平成20年 1月16日(水):初稿 |
○交通事故による傷害治療のため被害者が入院した病院が完全看護体制であってもその傷害が重い場合、被害者を気遣い親子夫婦等近親者が付添看護に当たることが良くあります。入院付添費が損害と認められる場合、入院付添1日に付き、原則として青本基準で5500円~7000円、赤本基準で6500円とされています。 ○入院付添が損害と認められるには原則として担当医の付添必要証明書が必要とされていますが、完全看護体制では医師はこの証明書を作成してくれません。付添が必要ないものが完全看護という建前だからです。しかしいくら完全看護とは言っても生命に関わる様な大きな傷害を受けて入院して苦しんでいる場合、見かねて近親者が被害者の付添をするのが普通です。 ○完全看護体制で医師の指示がなくても受傷部位、程度、被害者の年齢等によっては付添看護費用を認める判例が多数あり、その典型例で青本・赤本には掲載されていない判例を以下に紹介します。 ・神戸地裁平成13年2月21日判決(自動車保険ジャーナル・第1409号) 82歳女子が大腿骨頸部外側骨折・左骨盤骨折等の外傷で2箇所の病院に264日入院し近親者がほぼ毎日付添った事案で、完全看護の病院ではあるも、看護婦の手が足りないときは、食事の世話やリハビリの補助、下の世話や入浴の介助等を家族で介助を補っていた事から、日額5500円の割合で、当初180日間は100%、その後84日間は50%につき近親者付添い看護費を認めた。 ・東京高等裁判所平成14年8月8日判決(自動車保険ジャーナル・第1473号) 57歳女子が遷延性意識障害で1級3号の後遺障害を残す事案で、完全看護病院に入院するも5年間は近親者、以降の余命期間は近親者と職業介護人の併用を要するものと将来介護費を認めた。 ・横浜地方裁判所昭和63年4月6日判決(自動車保険ジャーナル・判例レポート第79号-No,9) 完全看護の病院に入院中、午後3時から7時の面会時間の間25日間近親者が付添った事案につき、年齢(13歳中学生)、受傷部位(左下腿骨骨折等)から、1日2800円の近親者付添看護費用を認れた。 ・大阪地裁 平成11年1月25日判決(自動車保険ジャーナル1317号) 付添看護費は、入院病院では完全看護で親族に看護を求めなかったが、重い傷害で「親族の看護をまったく必要としなかったとまではいえない」と1日2500円の近親者付添看護費が認められた。 ・大阪地裁 平成7年12月11日判決(交民集28巻6号1728頁) 完全看護体制で、入院期間中の一時期について医師の付添必要診断書があるも、他の時期はなく且つ原告のおむつ交換、シャワー、洗面の介助等、当時原告が必要とした介助の殆んどを病院側でなしていた事実を認めるも、原告の症状、年齢等に照らし、入院中の全期間(394日)を通じて日額2000円の付添看護費を認めた。 ・高松高裁平成12年1月28日判決(自動車保険ジャーナル・第1344号) 27歳理髪店勤務男子が、1級3号を残し完全看護の病院に入院している事案で近親者介護料が必要性や程度が今後変化する可能性があるものと、日額4500円の割合で認めた1審判決を2審も支持し日額6000円で請求どおり認めた。 ・京都地裁平成5年10月27日判決(自動車保険ジャーナル・判例レポート第116号-No,16) 頭蓋骨骨折、脳挫傷等で1級3号の後遺障害を残した者の入院付添費につき、完全看護の病院であるが、近親者分が日額4,500円で認められた。 ○被告側で争った場合に、完全看護体制で入院付添費が認められる要件としては、被害程度が重症であること、被害者の年齢が高齢或いは低年齢であること、近親者による実際の看護の必要性と看護状況、病院が実際に提供する看護程度等についてきめ細かな主張・立証が必要です。 ○交通事故で入院された場合、将来の損害賠償に備えて看護師が作る看護記録の外に付添した方の被害者症状記録を残しておいた方がよいでしょう。と言うのは看護記録は、入院患者の数が多いと、意外にきめ細かくは記録されていない例が多いからです。保険会社側はそのラフな看護記録を元に症状は大したことが無く付添は不要と主張してきます。 以上:1,729文字
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