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2018年12月16日発行第235号”誠実な美人弁護士”

平成30年12月16日(日):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成30年12月16日発行第235号「誠実な美人弁護士」をお届けします。

○米原万里氏は、名前だけは知っていましたが、著作は全く読んだことがありません。生前テレビでお顔は拝見したような気がします。ウィキペディアの解説では、「佐藤(優)は「文藝春秋」2008年9月特別号において、米原に橋本龍太郎から関係を迫られたと聞いたとする記事を掲載した。」とのことで、なかなか魅力的な女性です。

米原万里公式サイトを見ると相当数の著作があります。早速「不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か」をアマゾンに注文しました。ついでにタイトルに惹かれて「終生ヒトのオスは飼わず」も注文しました。それにしても大山先生の幅広い読書歴に感服です。読書嫌いの私も少しは読書しようとの気持にさせて頂き感謝です。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

誠実な美人弁護士


「不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か」は、ロシア語通訳の米原万里のエッセー集です。通訳にまつわるとても面白い話を、軽い筆致で書いています。例えば、英語の通訳を通してスピーチをした人の話がありました。その人は、最後に一言、「ワンプリーズ!」と英語で話したそうです。それはどういう意味ですかと聞かれて「そんなことも分からないのか。『一つ宜しく』という意味だ。」と答えたなんて言う愉快な話が沢山載っています。

タイトルの、「不実な美女か貞淑な醜女か」について言いますと、原文に忠実かどうかで貞淑か不実かが決まり、訳文として分かり易くこなれているどうかで、美人かブスかが決まってくるということだそうです。「貞淑な美女」が望ましいのですが、得てして美女(日本語として読みやすい翻訳)の場合、不実(原文から離れてしまう)なんてことがあります。もっとも、不実でブスも相当います。そういう話を、実例を挙げながら、楽しく教えてくれます。

米原先生の指摘のとおり、どこまで訳すのが良いのかは、難しい問題に感じます。英語のグッドモーニングを、「良い朝!」と訳す人はまずいませんよね。「お早うございます。」と訳します。だからといってこの訳が、「不実」とは思えないんです。明治の文豪、二葉亭四迷に、翻訳についての逸話があります。小説の中で、男性にアイラブユーと言われた女性が、同じ言葉を返したんですが、これをそのまま訳してはダメだということで、二葉亭大先生は悩みに悩んだ。そこでひねり出した訳が、「死んでもいいわ。」だったというんです。さ、さすがにこれは「不実」な訳では。。。

夏目漱石にも、英語の小説に出てきた、アイラブユーを訳した話があります。生徒が、「愛しています。」なんて訳したら、それじゃ日本語の訳じゃないとお怒りで、お手本を見せてくれたという話です。これまた有名な、「月が奇麗ですね。」という訳だそうです。あまりに「不実」過ぎて、そもそも「美女」なのか「ブス」なのか、私ごときでは判断が付きかねるのです。。。

同じく漱石の小説に、「Pity is akin to love.」をどう訳すかという話があります。機械的に訳せば、「哀れみは愛と似ている。」みたいな感じでしょうか?でも、こんな訳では漱石先生に怒られそうです。小説の中での有名な訳が、「可哀想だた惚れたってことよ。」なんです。確かにこの訳は一見、「貞淑」で、凄い「美人」に思えますが、本当にそうなのか、疑問が残ります。何故なら、原文を「ただ同情しただけ。愛してなんかいない。」という風に、漱石大先生とは真逆に訳すことも出来るからです。こうなってきますと、翻訳の問題は、解釈の問題になってきます。

解釈といいますと、法律や契約書の解釈など、弁護士の仕事です。例えば、規則に「犬の同伴は認めない」と書いてあるとします。これを、「犬は吠えるからダメだが、猫は吠えないからOK」と解釈するのか、「犬も猫も、動物は全て不潔だからダメ」と解釈するのか、可能性としてはどちらもあり得るんです。契約書など、かなり気を付けて作っても、後からこういう争いが起きてくるものです。当事者間でお互いに、自分の「翻訳」の方が「誠実」だと主張することになります。

民事訴訟などで、依頼者の主張を、相手方や裁判所にどう伝えるのかも、弁護士の悩むところです。依頼者が感情的になっているときなど、そのまま伝えると、さらに紛争が拡大しちゃいます。そういうときには、少しくらい「不実」であっても、適切な言葉を選んで、主張を「美人」にして見せることもよくあります。

ということで、1年間のご愛読ありがとうございました。来年も、ワンプリーズお願い致します。

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◇ 弁護士より一言

次女が英語を始めたときに、「この英文は絶対におかしい。」なんて言い出しました。「ホットドックを何本食べますか?」と母親に聞かれて、「8本食べます。」と答える英文です。「うちじゃ、せいぜい1本しか貰えないのに。どんだけ甘い母親なんだよ!」と怒ってました。う、うちだって、子供達にはメチャクチャ甘い親なんですが。。。そんな娘も、1年間の留学を終えて、先週無事に帰ってきました。
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