛け座位、立位または側臥位」までは同じですが、その後に「軸心は第5腰椎棘突起が判断としない場合はジャコビー線の中央にたてた垂線との交差点を用いてもよい」と更に詳しくなっています。ただ、「股関節の運動が入らないように。」との説明はありません。 ○残念ながら、「関節可動域表示ならびに測定法」の説明を見ても、胸腰部屈曲(前屈)の正しい動作については良く理解出来ませんが、いずれにしても関節可動域測定は、難しいと言う事をシッカリ認識する必要があります。 以上:1,360文字
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