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保険会社への直接請求裁判の判決例紹介1の4

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平成20年 7月10日(木):初稿
(判決続き)
(3)原告丙野及び原告丁野の固有の慰謝料 各150万円
 原告丙野及び原告丁野の慰謝料として各90万円の限度では当事者間に争いがない。弁論の全趣旨によれば以下の事実を認めることができ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
 原告丙野は,訴外有子の長女で,昭和49年4月に婚姻後,仙台で2年間生活してから○○県に転居しているが,毎年里帰りをして訴外有子と顔を合わせ,訴外有子も数年に1回程度は原告丙野宅を訪問していた。また,原告丁野は,訴外有子の二女であり,昭和60年6月に婚姻後も仙台で生活し,訴外有子とは頻繁に連絡をとっていた。そのため,原告丙野及び原告丁野は,訴外有子の子として,本件事故によって訴外有子が突然死亡したことにより,大きな精神的苦痛を被ったということができる。
 原告丙野及び原告丁野の精神的苦痛に対する慰謝料としては,各150万円をもって相当と認める。

(4)過失相殺
 上記2(1)認定の事実及び甲8の1ないし10及び弁論の全趣旨によって,認めることのできる事実並びにこれに基づく判断は,以下のとおりであり,この認定事実を覆すに足りる証拠はない。
 本件道路は,片側3車線の国道286号線で,交通量も頻繁であり,本件交差点付近には歩行者用の地下通路もあるなど,歩行者は通常の道路におけるよりも重い左右の安全確認義務を負っているということができる。
 訴外有子は,左方から車両が接近してきているのに,自分の進行方向だけを見て道路を横断しようとしたために本件事故が発生したのであるから,訴外有子にも不注意があったということができる。他方,訴外己野は,ダッシュボードから助手席側に落ちたノートを拾おうとして助手席側に上半身を屈めたため,数秒間前方を注視せずに走行するという運転者の基本的注意義務である前方注視義務を怠って本件事故を惹起している。
 これらの要素を考慮すると,本件事故発生についての過失割合は,訴外有子の過失割合が10パーセント,訴外己野の過失割合が90パーセントとするのを相当と認める。

(5)原告らに発生した損害
ア 原告甲野に発生した損害 2664万8947円
 請求原因(6)(原告甲野の相続)の事実については,弁論の全趣旨よりこれを認めることができ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
 したがって,訴外有子の損害については,すべて原告甲野が相続したものと認めることができる。
(ア)訴外有子の逸失利益 414万8947円
 訴外有子の慰謝料 1800万円
(イ)原告甲野の葬儀費用 150万円
 原告甲野の慰謝料 300万円
(ウ)上記合計額 2664万8947円

イ 原告丙野及び原告丁野の慰謝料 各150万円

ウ 上記ア,イの総損害額は,2964万8947円となるが,訴外有子の過失割合である1割を控除すると,2668万4052円となる。

エ 平成18年10月31日に上記損害に対して,被告乙共済連が本件事故に対する自賠責保険金として支払った金額が1727万0850円であることは争いがない。
 被告らは,本件事故による填補すべき損害について,被害者に対する損害賠償を遅滞した場合の遅延損害金は自賠責共済金の支払いに含まれず,民法491条の適用はない旨主張する。

 しかし,損害賠償義務は,本件事故の日に発生し,かつ,何らの催告を要することなく,遅滞に陥ったものであり,本件自賠責保険金によって填補される損害についても本件事故時から本件自賠責保険金の支払日までの間の遅延損害金が既に発生していたのであるから,本件自賠責保険金が支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは,遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきであることは明らかである。被告らの主張には理由がない。

 したがって,本件自賠責保険金の支払いは,まず原告らの損害金に対する遅延損害金部分に充当され,その後,原告甲野の損害金の元本に充当されたものと認められる。

 原告らは,自賠責保険金1727万0850円のうち,原告丙野及び原告丁野の損害額の自賠責保険金支払日までの遅延損害金に充当すると主張するので,過失相殺後の金額である135万円を損害額とし,平成18年2月25日から同年10月31日まで(249日)の遅延損害金各4万6048円をこの遅延損害金に充当する。同年11月1日から口頭弁論終結日である平成19年7月17日まで(259日)の遅延損害金は,各4万7897円となる。

 原告らは,自賠責保険金1727万0850円のうち,原告丙野及び原告丁野の遅延損害金に充当した残額を原告甲野の損害賠償請求金のうち,平成18年2月25日から同年10月31日までの分の遅延損害金に充当すると主張するので,過失相殺後の金額である2398万4052円を損害額とし,平成18年2月25日から同年10月31日まで(249日)の遅延損害金81万8086円をこの遅延損害金に充当する。そうすると,同日の原告甲野の残損害賠償金額は,762万3384円となる。この金額に対する同年11月1日から口頭弁論終結日である平成19年7月17日まで(259日)の遅延損害金は,27万0473円となる。

オ弁護士費用 100万円
 弁論の全趣旨によれば,本件においては,原告甲野が弁護士である原告ら訴訟代理人に本訴の提起と追行を委任し,その報酬を支払うことを約したことが認められる。本件事案の難易等諸般の事情を考慮すると,本件事故と相当因果関係にある弁護士費用相当額は100万円をもって相当と認める。

力 まとめ
 そうすると,原告丙野及び原告丁野の損害額は,それぞれ,慰謝料135万円,自賠責保険金1727万0850円の支払期日の翌日である平成18年11月1日からロ頭弁論終結日である平成19年7月17日までの確定遅延損害金4万7897円の合計139万7897円,原告甲野の損害額は,762万3384円と平成18年11月1日から口頭弁論終結日である平成19年7月17日までの確定遅延損害金27万0473円の合計789万3857円に弁護士費用100万円を加えた889万3857円となる。

6 被告らの負担割合
 原告甲野が主張する被告乙共済連及び被告戊に対する支払請求について,争いのない請求原因(3)(カ)①の事実からすれば,まず,被告乙共済連の自動車損害賠償保障契約上の責任により負担すべき額が支払われ,それによっても原告甲野の損害が填補されない場合に,これを控除した額について,さらに被告戊から支払われるべきことになる。

 被告乙共済連が本件事故につき既に支払った額及び原告らに認められる被告乙共済連に対する損害の総額は,3000万円を下回ることから、原告らの被告乙共済連に対する請求はすべて認められるところ,原告甲野は,被告乙共済連に対する残額金889万3857円及び内金762万3384円に対する平成19年7月18日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払請求権のうち,被告乙共済連に対しては859万3260円のみを請求しているため,被告戊は,その残額である30万0597円及び金762万3384円に対する平成19年7月18日から支払い済みまで年5分の割合による金員の支払義務を負うということができる。

7 結論
 以上より,原告らの被告らに対する本訴請求は,主文の限度で理由があるが,その余の部分は理由がない。
 訴訟費用の負担につき民訴法61条を,仮執行の宣言につき同法2 5 9条1項,同免脱宣言について同条3項をそれぞれ適用して,
主文のとおり判決する。

仙台地方裁判所第3民事部

裁判官 小野洋一
平成19年8月 8 日
仙台地方裁判所第3民事部
裁判所書記官 佐藤美奈子
以上:3,168文字

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