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2013年06月15日発行第103号”ウォルマートの安売弁護士(3)”

平成25年 6月17日(月):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成25年6月15日発行第103号「ウォルマートの安売弁護士(3)」をお届けします。

○弁護士業務の安売りを如何に行うかは大変難しい問題です。仕入れのない弁護士業務では、仕入れコストを下げて安売りを実現する方法はそもそも存在しません。事務所・設備・人件費等経費削減による安売りはサービスを落とすことになり痛し痒しです。流石の大山先生も、結論としては、過剰サービスを止めてコストを下げ安売りを実現するよりは、サービスを強化して安売りをしない適正料金を維持する方向を考えておられるようです。

○お客さまの目からは、一般的には、おそらく弁護士費用は高いと感じているはずです。例えば離婚事件についての当事務所報酬規程は、
着手金は
離婚のみの場合、示談交渉・調停で一律21万円、訴訟で一律31万5000円です。
養育料、財産分与、慰謝料が問題となる事案は、上記とは別に、一律10万5000円追加します
。」
としており、離婚事件には通常、養育料、財産分与請求を含みますので、調停で31万5000円となり、これを一度に支払うのは、一般のサラリーマンの方には、高いと思われるはずです。

○しかし弁護士にとっては調停事件は、訴訟事件より負担に感じることもあります。訴訟の場合、法廷滞在時間は弁論期日では5分程度、弁論準備でも30分以内が原則ですが、調停事件は毎回1時間から長いときは2時間も裁判所に留まる必要があり,且つ、半分以上は控え室での待ち時間です。時に30分以上待たされることもあり、この待ち時間にあの事件の準備書面一本書けたのにと思うことも多々あります。弁護士数が僅かで殿様商売が許されていた支部では、弁護士が代理人となっても、まとまる段階になるまで弁護士は調停には出てこないなんてこともありました。

○そこで離婚事件について、サービスを細切れにして料金を安くする方法を「弁護士マーケッティング方法ーHPでのSEO対策5」で紹介しておりました。これは安売りではなく、部分売りとしてサービス価格を下げるものです。例えば離婚調停事件で弁護士が調停に出頭する場合の着手金31万5000円を、調停には出頭せず調停終了まで相談・アドバイス・本人名義書面作成を継続することで弁護士費用を半分以下に下げることなど考えられます。お客さまにとっては中途半端で利用する気にならないかも知れませんが、試してみる価値はありそうです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

ウォルマートの安売弁護士(3)


ウォルマートで感動するのは、「絶対に安くするんだ!」という気合ですね。「ウォルマートに呑みこまれる世界」には、こんな話が載っています。

汗を抑えるデオドラントってありますよね。ウォルマートでも以前は、製品を箱に入れて売っていたのですが、その箱が無駄だということで、止めたんだそうです。それによって、1箱5セント(5円)安くなったわけです。(もっとも、ウォルマート全体では、10億円の節約につながるそうです!)

一方、日本ではといいますと、ある人から教えてもらいました。その人が虎屋の羊羹をもらったら、7重包装になっていたそうです。「ビニール包装でいいから、もっと安くしろよ。」「世界でも、こんなに過剰包装なのは日本だけ。」とお怒りでした。しかしそうは言いましても、虎屋の羊羹が本当にビニール包装だったら、顧客として失望する気がするんです。たとえ同じ商品でも、味も落ちて感じるに違いないです!

安売りのためには、過剰包装や過剰サービスを止める必要があります。その一方、何が「過剰」で、何が必要なものかは、判断が難しいのです。

弁護士の仕事でも、「過剰」な仕事内容を省くことで値段を安くできるのかが問題となってきそうです。これは難しいことは確かなんですが、絶対にできないわけではないのです。

数年前に、破産管財人の報酬について、裁判所の主導の下、「安売り」が実現しました。簡単な破産事件の場合、裁判所への報告など非常に簡略化する代わりに、弁護士報酬を低くしたんですね。ある意味、それまでの業務内容が、不必要に煩雑だったとも言えかもしれないわけです。

弁護士の主要業務である裁判の場合でも、こういう「安売り」は可能かもしれません。裁判を起こすときには、まず訴状を裁判所に出すことになります。私はアメリカの弁護士資格も持っていますが、アメリカ式の訴状は、とても簡単なんです。本当にざっくりと書くだけですから、直ぐに出来てしまいそうです。

これに対して、日本で訴状を書くのはかなり大変です。相手が認めるかどうかわからない点について、法的構成まで工夫し、証拠もしっかりと揃えて主張するんです。結果的には、相手方があっさり認めてしまったので、時間をかけて準備する必要がなかったなんてこともよくあるわけです。ところが、相手が争ってくることを前提にしっかりした訴状を書く以上、それなりの費用は請求せざるを得ないわけです。

そんな訴状をお客様が求めているのかは疑問ですが、だからと言って、日本でアメリカ式にするのはやはり抵抗があります。裁判所に対して恥ずかしいですし、相手の弁護士に甘くみられそうで心配になります。

日本の司法は精密司法といわれていますが、もう少しざっくりとやってよいのならば、随分と弁護士業務も合理化でき、価格も安くなるように思えるのです。私が自分でやるのは躊躇しますが、いずれはこういった割り切った業務で、安売りを実現する弁護士が出てくるのではと感じています。

一方、顧客に対してのサービスを考えると、弁護士はもともと大したことをしていないと感じています。こちらをますます充実させる代わりに、安売りをしないで適正な料金を請求する。私としてはそういう弁護士を目指していきたいと考えています。

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◇ 弁護士より一言

先日、人気ミュージカル、スウィーニー・トッドを見てきました。18世紀末のロンドンを舞台に、市村正親演じる理髪師が、髭剃りのときに喉を掻き切って客を殺すと、大竹しのぶのパイ屋さんが、被害者の肉でミートパイを作るという、バカバカしくも怖い話です。二人が劇の中で、どんな職業の人の肉なら、どんなミートパイになるのか、掛け合いをする場面がありました。「小説家の肉は筋が多い。」といった感じですね。弁護士の肉は、「値段は高いが、後味が悪い!」そうです。ううう。。。安売りは出来なくても、せめて後味の良い仕事をしたいものです。

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