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2018年02月01日発行第214号”弁護士の実証的精神”

平成30年 2月 1日(木):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成30年2月1日発行第214号「弁護士の実証的精神」をお届けします。

○オーギュスト・コントは、「社会学」という名称を創始したフランスの社会学者、哲学者、数学者とのことです。大昔、世界史で出てきたのかも知れませんが、忘却の彼方です。勿論、「実証的精神論」なんて著作も全く知りません。しかし、理屈だけをこね回して現実にはサッパリ役立たない学問や議論の存在は確かにたくさんあります。

○弁護士は、基本的にはサービス業で、お客様に最終的に、良い思いをもって貰うことがその目的です。私も、紛争解決の最大の鍵はお客様の心だ、お客様の心からの満足だと、自分に言い聞かせてやってきたつもりです。しかし、往々にしてお客様の不満に気づかない場合、後で気づかされる場合があります。お客様の満足を求める「実証的精神」の重要性、肝に銘じます。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の実証的精神


「実証的精神論」は、オーギュスト・コント大先生が、いまから200年位前に書いた本ですね。有名だけど、ほとんど誰も読まない本の一冊です。コントは、当時の神学や哲学を厳しく批判したわけです。現実を観察して、本当に役立っているかを調べることなく、理屈だけをこねまわしている神学や哲学は、何の役にも立たない学問だ、くらいの勢いで攻撃しているのです。それに比べて、現実を観察する実証的精神は、非常に優れているとのことです。確かに一理ある主張であることは、間違いないと思います。

コントが批判したのは、神学と哲学ですが、中世ヨーロッパから伝わる神聖な学問は、あと二つあるんですね。医学と法学です。医学の方は、コントが出てくるさらに200年近く前から、実証的な学問でないと批判されていたはずです。モリエールの戯曲に出てくる医者たちは、古代の名医ヒポクラテスの学説を信奉するだけで、患者の様態など見てないんですね。

モリエールの風刺では、こんな感じです。「具合はどうだね?」「大変具合よく、死にました。」「そんなはずがあるものか。」「あるかどうかは存じませんが、それが事実だってことは存じております。」「死ぬはずがない、と言っているんだ。」なんだか、死んだという事実の方が間違っているみたいです。

もっとも、現代の医学界も、「手術は大成功で、ガンは取りきりましたが、患者は死にました。」なんてことがまかり通っていると批判されていたはずです。手術と、それによってどれだけ寿命が延びたのかについて、実証的な検証がないというわけです。確かにそんな気もしますが、あまり医師の悪口みたいなことを書いてると、病気になったときに困ります。人のことはいいので、法律の「実証的精神」について考えてみます。

ただ困ったことに法律は、もともと「何が正義か」「何が正しいか」を考えるものですから、それが実証的にどんな役に立つかは、あまり気にしないんです。刑法の教科書には、天災で国が亡びるときに、絶対にしなくてはいけないことが書いてあったはずです。逃げ出す前に、死刑囚の死刑を執行しないといけないそうです。「そんなことしたって、今更どうにもならんだろう。早く逃げろよ!」なんていう、「実証的精神」を寄せ付けない、凄さがあるのです。なんのこっちゃ。

そうは言いましても、日本の多くの弁護士は、あまりに「実証的精神」に欠けているなというのが私の実感です。数年前から、弁護士になるための試験が比較的簡単になり、多くの弁護士が誕生しました。これを受けて多くの弁護士達が、弁護士をこんなに増やすと、日本の司法制度は壊滅するみたいに騒いでいたんですね。

しかし、アメリカ始め、弁護士が沢山いる国でも、特に司法制度は壊滅せずにやっています。日本よりよほど優れている制度だという人さえいるんです。お客様対応についても、弁護士側の思い込みで行っており、「実証的精神」が足りないのではと感じることがあります。弁護士としては、どうしても法的結果を重視しますし、依頼者もそれを望んでいると考えてしまいます。もちろん、これ自体間違ってはいないはずです。その一方、結果は良かったはずなのに、お客様が不満に思っている場合や、逆に結果は思わしくないのに、お客様に感謝される場合など、本当によくあるのです。何が本当に求められているのか、お客様に対しても、「実証的精神」で臨みたいものです。

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◇ 弁護士より一言

何年か前に、現在高校生の次女に、「鉄1キロと綿1キロと、どちらが重い?」という、有名な質問をしたんですね。娘は考え込んでしまったので、「答えは、同じ重さだよ!」と教えてあげたのです。それでも娘は、さらに考えて言いました。「納得いかないなぁ。パパ、自分で本当に試してみたの??」

あ、アホか!試してみなくても、分かるだろ。ここでは実証的精神なんていらないんだよ!そんな娘も海外留学に出発し、毎日頑張っているようです。年末に娘が帰国したら、あれは実証的精神だったのか、パパをからかっただけなのか、聞いてみたいと思っているのです。
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