平成18年 6月20日(火):初稿 |
○昭和49年3月に示談代行付自動車保険が発売になり、以来、任意保険には示談代行制度がつきもので、交通事故の被害者側の加害者側との損害賠償交渉は加害者側に任意保険があれば、保険会社の示談代行員と行うのが常態、当たり前の時代になりました。 ○一般に、交通事故損害賠償交渉は、被害者は加害者本人ではなくその任意保険会社の示談代行員と行うことが、当たり前、当然と思われていますが、実はそうではありません。元々示談代行制度は、弁護士法72条違反のおそれが強く、この制度創設を損保協会が発表したとき日弁連は強く反対しました。 ○そのため損保協会は、被害者が保険会社に直接請求することが出来るとの保険約款を作り、被害者から直接請求があると保険会社自身が損害賠償債務を負うとの仕組みとしました。これによって、保険会社の社員が行う示談交渉は保険会社自身の債務についての交渉となり、弁護士法72条に定める「他人の法律事務」ではなくなり、同条に違反しないと日弁連も認めざるをえなくなったものです。 ○交通事故被害者が保険会社に直接請求することが出来る保険約款はあくまで保険をかけた加害者(被保険者)と保険会社の間の保険契約に基づく約款であり、被害者自身を拘束することは出来ません。従って被害者は直接保険会社に交通事故による損害賠償を請求する義務はなく、被害者本人は保険会社は相手にせずあくまで加害者本人に請求すると主張することが出来ます。 ○被害者は加害者が任意保険に入っていてもその示談代行員と損害賠償交渉をする義務はなく、示談代行員が登場しても、「貴方(示談代行員)とは交渉しません」とハッキリ拒否することが出来ます。この場合、加害者が例えば弁護士等を代理人として交渉する或いは法的手続で交渉すると明言しない限り、加害者と直接交渉が出来ます。 ○保険会社と加害者側(被保険者)との保険契約約款にも「『損害賠償請求権者(被害者)が、当会社と直接、折衝することに同意しない場合』には『当会社の費用により、被保険者の同意を得て、被保険者のために、折衝、示談または調停もしくは訴訟の手続(弁護士費用を含みます。)を行います。』との規定は適用しません」と明示されています。 ○ですから保険会社は被害者側に示談代行員を遣わして示談代行を始めようとする場合は、先ず、被害者側に保険会社と直接交渉する意思があるかどうかを確認しなければなりません。しかし現実の実務では、示談代行員は被害者に対し、当然交渉する権利がある如くに振る舞い、被害者側の意思を確認することは先ずありません。私はこのような示談代行制度運用常態は被害者保護の観点から由々しき問題と思っております。 以上:1,102文字
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