平成18年 2月 9日(木):初稿 |
○交通事故で傷害を受け、それが元で例えば手足の自由が失われて後遺障害が残り、8級が認定された場合、労働能力が45%失われたことになります。40歳の人が8級認定されるとその後の稼働期間(就労可能年数)27年間の、その人に働きで得る収入の内45%が損害賠償請求でき、この損害を逸失利益と言います。 ○逸失利益とは後遺障害による労働能力の低下や、死亡の場合に労働能力の低下や死亡しなかった場合に将来得るはずだった収入のことを言い、将来の分を先取りするので年5%の割合で中間利息を控除し、計算式は裁判実務では殆どライプニッツ方式が採用されています。 ○40歳の方の労働能力喪失期間27年のライプニッツ方式での係数は14.634ですから、その方の逸失利益は、 平均収入×14.634×0.45 として計算します。例えば賃金センサス平成16年年全年齢学歴計男性労働者平均賃金542万7000円をその方の収入とした場合は、 542万7000円×14.634×0.45 で逸失利益額は3573万8423円となり、結構な金額になります。 ○交通事故による損害賠償請求事件で問題になるのはその方の平均収入です。その額如何で逸失利益額が1000万円単位で動くことがあるからです。上記例で大卒男性平均収入657万4800円の場合は、 657万4800円×14.634×0.45 で、4329万7030円となり、全体で755万円もアップします。 ○そこで問題になるのは、申告所得は年収200万円しかないのに実際収入が1000万円あると言うような場合です。上記例では200万円だと200万円×14.634×0.45=約1317万円となるところ、1000万円の場合その5倍ですから、約6585万円で5200万円以上の差が出ます。 ○被害者で請求する側は当然実際収入1000万円で計算した6585万円の請求をしますが、支払う側の保険会社はあくまで申告所得額の200万円で計算した1317万円しか認められないと主張します。 ○収入額の認定について日弁連青本では「収入額の認定においては所得税申告額が有力な資料となるが、必ずしもそれに限らず、実際の収入が証明されればよい。実際の収入が証明できない場合でも、相当の収入があったものと認められるときは賃金センサスの平均賃金を基礎に算定する例が多い。」と解説しています。 ○裁判手続とは、大袈裟な言い方ですが、自己の権利を私的には実現できないので国家権力を利用して実現することであり、国家によるサービスを受けることです。収入に応じた納税は国民の義務であり、この国民の義務の面では200万円分しか果たしていないのに、権利実現サービスを受けるときのみ1000万円と主張するのは余りに虫が良すぎるとの考えもあります。 ○しかし納税に関しては全国民公平に義務を果たす制度になっているかというと、これも疑問です。そこで私自身としては実際収入通りの申告をしていない場合は、申告額が小さくてもせめて賃金センサスの平均賃金を平均収入は認めるべきと考えております。 以上:1,254文字
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