令和 6年 8月24日(土):初稿 |
○「位置指定道路の通行妨害と妨害排除請求権を認めた最高裁判決紹介」の続きで、その第一審平成6年3月30日横浜地裁判決(最高裁判所民事判例集51巻10号4251頁)全文を紹介します。 ○原告らが、道路位置指定処分を受けた本件土地を所有している被告らが、原告らの自由な通行を否認し、妨害しているとして、その妨害の排除を求めました。 ○横浜地裁判決は、原告らが居住し所有している土地が、自動車の通行による方法においては、本件土地以外の他の私道では公道に出ることができない準袋地であり、また、原告らは長年に亘って、日常生活に必要かつ欠かすことのできない道路として、本件土地を利用してきたことが認められるから、原告らは本件土地を通行する自由を有し、被告らは原告らの自動車通行を含む通行を妨害することはできないとして、原告の請求を認容しました。 ********************************************* 主 文 一、被告らは原告らに対し、別紙物件目録記載の土地につき、原告らの通行の支障となるべき工作物を除去し、かつ原告らの通行を妨害してはならない。 二、訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第一、請求 主文同旨 第二、事案の概要 本件は,原告らが、道路位置指定処分を受けた別紙物件目録記載の土地を所有している被告らが、原告らの自由な通行を否認し、妨害しているとして、その妨害の排除を求めた事案である。 一、証拠によって認められる事実 1、被告らは、昭和61年12月9日、贈与により別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の所有権を共有持分各2分の1の割合で取得した(甲1)。 2、本件土地は、被告らが本件土地を取得する以前の昭和33年1月13日、訴外川崎市より道路位置の指定を受けて(甲2の1ないし6)、それ以降現在に至るまで、近隣居住者の通行の用に供されている道路である(弁論の全趣旨)。 3、原告らは、いずれも肩書の住所に居住する者で、本件土地を道路として通行している者である(甲3、弁論の全趣旨)。 4、被告らは、平成3年9月ころ、原告らを含む本件土地近辺の住民に対し、平成4年12月末日までに原告らと契約しない車両等の本件土地の通行を禁止する趣旨のビラをまいた(甲4)。 5、それと前後し、本件土地に看板・標識やゲートを設置した(甲5)。 6、また被告らは、平成4年2月8日到達の内容証明郵便で、原告らの所属する自治会に対し、同年12月末日をもって本件土地の通行を不可能にする工事を施工することのある旨の通知をして来た(甲6)。 二、争点 1、被告らが原告の本件土地の通行を妨害しているか。 2、原告らが道路位置指定処分を受けたことにより、あるいは通行地役権に基づき、本件土地の通行権を有するか。 第三、争点に対する判断 一、争点1について 被告らは妨害の事実を否定しているが、被告らが共同してゲートを設置していることは認め、甲5の1ないし12、乙6によれば右ゲートは簡易な移動可能のもので、容易に撤去がなしうるものであるところ、本件土地を自動車で通行するためには、その都度、下車して取り除かなければならず、夜間の通行などの場合には、万が一、交通事故を発生させる危険が存在していることが明らかであり、自動車の運転が日常生活に必要不可欠なものであることから考えると、原告らの本件土地の通行の自由を妨害し、弁論の全趣旨によれば、今後も妨害する虞れがあることを認めることができる。 二、争点2について 本件土地は、建築基準法42条1項五号に基づき、道路位置指定処分がなされ、現実に道路として開設されており、原告Xの供述によれば、原告らが居住し所有している土地が、自動車の通行による方法においては、本件土地以外の他の私道では公道に出ることができない、いわゆる準袋地であると認められ、自動車通行が日常生活にとって必要不可欠のもので、また右供述によれば、原告らは長年に亘って、日常生活に必要かつ欠かすことのできない道路として、本件土地を利用してきたことが認められ、以上からすると、原告らは本件土地を通行する自由を有し、従ってその結果として、被告らは原告らの自動車通行を含む通行を妨害することはできないものといわざるを得ない(被告らは、本件土地につき、原告らが危険な通行をし、被告らの平穏な生活を脅かしていると主張するが、右主張自体は原告らの通行の自由自体を否定することができず、被告らが平穏な生活を護る必要があれば、他の適切な手段を講じるべきものであって、右主張は理由がない。)。 三、以上によれば、原告の本訴請求は理由がある。 (横浜地方裁判所川崎支部民事部) (別紙)物件目録 一、川崎市多摩区生田○○番○○ 宅地 94・58平方メートル 以上:1,955文字
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