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火災による損害について火災保険金の損益相殺を認めた高裁判決紹介

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令和 7年 1月 8日(水):初稿
○「火災による損害について火災保険金の損益相殺を認めた地裁判決紹介」の続きで、その控訴審昭和49年3月27日福岡高裁宮崎支部判決(最高裁判所民事判例集29巻1号80頁)を紹介します。

○第一審原告が、第一審被告が第一審原告から賃借していた第一審原告所有本件建物が第一審被告の被用者の重過失による失火によって焼失したとして、第一審被告に対し、使用者責任または賃貸借契約の債務不履行に基づく損害賠償として1835万8060円の支払を求めました。

○これに対し、第一審被告は、本件建物の時価は金300万円程度のところ、その損害は火災保険金650万円の受領によつてすでに補填されて消滅していると主張して、賃貸借契約の際預けた敷金600万円全額の返還を求めました。

○第一審判決は、第一審被告の主張をほぼ認めて、第一審原告の請求を棄却し、第一審被告の請求について第一審原告に対し404万円の支払を命じていました。控訴審判決も、第一審原告の請求を棄却するとともに第一審被告の請求を棄却した原判決の説示を引用し、第一審原告及び第一審被告の各控訴をいずれも棄却しました。この判決は、最高裁判決で覆されており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
第一審原告及び第一審被告の各控訴をいずれも棄却する。
控訴費用中、第一審原告の控訴によつて生じた分は第一審原告の負担とし、第一審被告の控訴によつて生じた分は第一審被告の負担とする。

事   実
第一審原告は、「原判決中第一審原告敗訴の部分を取り消す。
第一審被告は第一審原告に対し、金1385万8060円及びこれに対する本訴状送達の翌日から支払いずみまで年5分の割合による金員を支払え。
第一審被告の請求を棄却する。
訴訟費用は第一,二審とも第一審被告の負担とする。」
との判決並びに担保を条件とする仮執行の宣言を求め、第一審被告の控訴に対し
「本件控訴を棄却する。控訴費用は第一審被告の負担とする。」
との判決を求め、

第一審被告は、
「原判決中第一審被告敗訴の部分を取り消す。
第一審原告は第一審被告に対し更に、金196万円及びこれに対する昭和38年4月22日から支払いずみまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は第1、2審とも第一審原告の負担とする。」
との判決並びに第一審原告の控訴に対し控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び立証の関係は、左記(一)、(二)のとおり付加訂正するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

(一) 原判決6枚目裏初行の次に、行を改めて「(四)原告の後記(二)の主張は争う。本件敷金返還請求権は、前記第111号事件における主張で述べたとおり、消滅してはいない。」を、同枚目裏末行「各証の成立」の次に「(第3号証はその原本の存在及び成立とも)」を、それぞれ挿入する。

(二) 新たな立証(省略)

理   由
当裁判所も、原審と同様、第一審原告の請求を棄却し、第一審被告の請求については、原審認容の限度でこれを認容しその余を棄却すべきであると判断する。そして、その理由は、左記(一)、(二)のとおり付加するほかは、原判決の説示と同じであるから、これを引用する。

(一)原判決9枚目表7行目「相当である。」の次に、「なお、右各証人の証言によれば、右『地上権の評価』というのは、結局、本件建物の立地条件が良いことによる利益、いわゆる場所的利益のことを指していることがうかがわれるが、本件建物の敷地の所有者は原告なのであるから(この点は右甲斐証人の証言により認め得る)、本件建物が焼失したからといつて、右敷地の所有者である原告がかかる場所的利益を失うとは解されず(原告は、いつでも右敷地上に建物を建築するなどして、前同様の場所的利益を享受できる)、したがつて、本件建物の焼失により原告に生じた損害を算定する基礎とすべき本件建物の時価には、かかる場所的利益の価額を含めるべきではない。」を加える。

(二)当審証人太田勇の証言及びこれにより成立を認め得る乙第4号証の1ないし3、並びに当審における第一審被告本人尋問の結果を総合すると、本件建物は、昭和34年末頃、第一審原告が、訴外太田勇に工事代金443万円(ただし、右金額中には、旧建物の解体費用金6万7825円が含まれているが、他方、第一審原告は、右工事代金のほかに、旧建物の解体により得られた金32万円余相当の資材を材料として提供している)で請け負わせて建築したものであること、そして、右工事代金中には、パチンコ店としての装飾及び機械台取付工事の代金101万円余が含まれていたが、第一審被告が本件建物を賃借した際には、機械台のほか内部装飾のかなりの部分が取り除かれていたことを認めることができる。

しかしながら、右太田証人及び原審証人甲斐丸馬の各証言によれば、右昭和34年末頃に比べ、本件焼失時の昭和38年1月頃には建築費が相当値上がりしており、したがつて一般的に建物の価格も上昇していたことが明らかであるから、前記本件建物の建築工事代金の額等から、直ちに、焼失時の本件建物の価額を算定することは困難であるし、また、これをもつて、前記引用にかかる本件建物の焼失時の時価の認定を左右するには足りないといわざるを得ない。その他、当審における新たな証拠中、前記引用にかかる認定、判断を覆すに足りるものは存在しない。

よつて、原判決は相当で、第一審原告及び第一審被告の本件各控訴は理由がないからいずれもこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法95条、89条を適用して、主文のとおり判決する。
(昭和49年3月27日 福岡高等裁判所宮崎支部)
以上:2,349文字

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