旧TOP : ホーム > 事務所 > 大山滋郎弁護士ニュースレター3 > |
令和 4年 9月16日(金):初稿 |
○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和4年9月16日発行第325号「弁護士の3は沢山」をお届けします。 ○大山先生の言う自分が測定可能な「接客対応」の違いをもとに不満を募らせるとは、お客様の弁護士に対する一番の不満として自分の話をシッカリ聞いてくれないと言うことがあります。その事件についての弁護士の視点とお客様の視点が異なるため、弁護士にとってはどうでも良い話しがお客様にとっては大変重要な話しになることがよくあります。弁護士は、法的視点からだけでなく、お客様の思いをシッカリ受け止める必要がありますが、その見極めが難しいところです。 ○弁護士業務について不満の2番目は、仕事が遅くて仕事が見えないということもあります。具体的には、反応・対応が遅い・報告がない等です。最近はメールでの質問等が増えており、メールで質問が来たら、原則として直ぐに返事を出すことにしています。判例等調査が必要な場合、直ぐには回答できない旨を直ぐ返事をして、大山先生言われる接客対応レベル3を目指します。 ******************************************* 横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作 弁護士の3は沢山 未開の人たちは、3以上の数は全て同じように、「沢山」としか認識できないそうです。思わず、「本当ですか?」と言いたくなります。いくら「未開人」でも、もう少しは数えられそうと思う一方、「三以上はみんな同じ」というのも、あながち間違いではない気もしたのです。なぜなら、「数」の話とは別に、「一定レベルを超えると、みんな同じようにしか見えない」ということは、確かにありそうだからです。 トルストイ大先生の「アンナ・カレーニナ」の冒頭は、メチャクチャ有名ですね。「幸福な家庭はどれも似た様なものだが、不幸な家庭はそれぞれ違っている」みたいな言葉です。昔これを読んだときは素直に感心しました。「幸福」は同じようなものだが、「不幸」はそれぞれ個性的なのかと、変に納得したのです。しかし、今になって思うに、これは「幸福レベルが3を超えると、全部同じに見えているだけではないのか?」と感じてきたわけです。 たとえば、私の場合ヘボ将棋を指していまして、アマチュア初段くらいの実力はあります。そうしますと、「自分より下手な人たちが、どの位ヘボか?」については、かなり良く分かるのです。それぞれのレベルに応じて、それぞれ個性のある変な手を指してきます。一方、自分より強い人になりますと、そうはいきません。せいぜいアマチュア2段なら、自分より少し強いなということは分かります。しかし、アマ3段以上になると、本当のところ、どれだけ強いのか、よく分からないのです。私がアマ県代表と将棋を指した場合と、藤井聡太先生と指した場合を比較すると、同じようにボコボコにされるので、違いなど分から無いのです。(まあ、私もプライドがあるので、違いが分かるような振りをしますけど。。。) つまり、人は自分のレベルより「下」については、違い(個性)も理解できるが、「上」については、2レベル以上の違いは区別もできず、全て同じように思えるということです。考えてみますと、トルストイは大作家ではありますが、家庭人としてはたいしたことありません。奥さんと喧嘩して、家出したときに亡くなっているような人です。かなり甘く見ても、「家庭の幸福アマ初段」程度の人に思えます。そんなトルストイなら、「家庭の幸福3段」以上の人たちは、みんな同じに見えたはずです。「幸福名人」みたいな人なら、それぞれの家庭の幸福の「個性」も見分けられたに違いありません。実は、「もの」や「サービス」を売る人たちにとっては、こういうことは常識だそうです。 マーケティングの第1歩は、「あなたのお客さんは誰ですか?」を明確にすることだと本に書いてありました。お客様はそれぞれ自分の「レベル3」を超えたものに対しては、違いなど分かりません。そういう顧客に対して、「もっともっと良いものを!」と提供しようとするのは、頑張る方向が間違っているということです。最近、日本の家電製品が、海外で受け入れられずに、もっと安くて粗悪な中国製などが売れているなどというのを、ネットで読みました。これは残念なことだと思います。でも、その家電を必要としている消費者は、「3以上は沢山」で「違いなど分からない」なわけです。そんな中で、「もっと良いものを提供する !」というのは、単なる自己満足に思えてしまいます。 そしてこういうことは、弁護士の業務にもありそうです。うちの事務所には、他の弁護士についての苦情と言いますか、セカンドオピニオンの依頼が来ます。確かに、「これは本当に酷い」と、呆れるような業務対応の弁護士もいます。その一方、プロの目から見ると、法的対応という意味では、レベルが高いなと感心するものもあるのです。しかし、お客さんにとっての「3」を超えたレベルの違いは、無いのと同じです。判別できない「法的対応」ではなく、自分が測定可能な「接客対応」の違いをもとに、不満を募らせるのでしょう。接客対応もレベル3にすることも、弁護士の仕事と思って頑張ります。 ******************************************* ◇ 弁護士より一言 ブランドバッグって高いですよね。先日妻に、「こんなの『ブランド料』が高いだけで、品質の違いなんて無いのでは?」と聞いたところ、「広告宣伝費が凄くかかってはいるけど、デザイン、革の質、裁縫の細かさ、なにより手仕事が多いの。この違いが分からなきゃね !」と言われました。で、でも、そういう違いは分からない方が、幸せかもしれないのです。ううう。。。 以上:2,393文字
|